
土日も祝日も関係なく鳴り続ける電話。終わらない内見対応と、月末に迫るノルマのプレッシャー。仲介の仕事には確かにやりがいがあります。お客様が笑顔で契約書にサインする瞬間、新生活への期待に目を輝かせる姿を見られるのは、この仕事ならではの醍醐味です。
でも、正直に聞きます。
- 30代後半、40代になっても、毎週末に案内車を運転している自分を想像できますか?
- 体力的にも、精神的にも、一生続けられる働き方だと思えますか?
- 土日祝に休みが取れず、家族や子どもと過ごす時間が制限されることを、ご家族が許すと思いますか
- 「仲介が好きだけど、この働き方は続けられない」
- 「不動産業界は好きだけど、営業以外の道が見えない」
そんな葛藤を抱えているなら、この記事はあなたのために書きました。実は、賃貸仲介で培った経験とスキルが、驚くほど高く評価される「次のステージ」が存在します。それが、PM(プロパティマネジメント)の世界です。
ぜひ、賃貸仲介業での未来に不安を覚えているのなら、一度この記事を最後まで読んでみてください。ひょっとすると、あなたの人生を大きく変えるきっかけになるかもしれません。
なぜ「PM(プロパティマネジメント)」が最強のルートなのか
PMと聞いて、「クレーム対応ばかりの大変な仕事でしょ?」と思った方も多いはずです。確かに、管理会社の仕事には入居者対応も含まれます。しかし、本質はまったく違います。
PMの本当の役割は、投資家やオーナーの資産価値を最大化させる「司令塔」なのです。
| 項目 | 賃貸仲介 | プロパティマネジメント |
| 収益構造 | フロー型 契約しないとゼロ | ストック型 管理料があるから安定している |
| 主な顧客 | 一般消費者 BtoC | 個人の地主や企業 BtoB |
| 休日 | 不定休 土日祝は基本的に仕事 | 土日祝休みが一般的 |
| ノルマ | 毎月の契約件数と売上に追われる | 基本はなし 稼働率や工事売上などで目標を定めているケースはある |
| 身に着くスキル | 瞬発的な営業力 接客術 | 法律・建築・金融・会計の専門知識 |
店長の独り言
この表を見て「嘘だろ?」と思ったあなた。私も最初はそう思いました。でも、これは残念ながら真実なのです。そういえば、管理会社の担当者が年末年始に10連休を取っていた、そんな経験ないですか?
オーナーの最大の悩みは、何だと思いますか?答えは明確です。「空室」です。家賃収入がゼロになる恐怖、修繕費だけがかさんでいく焦り、オーナーが夜も眠れないほど悩んでいるのは、すべて空室問題に集約されます。
ここで、賃貸仲介経験者の価値が爆発的に高まります。なぜなら、あなたは「どうすれば空室が埋まるか」を既に肌感覚で知っているからです。どんなリノベーションをすれば内見が増えるか、どんな条件なら仲介会社が積極的に紹介してくれるか、案内件数を増やすにはどんな工夫が必要か。こうした現場感覚は、管理会社や家主が喉から手が出るほど欲しいノウハウです。
さらに、PMの働き方は仲介とは根本的に異なります。収益構造が「フロー型(1件ごと)」から「ストック型(継続収入)」に変わるため、月末のノルマに追われるプレッシャーが激減します。基本的にBtoB(対オーナー、対業者)の仕事なので、スケジュールが圧倒的に組みやすくなります。何より、法律・建築・金融の知識が自然と身につき、あなたの市場価値は確実に上がっていきます。
なお、「私にはPMなんてできそうもない」と考えるかもしれません。それは正しい感覚です。それでも、賃貸仲介に疲れたときは、ぜひ不動産業界の転職ロードマップを見てみてください。あなたにぴったりの不動産業界の職種が見つかるかもしれません。
仲介経験者はPM職にとって「SSR級」の即戦力である理由
管理会社が仲介経験者を採用したがる理由は、シンプルかつ明確です。あなたが持っている「リーシング(客付け)」の感覚とスキルが、管理会社にとって最も欠けているピースだからです。
管理会社の多くは、物件を「守る」ことには長けていますが、「攻める」ことは苦手です。設備を点検し、修繕を手配し、入居者対応をこなすこと。これらは確かに重要ですが、空室を埋めることには直結しません。一方、あなたは毎日のように賃貸仲介の現場で戦ってきました。どんな写真を撮れば反響が増えるか、どんな広告文なら問い合わせが来るか、どの仲介会社が動いてくれるか。こうした「泥臭い客付けのコツ」を体で覚えています。
しかも、あなたには賃貸仲介会社へのパイプラインがあります。元同僚や取引先との人脈は、管理会社にとって何よりも価値があります。「あの物件、空いてるよね?うちのお客さん案内したいんだけど」と電話一本でつながる関係性は、どんな広告予算よりも強力な武器になるのです。実際に、知り合いがいる管理会社の物件を固め打ちで決めた経験があるのではないでしょうか?
仲介会社がどう動くか、どんな条件なら優先的に紹介してくれるか。その感覚を持っている人材は、PM業界では圧倒的に不足しています。あなたが思っている以上に、あなたのスキルは希少価値が高いのです。
【実録】仲介からPMへ移った人が手に入れた「激変」
私が実際に見てきた事例を紹介します。
ある30代半ばの男性は、大手賃貸仲介会社で新卒から10年間働き、トップセールスとして活躍していました。しかし、毎週末の内見対応と月末の数字に追われる日々に疲弊していました。さらに、店長と副店長が上にいるため、これ以上の出世も見込めません。そのため、転職を決意するに至り、中堅の管理会社にPM職として入社しました。
結果、年収は前職の歩合額を勘案した金額よりも15%増、残業時間は月60時間から月15時間へ激減。土日祝日が完全に休みになり、家族との時間が劇的に増えました。彼が特に驚いたのは、「自分の提案が数字に直結する快感」でした。リノベーション提案がオーナーに採用され、空室が次々と埋まり、家賃収入が回復していく。その過程を「司令塔」として見守る仕事に、賃貸仲介時代とは違うやりがいを感じているそうです。
別の女性は、20代後半で賃貸仲介から管理会社の営業サポート兼PM補助へ転職しました。彼女が手に入れたのは、「視点の転換」でした。仲介時代は「今日この物件を決めなきゃ」という短期視点でしたが、PM業務では「この建物をどう再生させるか」「この物件を10年後どうするか」という長期視点で不動産と向き合えるようになりました。建築や金融の知識も増え、将来的には専属のPM担当者としてのキャリアも見えてきたそうです。
他の男性は、賃貸仲介から地方都市の管理会社へPM担当者として転職をしました。そのとき、偶然にもファンドが地方都市へ進出するタイミングであったことに加え、稼働率による収益確保を身上としていたファンドの目的と、賃貸仲介としてのキャリアとスキルを見出され、ファンド物件のプロパティマネージャーに抜擢されることとなりました。
結果、今では関西以西のファンド物件を統括するシニアプロパティマネージャーとなり、入居者管理や現場対応から外れ、ポートフォリオのマネジメントをするまでにキャリアアップを実現しました。
店長の独り言
「賃貸仲介営業を辞める=不動産業界を去る」と考えるのは、あまりにもったいない選択です。舞台を変えるだけで、あなたが仲介で培った「泥臭い交渉力」「現場感覚」「客付けのノウハウ」は、管理の世界では圧倒的な武器に変わります。疲弊して業界を去る前に、まずは違うステージを覗いてみるのが良いでしょう。
失敗しないPM会社の「見極め方」
ただし、管理会社選びには注意が必要です。管理会社によって、ブラックとホワイトの度合いは驚くほど大きく変わるからです。「仲介よりマシだと思ったのに、結局やっぱりブラックな環境だった。」という失敗を避けるため、以下のチェックポイントを必ず確認してください。
1. 口コミの「ねじれ」から優良な管理会社を見抜く
入居者からの評価が低く、家主(オーナー)からの評価が高い管理会社は、ほぼ間違いなくブラックです。これは、入居者対応を後回しにしてオーナーの機嫌取りだけをしている証拠だからです。そんな会社で働けば、オーナーからの理不尽な要求ばかり入居者に突きつけることが仕事になるため、クレーム処理に追われる地獄のような日々が待っています。
管理会社を選ぶときは、入居者とオーナー双方から一定の評価を得ている会社を選ぶようにしましょう。
店長の独り言
賃貸仲介は、鍵を渡せばそれで終わりでした。嫌なお客様でも、それ以上お付き合いすることはありません。しかし、管理はその入居者が退去するまで、もしくは自分が担当物件から外れるまでは、ずーっとお客様なのです。いつまでも離れることができないなら、良好な関係を維持すべきですよね?お客様と良好な環境を構築・維持できる環境が整っていない会社では、PM業務はしないほうが良いでしょう。
2. IT化の進捗度を確認する
管理業務の効率化にITツールを活用しているか、必ず聞いてください。未だにFAXと電話だけで業務を回している会社は、あなたの時間を無駄に奪います。クラウド管理システム、オンライン修繕受付、電子契約の導入状況をチェックしましょう。
また、管理業務は緊急の連絡が入ることも珍しくありません。そのため、社内の連絡ツールや情報共有ツールについても押さえておきましょう。とりわけ、家主情報は管理会社からすると何より大切な財産です。そのため、適切なツールが採用されていないと、紙で個人的に重要な情報を持ち歩くこととなり、あらぬリスクを増大させることにもなりかねません。そもそも、家主の連絡先や物件の住所も外出先から確認できないような事業形態では、業務に支障をきたすことが目に見えています。
個人情報の漏洩はあってはなりませんが、あまりにも過度に気にしすぎるあまり、情報の持ち出しを制限されてしまうと、管理業は成り立ちません。そのため、きっちりとした情報保護体制を敷きつつ、ITやDX化が進んでいる会社を選ぶことで、スムーズに業務を進めることができます。
3. 面接で「一人あたりの担当戸数」を聞く
これが最も重要です。担当戸数が500〜1,000戸なら妥当な範囲ですが、1,000戸を超えていたら要注意。到底一人で回せる数字ではありません。
ここで現実的な計算をしてみましょう。1物件が仮に10室だとすると、1,000戸=100人のオーナーを担当することになります。月の稼働日数を23日とすると、1日あたり4人以上のオーナーと密に連絡を取り、人間関係を構築しなければなりません。どこからどう考えても、物理的に不可能です。こうした会社は、結局「御用聞き」にしかなれず、提案型のPM業務はできません。また、入居者へのサービスなども後手に回ることとなるため、やっぱりクレーム処理に時間を割かれることになるでしょう。
店長の独り言
適切な管理体制やチーム運営ができているなら、辛うじて1,000戸の管理は可能ですが、著者が知る限り、1,000戸超の管理物件を一人の担当者に担当させている管理会社にまともな会社はありません。
4. 定休日の有無を確認する
ほとんどの管理会社には定休日(主に土日祝)があります。これは、賃貸仲介とは比べ物にならない環境の変化をもたらします。週末に家族と過ごせる、趣味の時間が取れる、体をしっかり休められる―当たり前のことが、当たり前にできる働き方が手に入ります。
そのため、定休日の有無は確実に押さえておきたいところです。また、夜間や休日の突発的な連絡の有無(ある場合は頻度)、休日出勤の有無(ある場合は代休取得の可否)、残業時間なども、当たり前のことではありますが押さえておきましょう。
PMへの興味が湧いたら、今すぐ履歴書の準備を。入社日がわからず筆が止まっているなら、こちらの記事が助けになります。
賃貸仲介こそ、次のキャリアにPMを考えてみよう
賃貸仲介は、確かにハードな仕事です。土日も祝日もなく、お客様の都合に合わせて動き続ける日々。月末が近づくたびに襲ってくるプレッシャー。体力的にも精神的にも、限界を感じることがあって当然です。
でも、だからといって「不動産業界そのものを去る」という選択をする前に、知っておいてほしいことがあります。あなたが仲介の現場で培ってきた経験、泥臭い客付けの感覚、仲介会社へのパイプライン、空室を埋めるノウハウ、これらはすべて、PM(プロパティマネジメント)の世界では「喉から手が出るほど欲しいスキル」なのです。
仲介から管理へ。ステージを変えるだけで、働き方は劇的に変わります。土日祝日が休みになり、ノルマのプレッシャーから解放され、それでいて年収は維持もしくはアップさせることができる。何より、「街を再生させる」「資産価値を最大化させる」という、賃貸仲介時代とは違う深いやりがいが待っています。
もちろん、管理会社選びには慎重になるべきです。口コミをチェックし、IT化の進捗を確認し、担当戸数を聞き、定休日の有無を確認する。これらを怠らなければ、あなたは確実に「次のステージ」で輝けます。
疲弊して業界を去る前に、まずは管理会社の求人を覗いてみてください。転職サイトで「PM」「プロパティマネジメント」「賃貸管理」と検索してみてください。あなたの経験を、本当に必要としている会社がそこにあります。
今は転職なんて考えていないかもしれません。それでいいんです。ただ、賃貸仲介に疲れたときには、この記事を思い出してみてください。必ず、あなたの転職の、キャリアの、人生の役に立つはずです。
この記事を書いた人:不動産会社店長
業界歴20年以上の現役店長。現場の第一線で培った知見を活かし、大手不動産メディアにて累計50本以上の専門記事を執筆中。 業界の表も裏も知り尽くした「不動産のプロ」として、不動産会社の不都合な真実を伝えます。
不動産・建築の専門家として、以下の大手メディアにて2026年現在も継続的に執筆・監修を行っています。
- 東急リバブル(LIVABLE タイムズ):法人・投資家向けのCRE戦略や空き家対策記事を20本以上寄稿
- ハウスコム(暮らしエイト):宅建士の視点から賃貸トラブル解決法を30本以上執筆
- CHINTAI(CHINTAI情報局):現場を知る店長としてお悩み解決記事を連載中