
「電子錠付き物件を探している」という方よりも、「気に入った物件が電子錠だった」という方の方が圧倒的に多いです。電子錠は便利な設備ですが、現場で見ていると締め出しトラブルが頻発する設備でもあります。
不動産業界で20年近く現場を見てきた立場から、電子錠付き物件のメリット・実際に多いトラブル・内見時の確認ポイントを正直に解説します。
ぜひ最後までお読みください。
電子錠・スマートロックの種類と「賃貸での現実」
まず電子錠の種類を整理しておきます。賃貸物件で見かける電子錠は大きく4種類です。
暗証番号型は、ドアに設置されたキーパッドに番号を入力して開錠します。鍵もカードも不要なため手ぶらで入室できますが、番号を忘れると入れなくなります。
カードキー型は、専用のICカードをかざして開錠します。財布やスマートフォンに収納できる利便性がありますが、電池切れが頻発するタイプでもあります。
スマートフォン型は、アプリを通じてBluetoothやWi-Fiで開錠します。遠隔操作やワンタイムパスワードの発行が可能で、最も多機能ですが、スマートフォンの充電切れで入れなくなるリスクがあります。
指紋認証型は、指紋をかざして開錠します。認証精度が高い反面、設置コストが高く賃貸では比較的少ないタイプです。
また、物件に最初から設置されている標準設置型と、入居者が自分で取り付ける後付け型があります。この2種類では故障時の費用負担や退去時の扱いが異なりますので、どちらのタイプかを確認しておくことが重要です。
現場の実感として、電子錠付き物件を積極的に探している方は極めてまれです。「気に入った物件に電子錠が付いていた」というパターンがほとんどです。そのような現状を踏まえ、この記事では「電子錠付き物件に入居することになった・検討中」という方向けの内容となっています。
店長の独り言
「絶対に覚えておいてほしいこととして、鍵を何種類持つ必要があるか、という点です。
つまり、オートロック開錠用の鍵と玄関用のカードキー、であれば結果的に荷物が一つ増えるだけですよね?もっといえば、オートロックはカードキーでも、玄関が通常シリンダーということもありえます。
セキュリティと利便性は相反する、という点を踏まえて、自分の生活や物忘れの頻度など、いろいろな点を加味して電子錠ライフのことを考えてみてください。」
電子錠のメリット
電子錠の導入は、単に「鍵がハイテクになる」だけではありません。それは、私たちが無意識に抱えていた「鍵という物理的制約」から解放されることを意味します。
具体的には、以下の4つのストレスが解消されます。
「紛失」するリスクが軽減される
物理的な鍵を持ち歩く必要がないため、カバンの奥をかき回したり、外出先で青ざめたりするリスクがゼロになります。万が一暗証番号を忘れても、管理会社側で対応可能なケースが多く、鍵交換という高額な出費(数万円単位)を防げる防衛策にもなります。
「施錠忘れ」リスクが軽減される
オートロック機能があれば、ドアが閉まった瞬間に施錠が完了します。駅のホームで「あれ、鍵閉めたっけ?」と不安になり、家まで引き返すという無駄な時間と精神的コストを永久にカットできます。
「一時的な入館」を制御できる
宅配業者や清掃業者、あるいは友人の訪問に対し、その時だけ有効な「ワンタイムパスワード」を発行できます。合鍵を預けるという防犯上のリスクを冒すことなく、スムーズな入室を許可できるのは、現代のタイパ(タイムパフォーマンス)を象徴するメリットです。
「スマホ連携」による遠隔監視
スマートフォンのアプリから現在の施錠状況をリアルタイムで確認できるタイプなら、外出先からでも「我が家の安全」を視覚的に確信できます。
ただし、これらの恩恵を100%享受できるかどうかは、導入されている電子錠の「通信方式」や「給電タイプ」といった設置環境に大きく依存します。あくまでも物件の状況や、電子錠の商品に依存する、という点は押さえておきましょう。
「鍵の紛失リスクがない」の裏にある「締め出しリスク」
電子錠のメリットとして「鍵を紛失するリスクがない」がよく挙げられます。それは事実ですが、代わりに「電子錠特有のトラブルで締め出される」という別のリスクが存在します。
現場でも電子錠に関するトラブルは後を絶ちません。暗証番号を忘れた・機械のエラーで開かない・電池切れでどうにもならない・後付け電子錠とサムターンの連動が悪くなって開かない、こうしたトラブルは日常的に発生しています。特にカードキー型は電池切れが頻発します。
こうした状況が発生した際の対処として、まず管理会社に連絡して合鍵を借りることになります。しかし深夜・早朝・休日の場合は対応が遅れることがあったり、対応ができなかったりすることも珍しくありません。
ここで確認しておきたいのが、有事のバックアップとして物理鍵で開錠できる機構が残っているかどうかです。電子錠の多くは、電池切れや停電時のために物理鍵でも開錠できる機構を備えています。しかし機種によってはカバーを外す・特殊な操作が必要などのケースがあります。
内見時または入居時に、緊急時の開錠方法を必ず確認してください。物理鍵でのバックアップ開錠ができない電子錠の場合、緊急時の対応が大幅に限られます。
緊急時に備えて、以下の対策を取っておくことをお勧めします。物理鍵が付属している場合は必ず手元に保管しておく・管理会社の緊急連絡先を登録しておく・電池残量の確認を習慣化する、この3点です。
店長の独り言
「自分で書いておいてなんですが、セキュリティが上がるにつれて、利便性が下がる。これって鍵や防犯設備あるあるだと思うんです。
せっかく、鍵の紛失リスクがなくなるメリットがあるのに、やっぱり予備鍵を持っておかないといけないなら、結局一緒じゃないか?という疑問。それはおっしゃるとおりです。
しかし、こればかりは我々でもどうすることもできないんです。夜間に鍵を持って出動するにしても、最近はリスクを考えると鍵の持ち出しはハードルが高いことも事実。っていうか、そもそも誰が会社に行って鍵を取り出し、入居者の待つ物件まで行くの?という話にもなります。
伝えたいことはシンプルです。鍵はなくさないように、電池交換はマメに行っておいてください。」
「オートロックなし物件の電子錠」は意味が薄い
電子錠付き物件を選ぶ際に、ほとんどの記事が触れていない、でも重要な現場視点があります。物件全体のセキュリティレベルと、玄関だけのセキュリティレベルが合致しているかどうかです。
オートロックと連動した電子錠であれば、建物全体のセキュリティの一部として機能します。エントランスのオートロックで外部の人間を遮断し、さらに各部屋の玄関に電子錠があれば、セキュリティの多層構造として意味があります。
一方、オートロックが設置されていない普通のアパートの玄関だけに電子錠が付いているケースがあります。こうした物件は、建物に誰でも入れる状態で、玄関だけが電子錠という状態です。セキュリティ全体としての効果は限定的と言わざるを得ません。
なぜそういう物件が存在するのかというと、背景にはプロパンガス会社による設備提供スキームがあります。プロパンガス会社が給湯器・インターホン・電子錠などをオーナーに無料提供し、ガス料金で回収するという仕組みが以前は広く行われていました。そのスキームの一環で設置された電子錠が、スキームの終焉後も残っている物件があります。
こうした物件の電子錠は、物件のセキュリティを高めるために設置されたものではなく、別の商業的な理由で設置されたものです。「電子錠があるから安心」とは必ずしも言えません。オートロックと連動しているかどうかが、電子錠の意味を判断する最初の確認事項です。
防犯カメラとオートロックの実態についてはオートロックの解説記事と防犯カメラの解説記事も参考にしてください。
故障時の費用負担──電子錠はほぼ設備扱い
物件標準設置の電子錠が故障した場合、現場の実感としてサービス設置品扱いになっているケースはほぼありません。設備として管理されており、経年劣化による故障はオーナー負担が原則です。
ただし例外として、後付けで設置された電子錠に「壊れた場合は通常の鍵に戻す場合がある」という特約が付いているケースがあります。プロパンガススキームの時代に後付けされた電子錠で、こうした特約を見たことがあります。重要事項説明書の設備欄と特約欄を念のため確認しておくとよいでしょう。
詳しくは重要事項説明書の確認ポイントを参考にしてください。
なお、電池切れによる締め出しは入居者自身の管理の問題として対応が求められます。電池交換のコストと手間は入居者負担になることがほとんどです。
自分で後付けしたい場合の注意点
現在の物件に自分でスマートロックを取り付けたい場合、管理会社への許可は必要ですが、許可が下りることがほとんどです。ただし品番・型番の確認が求められることがあります。ドアのサムターン形状と製品の適合を事前に確認してください。
退去時の原状回復は「取り外して元の状態に戻す」だけで基本的にはOKです。貼り付け型の場合、テープ跡が残ると補修を求められることがあるため、剥がせる素材のテープを使用した製品を選ぶことをお勧めします。
なお、夏場に玄関ドアが蓄熱すると両面テープの粘着力が落ちて本体が脱落することがあります。南向き・西向きのドアに貼り付け型を設置する場合は特に注意してください。
内見で確認すべき3つのポイント
電子錠付き物件の内見では、以下の3点を必ず確認してください。内見全体のチェックリストも合わせて参考にしてみてください。
1. オートロックと連動しているかを確認する 電子錠の単体設置か、オートロックと連動した一体型かを確認します。オートロックなしの物件に電子錠だけが付いている場合は、セキュリティ全体の観点から効果を慎重に判断してください。
2. 有事のバックアップ開錠方法を確認する 電池切れ・停電・システム障害が発生した際に物理鍵で開錠できる機構があるかを確認します。カバーを外す必要がある・特殊な工具が必要といった機種の場合は、緊急時の手順を入居前に把握しておいてください。物理鍵のバックアップがない機種は緊急時のリスクが高くなります。
3. 電池交換の頻度・方法と管理会社の緊急連絡体制を確認する カードキー型は電池交換頻度が高い傾向があります。電池交換の手順と費用負担について確認しておきましょう。あわせて、夜間・休日に締め出された場合の管理会社の対応時間を確認しておくことをお勧めします。
電子錠は「付いているから安心」「付いていないから不便」ではありません。オートロックとの連動・有事のバックアップ・締め出し時の対応体制、この3点を確認したうえで判断することが、入居後の後悔を防ぐことになります。
鍵全般の費用や取り扱いについては鍵交換費用の解説記事も参考にしてください。
この記事を書いた人:不動産会社店長
業界歴20年以上の現役店長。現場の第一線で培った知見を活かし、大手不動産メディアにて累計50本以上の専門記事を執筆中。 業界の表も裏も知り尽くした「不動産のプロ」として、不動産会社の不都合な真実を伝えます。
不動産・建築の専門家として、以下の大手メディアにて2026年現在も継続的に執筆・監修を行っています。
- 東急リバブル(LIVABLE タイムズ):法人・投資家向けのCRE戦略や空き家対策記事を20本以上寄稿
- ハウスコム(暮らしエイト):宅建士の視点から賃貸トラブル解決法を30本以上執筆
- CHINTAI(CHINTAI情報局):現場を知る店長としてお悩み解決記事を連載中