未成年者の契約は取り消せる|宅建試験の頻出論点と不動産実務での実態を現役宅建士が解説【2026年対応】

宅建テキストを読んでいると「未成年者の契約は取り消せる」という記述が出てきます。

「無効じゃないの?」と思った方、鋭い疑問です。前回解説した意思能力が欠けた状態での契約は「無効」でしたが、未成年者の契約は「取り消せる」という異なる扱いになっています。この違いには明確な理由があり、試験でも実務でも重要な論点です。

この記事では、実務で毎日契約書と向き合う現役宅建士店長が、未成年者の行為能力・取消権の仕組み・例外のパターンを整理し、不動産現場での親権者同意の実態までお伝えします。

なお2022年の民法改正で成年年齢が18歳に引き下げられており、一部の古いテキストや競合サイトには廃止前のルールが残っています。この記事は2026年時点の現行法に対応しています。


目次

未成年者の行為能力|定義と試験で問われる論点

未成年者は意思能力がないわけではありません。自分の行為の結果をある程度理解できる能力はあります。しかし経験や判断力が十分でないため、法律が「後から取り消せる」という保護を与えています。

この「意思能力の欠如(無効)」との違いが、試験でも実務でも最初に押さえておきたいポイントです。

未成年者とは|2022年改正で18歳未満に変わった

未成年者とは18歳未満の者を言います。2022年4月1日施行の民法改正により、成年年齢がそれまでの20歳から18歳に引き下げられました。したがって18歳・19歳はすでに成年であり、単独で有効に契約を締結できます。

試験対策として押さえておくべき点は、18歳に引き下げられたのは「成年年齢」であるという点です。飲酒・喫煙・公営ギャンブルは引き続き20歳からであり、成年年齢の引き下げとは連動していません。

なぜ「無効」ではなく「取り消せる」なのか——立法趣旨から理解する

前回の記事で解説した通り、意思能力を欠いた状態での契約は「無効」、つまり最初から効力が生じません。では未成年者の契約はなぜ「無効」ではなく「取り消せる」なのでしょうか。

理由は保護のバランスにあります。未成年者には一定の判断能力がありますが、社会経験が乏しく不利な契約を結んでしまう可能性があります。そこで法律は「一応有効として扱いつつ、後から取り消せる権利を与える」という形で保護しています。

完全に無効にしてしまうと、未成年者にとって有利な契約まで効力を失わせることになり、かえって不都合が生じるからです。

整理するとこうなります。意思能力の欠如は「そもそも契約として成立していない(無効)」であり、未成年者の保護は「一応成立しているが後から取り消せる(取消)」という違いです。

法定代理人の同意が原則必要|同意なしの契約は取り消せる

未成年者が法律行為をするには、原則として法定代理人(父母など親権者)の同意が必要です(民法5条1項)。同意を得ずに締結した契約は、未成年者本人または法定代理人が取り消せます(民法5条2項)。

取消権者は「本人」と「法定代理人」の両方です。簡単に言えば、未成年の息子から取り消します!と言っても、お母さんから取り消します!と言っても、どちらでOKということですね。

また取消しの効果は相手方の善意・悪意を問わず主張できます。これは、取引の相手方が「このひと、未成年です」と知っていた(悪意)としても、知らなかった(善意)としても、取り消しと言ってしまえば取り消せる、ということです。相手が「未成年者とは知らなかった」と言っても、取消しはきちんと有効です。

取り消せない例外4つ|試験の頻出ポイント

以下の4つのケースでは、法定代理人の同意がなくても未成年者が単独で行った行為を取り消せません。

  • ①単に権利を得る・義務を免れる行為(民法5条1項ただし書) 贈与を受ける・借金を免除してもらうなど、未成年者にとって利益しかない行為は同意不要です。不利益が一切ない行為まで保護する必要はないという考え方から来ています。
  • ②法定代理人が処分を許した財産の処分(民法5条3項) 「これは自由に使っていい」と渡されたお小遣いの範囲内での行為は同意不要です。ただし許可された目的・範囲を超える処分は同意が必要になります。
  • ③営業を許可された範囲での行為(民法6条) 法定代理人から特定の営業を許可された未成年者は、その営業に関しては成年者と同一の能力を持ちます。ただし効果はその営業の範囲内に限られます。「古着屋の営業を許可された未成年者」が「居住用の建物を購入する」行為は許可の範囲外なので取り消せます。この範囲の限定は試験で頻繁に問われる論点です。
  • ④詐術を用いた場合(民法21条) 未成年者が「自分は成年者だ」と相手を積極的に騙して契約した場合、制限行為能力を理由とした取消しができなくなります。免許証の偽造などがこれに当たります。一方、自分から言い出さなかっただけでは詐術には当たりません。

成年擬制は2022年改正で廃止|古いテキストに注意

2022年より前のテキストや競合サイトには「婚姻した未成年者は成年とみなす(成年擬制・民法753条)」という記述が残っていることがあります。しかしこのルールは2022年4月1日の民法改正で廃止されています。

廃止の理由はシンプルです。成年年齢が18歳に引き下げられ、婚姻年齢も男女ともに18歳に統一されたため、「未成年者が婚姻する」という状況自体が原則として生じなくなったからです。試験勉強で古いテキストを使っている場合は、この点を必ず確認してください。

試験で問われる例題

例題1:「未成年者Aが法定代理人の同意を得ずに土地を売却した場合、買主Bが善意無過失であれば、Aは当該売買契約を取り消すことができない」

→ ×。制限行為能力を理由とした取消しは、相手方の善意・悪意を問わず主張できます。Bが「未成年者とは知らなかった」としても取消しは有効です。

例題2:「古着の仕入販売の営業を許可された未成年者が、法定代理人の同意なく自己の居住用建物を購入した場合、法定代理人はこの売買契約を取り消すことができない」

→ ×。営業許可の効果はその営業の範囲内に限られます。居住用建物の購入は古着の仕入販売とは無関係なので、通常の未成年者として扱われ、取り消せます。

例題3:「未成年者Aが成年者であると偽って契約を締結した場合、Aは制限行為能力を理由として当該契約を取り消すことができない」

→ ○。詐術を用いて相手を騙した場合は取消権が失われます。


【サルバナナ劇場】未成年者の行為能力をわかりやすく解説

ここからはサルバナナ劇場です。未成年者の取消権と詐術の論点を動物たちで再現します。

未成年サルの契約がなぜ取り消せるのか

森に暮らす16歳の子サル(未成年)が、親サル(法定代理人)に何も言わずにゴリラから「この山、100万バナナで買う!」という契約書にウキッとサインをしてしまいました。

この契約は一応成立していますが、親サルまたはサル本人が「取り消す」と言えば、最初から契約がなかったことになります。ゴリラが「俺はサルが未成年だとは知らなかった!」と主張しても関係ありません。制限行為能力を理由とした取消しは、相手の善意・悪意を問わないからです。

なぜ「無効」ではなく「取り消せる」なのでしょうか。実はこの契約、サルにとって山が非常に安く買えた可能性もあります。完全に無効にしてしまうと、有利な契約まで効力を失わせることになって、かえってサルが損をしてしまいます。だから森の法律は「一応有効にしておいて、サルや親サルが嫌なら取り消せる」という設計にしているのです。

詐術を使ったサルは取り消せない

同じ16歳のサルが、今度は「俺はもう20歳だ」と偽の証明書を見せてゴリラを騙し、山の売買契約を結びました。後から「やっぱり未成年だったので取り消します」と言い出しました。

この場合、取消しはできません。自分から積極的に「成年者だ」と騙して契約した以上、未成年であることを盾にして取り消すことは認められません(民法21条)。自分でついた嘘を自分の武器にはできない、というのが森の法律の判断です。

店長の独り言

「サルバナナ劇場でわかりやすく解説しましたが、詐術の論点は実務でも起きないとは言えません。若く見えない方が実は未成年だったというケースは稀にあります。だからこそ業界では本人確認書類の提示を徹底しているわけで、免許証や保険証で年齢を確認することはトラブル防止の基本中の基本です。」


実務ではこうなる|現役宅建士が使いどころを解説

試験で覚えた未成年者の行為能力は、不動産実務のどの場面で機能しているのでしょうか。

法律上はこうなる

未成年者が法定代理人の同意なしに単独で締結した契約は取り消せます。

つまり未成年者との契約は、法定代理人の同意が確認できるまでは、後から取り消されるリスクを常に抱えています。相手が善意無過失であっても取消しを防げないため、契約する側にとって非常に不安定な状態です。

実務上はこう動く|親権者同意書を絶対にとる

不動産業界では大学入学のシーズンになると、未成年者との賃貸契約が集中します。18歳・19歳はすでに成年なので単独で契約できますが、それ以下の場合は必ず親権者の同意が必要です。

実務では親権者に直接連絡して同意を確認するだけでなく、「親権者同意書」という書面への署名捺印まで取得するのが業界標準です。これは口頭での同意では後から「同意していない」と言われるリスクがあるためで、どの不動産会社でも徹底している手続きです。

また未成年者が単独で店頭に来店して部屋探しをするケースもあります。部屋探し自体は問題ありませんが、申込みの段階では親権者同意書がなければ前に進めません。「いい部屋が見つかって、親御さんの同意が取れたらまたいらしてください」というのが現場での自然な対応です。

18歳成人改正で実務はほとんど変わらなかった理由

2022年4月の成年年齢引き下げで実務への影響はほぼありませんでした。理由は単純で、不動産の賃貸借契約では以前から18歳・19歳の申込者に対しても親権者保証人を求めるケースが多く、同意確認の実務はすでに確立していたからです。法律上の成年年齢が変わっても、現場の審査基準や手続きはほとんど変わっていません。


未成年者の行為能力——試験と実務で押さえておくべきポイント

未成年者の契約は「無効」ではなく「取り消せる」です。この違いは、未成年者に一定の判断能力を認めつつ、有利な契約は残せるようにした立法趣旨から生じています。前回の意思能力(無効)との対比は試験でも問われる重要な論点ですので必ず押さえてください。

取消権の例外として、単に権利を得る行為・処分許可財産・営業許可の範囲・詐術の4つを覚えておいてください。特に「営業許可の範囲外は通常の未成年者として扱われる」という論点と「詐術を使うと取り消せなくなる」という論点は試験で頻出です。

なお成年擬制(婚姻した未成年を成年とみなす制度)は2022年の民法改正で廃止されています。古いテキストに記載が残っているケースがありますので注意してください。

次回は成年後見制度(後見・保佐・補助)について解説します。権利能力・意思能力の解説もあわせてお読みください。

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