
「相続で古い家を引き継いだが、とても管理できる状態ではない。でも売れるのだろうか」
そんな不安を抱えて相談に来られた売主様の事例です。
5年以上にわたって空き家状態が続き、庭木は伸び放題、室内には草木が侵入し、到底そのままでは売れない状態。当初800万円での売却を希望されていましたが、現実的な売却に向けてどう着地させるか。売却活動開始からわずか1週間で400万円の成約に至った、福岡県南部エリアならではの不動産売却の実例を現役不動産会社の店長がお伝えします。
なお、物件や売主の特定を避けるため、内容については特定できない範囲でのご紹介となります。ほか、画像は対象不動産とは関係ありません。
物件・売主の概要
今回ご紹介する柳川市郊外の物件概要は以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在エリア | 柳川市郊外 |
| 物件種別 | 戸建て(木造2階建て) |
| 築年数 | 大正時代築(築齢不詳) |
| 広さ・間取り | 延べ床約120㎡・8LDK |
| 売却価格 | 400万円 |
| 売却期間 | 売却活動開始から1週間 |
| 売却理由 | 相続により取得したが管理しきれなくなった |
売却に向けての困難|何がネックだったか
実際に売却のご相談を受け現地を確認させていただき、さらに売主様の状況をヒアリングした結果、この物件を売却するにはいくつかの障害があることが判明しました。
5年以上の空き家放置が生んだ「手がつけられない」状態
相続により取得してから5年以上、誰も住んでいない状態が続いていました。庭木は伸び放題で隣地への越境も懸念される状態。裏庭には手入れされた日本庭園の痕跡がありましたが、すでに枯渇して荒れ果てていました。室内にまで草木が侵入しており、建物としての機能をほぼ失っている状態です。
売主様がまず直面したのは「売りに出す前に何をすればいいかわからない」という問題でした。動産(家財道具)の撤去・庭の清掃・建物の漏水箇所の補修・隣地との境界を確定する確定測量など、これらをすべて売却前に実施しようとすれば、数百万円規模の初期費用が必要になります。
相続で取得した物件にそれだけの費用を投じることは、売主様にとって現実的ではありませんでした。
当初希望800万円と現実の乖離
売主様の当初の希望売却価格は800万円でした。しかし柳川市郊外エリアの現実を踏まえると、この価格での成約は極めて難しい状況と言わざるを得ません。
柳川市を含む福岡県南部の郊外エリアは、少子化・人口減少の影響を直接受けており、土地余りの傾向が続いています。地価が上昇する見込みは低く、むしろ時間が経過するほど資産価値が下がるリスクがある地域です。加えて大正時代築という建物の築齢・室内への草木の侵入・漏水という状態を考えると、一般の買主が住宅ローンを使って購入できる物件ではありませんでした。
店長の独り言
「売主様が800万円という希望価格を持って来られたとき、その気持ちは十分に理解できました。何十年も家族が暮らした家ですし、相続で引き継いだ以上は少しでも高く売りたいというのは自然な感情です。
ただ、現実を正直にお伝えしないことが売主様のためになるとは思いませんでした。
動産撤去・確定測量・漏水補修を積み上げると、それだけで数百万円が消えます。初期費用をかけて800万円を目指すより、初期費用ゼロで早期に現金化する方が手元に残るお金が多くなる可能性があります。
この試算をきちんとお見せすることが最初の仕事でした。」
どう解決したか|買取再販という選択
このような柳川市郊外の不動産を売却するにあたり、解決策は「買取再販」と呼ばれる手法がもっとも望ましいと考えました。
なぜなら、現状で個人に対して売却することを想定すると、契約不適合を免責として附帯させたとしても、やはり買主様からの異議申し立てリスクが排除できないと考えたからです。
確定測量・清掃費用ゼロの方針を決断
この物件の解決策として提案したのは「買取再販業者への早期売却」です。一般市場での売却(仲介売却)ではなく、リフォームを得意とする買取再販業者に直接買い取ってもらう方法です。
買取再販業者であれば、現状のままの物件でも購入できます。動産撤去・確定測量・漏水補修といった売却前の初期費用を一切かけることなく、物件をそのまま引き渡せます。売主様にとっては出費ゼロで現金化できるという大きなメリットがあります。
また契約不適合責任を免責とする条件で契約できたため、引き渡し後に建物の欠陥が発覚しても売主様には責任が生じません。売主様にとってノーリスクの売却が実現しました。
1週間での成約|適切な相手への直接アタック
買取再販業者の中でも、古民家・築古物件のリノベーションを得意とするリフォーム会社に対してアタックしました。彼らにとって、柳川市郊外の広い敷地・大正時代の古民家は「安価で仕入れてリノベーションする」という自社ビジネスと合致する物件です。
売却活動を開始してからわずか1週間で買取業者から申込みが入り、400万円での成約となりました。買取業者からは「安価で取得できた」という言葉をいただき、売主様からは「初期投資なしでこれだけの金額で現金化できるとは思っていなかった」と喜んでいただけました。
店長の独り言
「売却後に知った話ですが、どうやらこの物件、他の仲介業者へもお声がけされていたようです。しかし、事前のリサーチでも該当する物件は指定流通機構にも掲載されていませんでしたし、ポータルサイトへの掲載ももちろんありませんでした。
ちょっと言葉が適切かどうかわかりませんが、どうやら預かるだけ預かって、あとは何もしない。そんな仲介業者だったようです。
直接の能動的なアクションはどこまでできるか、という議論は確かにありますが、少なくともサイト掲載くらいはしておかないと人の目に触れることもありませんし、もっと言えば当然売れるはずもありません。」
この事例から見える福岡県南部エリアの売却の現実
このような、地方都市の郊外に存在する不動産の売却にはいくつか知っておくべき内容があります。ここでは、郊外型の戸建てを売却するときに押さえておきたいポイントを解説します。
時間をかけるほど価値が下がる郊外の古民家
柳川市・みやま市・八女市・筑後市などの福岡県南部郊外エリアは、人口減少・少子化の影響を受けて土地余りの状態が続いています。地価が今後上昇する見込みは低く、空き家のまま放置すれば固定資産税の負担が続くうえ、建物の劣化が進んで売却価格がさらに下がるリスクがあります。
「もう少し待てばいい買主が現れるかもしれない」「少しでも高く売りたい」という考え方は、気持ちは本当に理解するのですが、残念なことに郊外エリアの築古物件には当てはまりません。早期に売り抜けるという判断が、結果的に売主様の手元に残るお金を最大化することにつながります。
然るべき相手に届ければ出口は必ずある
一般の買主には売れなくても、買取再販業者・リフォーム会社・古民家再生に特化した事業者など、適切な相手に物件の情報を届ければ成約の可能性は十分にあります。問題は「その相手を知っているかどうか」です。地域密着で業者ネットワークを持つ不動産会社であれば、一般市場では売れないと思われる物件でも出口を見つけることができます。
店長の独り言
「売却したい物件をお預かりするとき、必ずお伺いするのが売却理由です。郊外で多い理由は、相続による売却希望です。
ご先祖様から譲り受けた土地を売却するのは忍びない、そう考える人も少なくありません。しかし、本当にそうでしょうか?
もしも先祖代々の土地を売却することが悪なのであれば、これまで日本中、いや世界中で行われてきた不動産売買はすべて悪いことだったということになります。
また、これは屁理屈かもしれませんが、ご先祖様の中にも土地を売却した人って絶対にいると思うのです。
ですので、維持管理が大変になるまえに、売却が困難な状況になる前に、ぜひ一度ご相談ください。」
同じような状況でお悩みの方へ
相続で引き継いだ物件が空き家になっている・築年数が古すぎて売れないと思っている・初期費用をかけずに売却したい。そのようなお悩みをお持ちの福岡県南部エリアの方は、ぜひ一度ご相談ください。
この事例のように、状況を正確に把握したうえで適切な相手に届ける提案ができます。査定・相談は無料です。
の記事を書いた人:不動産会社店長
業界歴20年以上の現役店長。現場の第一線で培った知見を活かし、大手不動産メディアにて累計50本以上の専門記事を執筆中。 業界の表も裏も知り尽くした「不動産のプロ」として、不動産会社の不都合な真実を伝えます。
不動産・建築の専門家として、以下の大手メディアにて2026年現在も継続的に執筆・監修を行っています。
- 東急リバブル(LIVABLE タイムズ):法人・投資家向けのCRE戦略や空き家対策記事を20本以上寄稿
- ハウスコム(暮らしエイト):宅建士の視点から賃貸トラブル解決法を30本以上執筆
- CHINTAI(CHINTAI情報局):現場を知る店長としてお悩み解決記事を連載中
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