
「離婚することになった。家をどうすればいいか」
こういった相談は、実は不動産の現場で珍しくありません。今回はみやま市瀬高町で、ご離婚を機に売却が必要になった注文住宅の事例です。
こだわり素材の注文住宅は、売り方を誤るとマイナスにしか働かない難しさがあります。栗の無垢床・大型ウッドデッキという個性が、買主にとって「扱いにくい物件」と映るか「暮らしが豊かになる物件」と映るかは、提案の仕方ひとつで変わります。掲載直後から郊外にしては多くの内見をいただき、約6ヶ月で近隣のファミリー世帯への成約に至った経緯をお伝えします。
なお物件や売主の特定を避けるため、内容は特定できない範囲でのご紹介となります。画像は対象不動産とは関係ありません。
物件・売主の概要
今回ご相談いただいたみやま市の物件の概要は以下のとおりです。たくさんの物件を知っている私から見ても、「これはいい物件だな」とわかるくらいの、良質な素材仕様と適切に管理された歴史を手に取るように感じることができました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在エリア | みやま市瀬高町 |
| 物件種別 | 戸建て(注文住宅) |
| 築年数 | 約15年 |
| 広さ・間取り | 土地300㎡・建物120㎡・5LDK |
| 売却価格 | 約2,000万円 |
| 売却期間 | 約6ヶ月 |
| 売却理由 | ご離婚によるもの |
売却に向けての困難|何がネックだったか
売却活動に困難はつきものです。今回のみやま市の事例では一体何がネックだったのでしょうか。
離婚による売却——意外と多い相談のひとつ
離婚を機に不動産を売却するというご相談は、売却理由で言えばベスト3に入る、言えばよくある売却理由です。今回のケースでは幸いご主人単独名義の物件であったため、先行して売却活動を進めることができました。
共同名義の場合は離婚の協議と売却のタイミングを合わせる必要があり、手続きが複雑になります。名義が一方にあるかどうかというだけで、売却活動のスピードがまったく変わってきます。今回はこの点で大きな障壁を免れることができました。
郊外の注文住宅が抱える2つの大きな問題
今回の最大のネックは「注文住宅」であるという点です。注文住宅自体は建物の品質が高く良いことなのですが、郊外立地との組み合わせで2つの問題が生じやすくなります。
ひとつはオーバーローンのリスクです。注文住宅は建築コストが高いため、郊外エリアの地価水準では売却価格がローン残債を下回るオーバーローン状態になりがちです。今回はこの問題を回避できる価格設定が可能でしたが、郊外の注文住宅売却では常に確認が必要な論点です。
もうひとつは「こだわりポイントがマイナスになる」という逆説です。建てた方にとっての理想が、買主にとっての「扱いにくさ」に変わってしまうことがあります。今回がまさにこのパターンでした。
栗の無垢床とウッドデッキという諸刃の個性
この物件の最大のこだわりポイントは「素材と意匠」にありました。床材には栗の無垢材が使われており、一般的なフローリングとは質感がまったく異なります。庭にはかなり大きなウッドデッキが設置されており、敷地の相当な面積を占めていました。庭がウッドデッキによって明らかに侵食されていたのです。
栗の無垢床は長年の使用で傷がついており、補修には大きなコストがかかるというネックがありました。ウッドデッキは庭を圧迫しており、買主が庭を自由に使える面積を狭めているという問題もありました。そのままの状態で「傷のある床・庭を占領するデッキ」として提示してしまうと、これらはそのままマイナス要因になります。
店長の独り言
「注文住宅の売却をお手伝いするときにいつも思うのは、建てた方のこだわりと買う方のニーズは必ずしも一致しないということです。売主の方にとって10年以上愛着を持って暮らした家の個性が、初めて見た買主にはただの『扱いにくさ』に映ることがある。
それをどう橋渡しするかが、仲介業者の腕の見せどころです。」
どう解決したか|マイナスをプラスに変える提案
売れにくい理由を並べるだけでは、売却活動は一向に進みません。今回は、マイナスの印象がある箇所をいかにプラスに見せるか、という点に注目した売却活動を行いました。
裸足で体感してもらう|栗の床の逆転
内見のとき、買主候補のご家族には裸足で床を歩いてもらいました。栗の無垢材は一般的なフローリングやフロアタイルとは歩き心地がまったく異なります。しっかりとした弾力と温もりは、実際に足で触れてはじめて伝わるものです。
「傷がある床」という事実は変わりませんが、「なぜこの床材が選ばれたのか」という背景と、実際に足で感じる体験を重ねることで、傷は「長年大切に使われてきた証拠」として受け取られるようになりました。
ウッドデッキの「使い方」を画像で提案する
ウッドデッキについては、外部から持ち込んだデスクとチェアを配置した状態の画像加工を用意して、生活シーンとして提案しました。
「バーベキューをしたい」「バーベキューができますよ」このような要望や説明は、ちょっと庭があれば誰にでもいえることです。しかし、このバーベキュー営業、実は逆効果になることがあります。
なぜなら、庭でのバーベキューは年に数回のイベントだからです。一方、ウッドデッキでくつろぐ時間はバーベキューの比ではありません。朝のコーヒーを飲む・夕方に子どもと過ごす・夜に外の空気を感じながら読書をするなど、そういった日常の豊かさとして提案することで、ウッドデッキの価値が「特別なイベント用の設備」から「毎日の生活を豊かにする場所」へと変わりました。
店長の独り言
「内見でウッドデッキを見た買主の第一声は『広いですね』でした。庭が狭く見えるという懸念があったので、その瞬間は正直ホッとしました。
画像加工でデスクとチェアを置いたイメージを事前に送っていたことで、内見前からウッドデッキへのポジティブなイメージを持ってきてもらえていたことが大きかったと思います。」
掲載直後からの多数内見——郊外にしては異例の反響
売却活動を開始した直後から、郊外物件にしては多くの内見申込みをいただきました。築15年・5LDK・土地300㎡という広さのスペックが、お子さんのいるファミリー世帯のニーズと合致したことが背景にあります。最終的に近隣のファミリー世帯が購入する運びとなり、約6ヶ月で成約となりました。
この事例から見えるみやま市エリアの売却の現実
今回の売却では、みやま市エリアにおける中古住宅の売却において、いくつか学ぶことがあります。具体的にどのようなポイントが成功に導いてくれたのか、チェックしてみましょう。
郊外の注文住宅は「物語」で売る
みやま市・柳川市・筑後市などの福岡県南部エリアでは、郊外の一戸建てを探しているファミリー世帯の需要は一定数あります。ただし価格だけで競争しようとすると、新築建売との比較で不利になります。
注文住宅の強みは「その家にしかない物語」にあります。建材・設計・庭の作り込みなど、どの物件にもないオンリーワンの個性をどう伝えるかが、売却スピードと価格を左右します。一見マイナスに見えるこだわりポイントも、適切な提案によって最大の差別化要素になります。
名義の確認は売却活動の最初の一歩
離婚による売却では、名義の確認が最初にすべき作業です。単独名義か共同名義かによって、売却活動を開始できるタイミングがまったく変わります。ご状況を整理したうえで、どの順番で動くべきかを早めに確認することが、売却をスムーズに進めるための最重要ポイントです。
また、残債(残っているローン残高のこと)の確認も欠かせません。売却によりオーバーローン(売却価格よりもローン残高の方が多く、売却しても赤字になること)になるとわかっているのに、急いで売却しようという人はあまり多くありません。なにより、オーバーローン分を一括で支払うことなどできる人も現実的に少ないからです。
同じような状況でお悩みの方へ
離婚による売却・注文住宅の売却・郊外エリアで売れるか不安、そのようなお悩みをお持ちの福岡県南部エリアの方は、ぜひ一度ご相談ください。物件の個性を正しく伝える提案で、想定外の買主と出会える可能性があります。査定・相談は無料です。
また、売却以外の利活用についても必要に応じてご提案することが可能です。一人で悩まずに、ぜひお気軽にお声がけください。
この記事を書いた人:不動産会社店長
業界歴20年以上の現役店長。現場の第一線で培った知見を活かし、大手不動産メディアにて累計50本以上の専門記事を執筆中。 業界の表も裏も知り尽くした「不動産のプロ」として、不動産会社の不都合な真実を伝えます。
不動産・建築の専門家として、以下の大手メディアにて2026年現在も継続的に執筆・監修を行っています。
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