賃貸のお風呂の水垢は退去費用を請求される?現役店長が「触って判断する」現場基準と追加費用のロジックを解説

「お風呂の水垢、退去のときに請求されるのかな」と不安になっていませんか。ネットを調べると「水垢は通常損耗だから請求されない」という記事も見かけますが、実際の退去立会いの現場はそう単純ではありません。

水垢は程度によって請求されるケースと請求されないケースがはっきり分かれます。そしてその判断は、ガイドラインの文言より現場担当者の「感覚」に依存している部分が大きいのが実態です。

そこで、この記事では、現場でどう判断しているか・どこまでの水垢なら請求されないか・追加費用が発生するのはどんな場合かを、退去立会い1,000件超の現役店長が本音でお伝えします。


目次

お風呂の水垢は退去費用を請求されるか

そもそも、賃貸物件でお風呂に水垢が残った状態で退去したとき、退去費用を請求されるのでしょうか?まずは、費用請求されるボーダーラインを知ることから始めましょう。

水垢は原則「通常損耗」

国土交通省の原状回復ガイドラインでは、水回りの水垢は「通常の生活を送る中で発生するもの」として原則貸主負担とされています。お風呂を普通に使っていれば水垢がつくのは避けられないため、軽度の水垢は入居者が費用を負担しなくてよいというのが基本的な考え方です。

ただしこれは「どんな水垢でも請求されない」という意味ではありません。ガイドラインには「通常の清掃を怠った結果生じた汚損」は入居者負担という記載もあります。水垢の程度が「通常の生活の範囲内か」「清掃を怠った結果か」という判断が、退去費用の分かれ目になります。

水垢の判断基準は「触る」のが一番

退去立会いの現場で水垢を見たとき、私は必ず「触ります」。見た目だけではわからない水垢の蓄積度合いが、手で触れることで一発でわかるからです。

表面をさっと指でこすったときの感触が判断基準になります。スルッとした感触であれば軽度の水垢でハウスクリーニングで対応できる範囲です。ザラザラとした感触で指に白い粉のようなものがつく、あるいは爪で少し引っかくと消しゴムのカスのようなものが出てくる、この状態が請求を検討するボーダーラインです。

長年蓄積した水垢は層になって固着しており、通常のハウスクリーニングでは落としきれない場合があります。この段階まで放置すると、追加の費用が発生する可能性が高まります。

店長の独り言

「見た目だけで判断すると見落とすことがあるので、必ず触るようにしています。特に浴槽のエプロン部分(側面)や床のすみっこは、パッと見ではきれいでも触るとザラザラしていることは珍しくありません。

シンデレラの小姑のようですが、これも仕事なので許してください。」


水垢・カビの違いと部位別の扱い

ひとことで「お風呂の汚れ」「水垢」と言っても、場所や種類によって実は大きく異なる点があります。ここでは、お風呂の清掃不足によってどのように退去費用の考え方が変わるのか、その概要をお伝えします。

浴槽・床・壁の水垢——部位による大きな差はない

浴槽・床・壁の水垢については、部位によって退去費用の扱いが大きく変わるということはありません。理由はシンプルで、清掃業者の手間がどの部位でもほぼ同じだからです。

ひとつ補足すると「蛇口だけきれいで他は汚い」という状況はほぼありません。掃除をしている人は全体的に掃除しており、していない人は全体的に汚れています。部位ごとの差より、生活全体の清潔感が退去費用に影響する、と考えておくのが良いでしょう。

ピンクカビと黒カビで手間がまったく違う理由

カビには大きく「ピンクカビ」と「黒カビ」があり、退去費用への影響がまったく異なります。

ピンクカビ(正確にはロドトルラという酵母菌)は、水回りに発生する赤みがかったぬめりです。見た目は派手ですが、通常の洗剤で比較的簡単に落とせるため、ハウスクリーニングの範囲内で対応できることがほとんどです。

黒カビは話が別です。特にパッキン(ゴムの部分)に発生した黒カビは、根が深く浸透しているため強力な薬品を使わなければ落ちません。しかし強い洗剤はパッキンの色落ちや劣化を招くリスクがあるため、業者も慎重に対応せざるを得ません。パッキンの黒カビは手間が増えるため、費用に影響する可能性があります。

店長の独り言

「パッキンの黒カビは本当に厄介で、業者さんも頭を抱えます。現場でよく使われているのが『カビとりいっぱつ』という強力なカビ取り剤です。塩素系の強力な成分でパッキンの奥まで浸透しますが、それでも長年放置した黒カビは完全に除去できないケースがあります。

退去前に自分で試みる場合は、換気を十分に行ってから使ってみてください。」


なお、今回は実際にこの『カビとりいっぱつ』がどれくらい効果があるのかを、空室で試してみました。この写真が、施工前の写真です。

そこにカビとり一発を塗布してみます。

そこから、約3時間つけおきしたら、このくらい綺麗になりました。

素人施工なので塗りが甘い箇所が残っていますが、おおむね塗ったところの黒カビは残っていません。このレベルまで綺麗になっていれば、さすがに退去時にご請求を、とはなりませんね。

なお、水で流すとジェルのような固まりが剥がれ落ちてきます。特に問題はないと思いますが、くれぐれも排水口のつまりなどにはお気を付けください。

鏡のウロコは別格——クリーニングで落ちない本当の理由

浴室の鏡についた白い斑点状の汚れ(ウロコ)は、水垢の中でも最も厄介な存在です。結論から言えば、長年放置したウロコは通常のハウスクリーニングではまず落ちません。

理由は水垢とウロコの「正体」が異なるからです。ウロコは水道水に含まれるカルシウムやケイ素などが蒸発を繰り返す中で結晶化・石化したものです。洗剤で溶かせる汚れではなく、専用の強力な研磨剤で物理的に削り取るか、機械で鏡の表面を研磨する特殊清掃が必要になります。手間と薬品代が段違いにかかるため、鏡のウロコは別料金になるケースがほとんどです。

なお、それでも落ちないと判断されるときは、鏡の交換となります。

ウロコの退去費用の相場・自力で落とせる限界・請求されるボーダーラインについては賃貸の鏡のウロコ・水垢の退去費用で詳しく解説しています。


水垢を放置して退去すると、退去費用はいくらかかるか

では、水垢を放置して退去したとき、一体退去費用はどのくらいかかるのでしょうか?ここでは、一般的な水垢を原因とした退去費用の相場とその理由について解説します。

通常のハウスクリーニングで落ちない場合の追加費用

水垢がひどく通常のハウスクリーニングでは対応できないと判断された場合、追加費用として15,000〜20,000円程度上乗せされるケースが多いです。

なぜ追加費用が発生するのか

「ハウスクリーニングと何が違うのか」という疑問を持つ方も多いと思います。追加費用が発生する根拠は「付け置き時間」にあります。

通常のハウスクリーニングでは、洗剤を塗布してある程度の時間を置いてから洗い流すという作業を行います。水垢が軽度であればこの時間は短くて済みますが、長年蓄積した頑固な水垢は薬品を長時間浸透させなければ効果が出ません。付け置き時間が長くなるということは、業者の拘束時間が増えるということです。時間がかかる=人件費が増える=追加費用が発生する、というシンプルなロジックです。

店長の独り言

「追加費用の説明をするとき『付け置き時間が長くなるから』と説明すると、すんなり納得してもらえることが多いです。水垢は放置すればするほど落としにくくなります。早めに掃除することが、結果的に退去費用を抑えることにつながります。

なお、清掃業者さんは実際に現地で清掃作業を行うとき、汚れの種類を見極めたうえで、独自に洗剤を調合して塗布しています。これは、SNSなどで見たことがある人もいるのではないでしょうか。

これはおススメしたい気持ちはあるのですが、洗剤の知識がない状態で勝手に洗剤を混ぜ合わせると、硫化水素が発生するなどして、命に危険が及ぶ可能性があります。絶対にやめてください。


退去前にできること——自分で水垢を落とす方法

退去費用は請求する側も決して気持ちがいいものではありません。なので、なんとか退去前に対応をお願いしたいと考えています。そこで、ここでは、退去前にできるお風呂掃除について解説します。

自分で落とせる水垢の限界と退去前の対処法

軽度の水垢であれば、退去前に自分で対処することで費用を抑えられる可能性があります。水垢はアルカリ性の汚れのため、酸性の洗剤が効果的です。クエン酸を水に溶かしてスプレーし、しばらく置いてから擦ると軽度の水垢は落とせます。

ただし市販の洗剤で対応できる水垢には限界があります。固着した水垢は素人が無理に擦ると表面に傷がつき、かえって状況を悪化させることがあります。自分での対処が難しいと感じた場合は、専門の清掃業者に依頼することも選択肢のひとつです。

毎日のメンテナンスが退去費用の最大の防衛策

日々のメンテナンスという観点では、入浴後に浴室全体へワンプッシュするだけで水垢・ピンクカビ・石鹸カスをまとめて防げる洗剤が有効です。

店長の独り言

「これは正直、毎回の入浴後に一吹きするだけでいい。疲れて帰ってきた夜でも続けられる手軽さが最大の利点です。退去時に追加費用15,000〜20,000円払うことを考えたら、毎日30秒の習慣は安い投資だと思います。個人的にもバスマジックリンのエアジェットをおすすめしています。

なによりも、ゴシゴシこすらなくてもいいのは、非常に大きなメリットです。

明日退去立会でも間に合います、何もしないよりも絶対にマシです!


毎日のちょっとした掃除で退去費用を安く抑えよう

お風呂の水垢は原則として通常損耗ですが、長年蓄積して固着した水垢は「清掃を怠った結果」として入居者負担になる可能性があります。退去立会いの現場では「触って判断する」のが実態であり、消しゴムのカスのような状態になっていると追加費用が発生するボーダーラインになります。追加費用の相場は15,000〜20,000円で、付け置き時間が長くなることによる人件費の増加が理由です。

鏡のウロコは水垢とは別格の汚れであり、通常のクリーニングでは対応できないケースがほとんどです。早めの対処と日々のメンテナンスが、退去費用を抑える最も現実的な対策です。

お風呂の退去費用全体については退去前のお風呂、どこまで掃除すれば費用を取られないかを、退去費用の全体像は賃貸の退去費用|何を請求されて何を払わなくていいかもあわせてお読みください。

の記事を書いた人:不動産会社店長

業界歴20年以上の現役店長。現場の第一線で培った知見を活かし、大手不動産メディアにて累計100本以上の専門記事を執筆中。 業界の表も裏も知り尽くした「不動産のプロ」として、不動産会社の不都合な真実を伝えます。

不動産・建築の専門家として、以下の大手メディアにて2026年現在も継続的に執筆・監修を行っています。

「ネットの情報だけでは不安…」「自分の初期費用や退去費用の見積もりが妥当か見てほしい」という個人のお客様から、大手メディア様・不動産業者様からの記事監修や執筆、お仕事のご依頼まで、幅広くお受けしております。

相談のジャンル(個人・法人)に合わせて、下記よりお気軽にご相談ください。

現役店長への個別相談・お仕事の依頼はこちら(無料窓口)

  • URLをコピーしました!
目次