
エアコンが壊れた。しかも夏の盛りに——そんな状況でこの記事にたどり着いた方は、今まさに焦っていると思います。まず落ち着いてください。正しい順番で動けば、ちゃんと解決します。
連絡先は管理会社(または家主)です。自分で修理業者を手配したくなる気持ちはわかりますが、それをやると費用が全額自己負担になるリスクがあります。まず管理会社に連絡して、状況を伝えるのが最初の一手です。
ただ、問題はその先です。「連絡したのにいつまでも対応してもらえない」「真夏にエアコンなしで何日も待てない」——そういうケースが実際に起こります。そのときに、黙って待つしかないのかというと、そうではありません。
この記事では、管理会社への連絡タイミングと伝え方から、修理が長引いたときに借主として合法的に動ける手段まで、賃貸管理20年の現役店長が現場の本音を交えて解説します。
エアコンが「なんか調子悪いかも」と思ったら、壊れる前に連絡するのが正解
「まだ動くし、様子を見よう」と思ったまま放置してしまうのが、実はいちばん損なパターンです。完全に故障した後に連絡すると、夏場は修理の予約が1〜2週間先まで埋まっていることも珍しくなく、借主もそのあいだ不便を強いられます。「少し効きが悪い」「以前より音が大きい」という段階で連絡すれば、管理会社も対応しやすく、結果的に解決が早くなります。
もう一つ、シーズン前の試運転もぜひやっておいてください。梅雨明け直前や冬の寒くなり始めなど、エアコンが本格的に必要になる前に一度動かしてみて、異音・異臭・効きの悪さがないか確認しておくと安心です。完全に壊れてから気づくのと、早めに伝えるのとでは、対応速度がまったく違います。
連絡前にできるセルフチェック
管理会社に連絡する前に、次の点を確認してみてください。簡単に解決するケースもあります。
| チェック項目 | 確認方法 |
|---|---|
| リモコンの電池切れ | 電池を新品に交換して試す(表示が消えていたら電池切れ) |
| ブレーカーが落ちていないか | エアコン専用のブレーカーを確認・復旧 |
| 室外機まわりの障害物 | 周囲に荷物・植木鉢等がないか確認し、風通しを確保する |
| ドレンホースの詰まり | 室内から水がぽたぽた落ちる場合は詰まりの可能性あり |
室外機のまわりに荷物を置くと排熱が妨げられ、「冷えが悪い」「すぐ止まる」という症状が出ます。現場でもよく見かけるケースで、障害物を取り除くだけで改善することがあります。
ドレンホースは室外に出ている排水用のホースです。虫が入り込んで詰まると、室内機から水が滴り落ちてきます。防虫ネットをつけておくだけで防げるので、気になる方は確認してみてください。
リモコンをなくしてしまった場合は、エアコン本体に「応急運転ボタン」があります。機種名と「本体操作」で検索すると操作方法が見つかりますので、修理を待つあいだの一時しのぎとして活用できます。
上記を確認しても改善しない場合は、管理会社への連絡です。
管理会社への連絡、何を伝えると対応が速くなるか
管理会社に「エアコンが壊れました」の一言だけ伝えても、すぐには動けません。管理会社が動くためには症状の詳細・型番・現状の写真が必要で、これらがそろっていないと「詳細確認が必要」として後回しになりがちです。逆に言えば、情報を揃えて連絡するだけで対応速度が変わります。
伝えるべき4つの情報
- 症状:何がどういう状態か(「電源は入るが冷風が出ない」「エラーコードが表示されている」など)
- いつ頃から:症状が出始めた時期
- 型番:本体の側面または前面パネル内に記載あり。エラーコードもあれば合わせて伝える
- 写真・動画:症状が出ている状態のもの
型番とエラーコードまで伝えられると、修理業者が現地に来なくても部品を特定できる場合があり、修理が一段階早くなります。
設備か残置物かを確認する
連絡の前に、そのエアコンが「設備」か「残置物」かを確認しておきましょう。これによって、修理費用の負担がまったく変わります。
| 種別 | 内容 | 費用負担 |
|---|---|---|
| 設備 | 入居前から備え付けられた家主の所有物 | 家主負担が原則 |
| 残置物 | 前の入居者が置いていったもの | 入居者の自己負担 |
確認方法は、入居時に受け取った室内設備表または重要事項説明書です。エアコンが「設備」として記載されていれば管理会社の対応対象です。契約書の特約部分に記載されているケースもあります。記載が見当たらない場合は、契約した不動産会社に問い合わせるのが確実です。
修理費用は誰が負担する?
設備として備え付けられたエアコンが故障した場合、修理費用は家主の負担が原則です。入居者が費用を心配しすぎる必要はありません。
よく「フィルター掃除を怠ったら入居者負担になる」と書かれているのを見かけますが、現場の実態は少し違います。エアコンが完全に動かなくなる原因の大半は、基板の不良やコンプレッサーの経年劣化など、入居者の使い方とは無関係なものです。フィルターが詰まっても「効きが悪くなる」ことはあっても、完全に故障することはほぼありません。そもそもフィルターの詰まりは自分で掃除すれば解決できる話です。
費用負担の整理
| 原因 | 費用負担 |
|---|---|
| 経年劣化・基板不良・コンプレッサー故障など | 家主負担 |
| 入居者の明らかな過失(物をぶつけた・水をかけたなど) | 入居者負担 |
| フィルター未清掃による効き不良 | 自分で掃除して対応(故障とは別) |
普通に使っていて壊れた場合は、ほぼ家主負担と考えて問題ありません。
修理が長引くとき——法律上の権利と実務的な戦い方
ここが最も重要なセクションです。「連絡したのに何日経っても対応してもらえない」という状況は、残念ながら珍しくありません。そのときに借主として何ができるのか、法律上の根拠と現場で実際に有効な手順を合わせてお伝えします。知っているか知らないかで、解決までのスピードがまったく変わります。
法律上の権利:民法611条とJPMガイドライン
2020年4月の民法改正(第611条)により、貸室・設備に不具合が生じて使えない期間は、賃料が当然に減額されることが法律で明確に定められました。借主が申し出なくても自動的に発生する権利です。法律上は、故障が生じた時点から免責となります。
ただし、管理会社が状況を把握して修理手配するまでには一定の時間が必要です。そのため、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会(JPM)が2024年に公表したガイドラインでは、設備ごとに「免責日数」の目安が設けられています。
出典:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会 「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」
JPMガイドライン:設備別の減額割合と免責日数
| 設備 | 賃料減額割合 | 免責日数 |
|---|---|---|
| エアコンが作動しない | 10% | 3日 |
| トイレが使えない | 20% | 1日 |
| 風呂が使えない | 10% | 3日 |
| ガスが使えない | 10% | 3日 |
| 水が使えない | 30% | 2日 |
※ガイドラインに法的拘束力はありませんが、交渉の根拠として十分機能します。また免責日数は状況に応じて調整可能です。
エアコンの場合、管理会社に連絡してから3日を超えても使えない状態が続くようであれば、その期間の賃料の10%を減額請求できるという考え方です。これを知っておくだけで、管理会社との交渉の土台がまったく変わります。
管理会社の対応が遅くなる理由
管理会社がなかなか動かないのは、悪意があるというよりも、構造的な事情があります。ほとんどの管理会社は「指定業者」とのみ取引するルールになっており、いくら急いでいても、その業者の空き状況に対応が左右されます。入居者が「明日来られる業者を見つけた」と言っても、管理会社は正式なルート以外では動けません。
逆にこの仕組みを理解したうえで動くと、話が早くなります。
実際に有効な手順
STEP 1:自分で近所の電気屋や修理業者に問い合わせて、「何日で来られますか」と確認する。
STEP 2:管理会社に次のように伝える。「近所の○○という業者が明日来られると言っています。このまま待つと連絡から3日を超えて家賃の減額対象になりますが、どうしますか」
これは脅しではなく、借主として正当な権利を伝えているだけです。管理会社としても、修理が長引いて家賃減額が発生するよりも、多少イレギュラーでも早期解決したほうが得策と判断することがあります。丸投げにして待っているだけでは解決が遅くなるだけです。合法的に主導権を持つことが、結果的に一番早い解決につながります。
なお、管理会社の承諾を得たうえで自分で手配した修理費用は、民法608条に基づき家主に請求できます。その場合は領収書を必ず保管しておいてください。
修理を待つあいだの代替対応
管理会社や家主に対して、次の対応を要求することは正当な権利です。
- 冷風機・ウインドクーラー・扇風機などの代替品の手配
- 真夏で健康上のリスクがある場合は、一時的なホテル移動の費用負担
「エアコンごときで大げさ」と思われるかもしれませんが、最近の夏の暑さは本当に命に関わります。遠慮せずに伝えてください。
なお、弊社では備え付けエアコンの故障に備えて予備機を複数台あらかじめ購入しており、故障が確認できれば即日または翌日に交換対応しています。これをやっていない管理会社は、正直に言うと準備不足です。「どんな管理会社が入っている物件か」を見極める一つの基準にもなります。
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 連絡先 | 管理会社(または家主)一択。自分で業者を手配すると自己負担になるリスクあり |
| 連絡タイミング | 完全に壊れる前、「なんか変」と思ったらすぐ |
| 伝えること | 症状・いつから・型番・写真の4点 |
| 費用負担 | 原則として家主負担。普通に使って壊れた場合は心配不要 |
| 修理が長引く場合 | 3日超で家賃10%の減額対象。自分で業者に問い合わせて管理会社を動かす |
| 代替対応 | 冷風機・扇風機の手配、真夏はホテル費用の要求も選択肢 |
この記事を書いた人:不動産会社店長
業界歴20年以上の現役店長。現場の第一線で培った知見を活かし、大手不動産メディアにて累計50本以上の専門記事を執筆中。 業界の表も裏も知り尽くした「不動産のプロ」として、不動産会社の不都合な真実を伝えます。
不動産・建築の専門家として、以下の大手メディアにて2026年現在も継続的に執筆・監修を行っています。
- 東急リバブル(LIVABLE タイムズ):法人・投資家向けのCRE戦略や空き家対策記事を20本以上寄稿
- ハウスコム(暮らしエイト):宅建士の視点から賃貸トラブル解決法を30本以上執筆
- CHINTAI(CHINTAI情報局):現場を知る店長としてお悩み解決記事を連載中