
ある日突然、窓の鍵が閉まらなくなった、サッシの開け閉めが重くなった、何もしていないのにガラスにヒビが入っていた——こうしたトラブルで「これは自分で直していいのか」「費用は自分持ちになるのか」と不安になってしまい、管理会社や家主への報告を怠ってしまう人も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、ほとんどのケースはまず管理会社に連絡するのが正解です。自分でDIY修理して悪化させた場合、費用が全額借主負担になってしまいかねません。
賃貸業界20年以上・現役宅建士の立場から、窓・サッシ・クレセント錠のよくあるトラブルと費用負担の判断基準、正しい対処法を解説します。
ぜひ最後までお読みください。
この記事でわかること
- 窓・サッシのトラブルは誰の負担か(費用目安つき)
- クレセント錠が閉まらない・ぐらつく場合の正しい対処
- 窓の開け閉めが重い・ガタつく場合の対処法
- 何もしていないのにガラスにヒビ——「熱割れ」は大家負担
- 網戸の破れは誰の負担か
- 結露放置で借主負担になるケース
- 補助錠・防犯対策を付けたい場合の注意点
窓・サッシのトラブルは誰の負担か——費用目安つきで整理
費用負担の判断基準は他の設備と同じです。「経年劣化・自然故障→管理会社(貸主)負担」「借主の過失→借主負担」が原則です。具体的なトラブルの内容と合わせてみていきましょう。
| トラブルの内容 | 費用負担 | 費用目安 |
|---|---|---|
| クレセント錠の経年劣化(ぐらつき・回らない) | 管理会社負担 | 3,000〜15,000円 |
| クレセント錠をDIYで修理して悪化 | 借主負担 | 10,000〜30,000円 |
| サッシの立て付け不良(経年) | 管理会社負担 | 5,000〜20,000円 |
| 結露を放置して窓枠が腐食 | 借主負担 | 30,000〜100,000円超 |
| 熱割れ・経年によるガラスのひび | 管理会社負担 | 10,000〜50,000円 |
| 借主がぶつけて割ったガラス | 借主負担 | 10,000〜50,000円 |
| 網戸の破れ・穴(入居中の過失) | 借主負担 | 3,000〜10,000円 |
ガラスを割ってしまった場合でも、加入している火災保険(不測かつ突発的な事故)でカバーできるケースがあります。諦める前に保険証券を確認して、管理会社へ相談してみてください。
店長の独り言
「網戸の破れだけは、なぜか消耗品扱いとなり借主負担と契約書で定められていることがほとんどです。そのため、網戸を張り替えるときだけはご自身の負担となる、という点に注意しておいてください。」
クレセント錠が閉まらない・ぐらつく——自分で直すと費用が出なくなる理由
窓についている三日月形の鍵をクレセント錠といいます。長年の使用でぐらつく・回りにくくなる・外れるといったトラブルが起きます。これは経年劣化によるものがほとんどで、管理会社負担で修繕してもらえます。
ここで気をつけていただきたいのが、自分でDIY修理しようとして悪化させるケースです。クレセント錠の取り付けには「裏板(背板)」というパーツがサッシの内側に入っているものがあります。ネジを全部外してしまうと裏板が落下し、サッシを分解しないと取り出せなくなります。この状態になると専門業者でも修理費用が高額になり、自分で触って悪化させた場合は全額借主負担です。
また、築年数が経過した物件では同じクレセント錠の部品が廃番になっているケースがあります。互換品の選定を含め、管理会社に任せるのが確実です。
⚠️ 「滑りが悪いから」と市販の潤滑剤を使う前に
KURE5-56などの浸透性潤滑剤をサッシのレールや鍵部分に吹くと、一時的に動きが良くなりますが、埃や汚れを吸着して固まり、かえって故障を招くことがあります。まずはレール部分の埃や砂を取り除く清掃を行い、それでも改善しなければ管理会社に連絡するのが正しい順序です。
もしも、潤滑剤を使うのであれば、シリコンルブスプレーを使用してください。サッシのレールや戸車についたゴミを掃除してから、シリコンルブスプレーを何度か噴霧すれば、びっくりするくらい動きが改善されます。
KURE5-56はほこりなどを付着させてしまうので、そのときは動きが良くても、いつかはもっと動きが悪くなります。少なくとも、管理実務ではよく使いますし、設備業者を呼んでもシリコンスプレーで対応することもあるので、ぜひ一度お試しください。
店長の独り言
「クレセント錠まわりで『自分で直そうとして悪化した』ケースを現場で何度も目にしてきました。ネジを緩めた瞬間に裏板が落ちて取り出せなくなり、結局サッシごと交換になった事例もあります。
経年劣化なら管理会社が費用を出してくれるのに、触った瞬間に自己負担になる。触る前に連絡する、これだけです。
もちろん、建付の問題で修理に限界があることも事実ですが、少なくともプロが対応してくれるため、悪化することはありません。安心して管理会社に連絡してください。」
窓の開け閉めが重い・ガタつく——サッシの立て付け不良の対処法
窓の開け閉めが重くなった、ガタつくようになったというトラブルも経年劣化によるものが多く、管理会社負担になります。放置すると以下の問題に発展します。
- サッシのレール部分がさらに摩耗して修繕費用が高額になる
- 隙間から雨水が浸入して床・壁が腐食し、退去時に高額請求になる
- きちんと施錠できない状態が続き、防犯上のリスクが高まる
「少し重いけど使えているから」と放置しているうちに悪化した場合、善管注意義務違反として借主負担とみなされる可能性があります。気になり始めた時点で管理会社に連絡し、記録を残しておくことが最大の自衛策です。
何もしていないのにガラスにヒビが——「熱割れ」は管理会社負担
窓ガラスにヒビが入っているのを発見して「自分のせいにされる」と慌てる方がいますが、何もしていないのに入ったヒビは「熱割れ」という自然現象である可能性が高く、管理会社負担になります。
熱割れとは、日光が当たる部分と影になる部分の温度差によってガラスが膨張・収縮を繰り返し、ひびが入る現象です。以下の条件で起きやすいです。
- ワイヤー(網)入りガラスを使っている(熱割れしやすい)
- 窓の近くに大型家具・カーテンを置いて熱がこもっている
- 日当たりの良い南向き・西向きの窓
熱割れの見分け方:ひびが一本線でガラスの端から入っている場合は熱割れの可能性が高いです。衝撃による割れはクモの巣状に広がるのが特徴です。
熱割れだと思っても自己判断で放置せず、必ず写真を撮って管理会社に連絡してください。「自分で割ったのではないか」という心理的なハードルがあっても、確認のために連絡するのは何ら問題ありません。
店長の独り言
「『ヒビが入っていたけど自分のせいかと思って黙っていた』という話を退去立会いで聞くことがあります。熱割れなら当然管理会社が費用を出しますし、その間の防犯リスクも管理会社の責任範囲です。遠慮なく連絡してください。
ワイヤー入りガラスは特に熱割れしやすいので、入居時に割れているものは交換しておいてもらいましょう。
なお、窓ガラスの熱割れは保険対応もほぼ高確率で通る案件ですので、よほどのことがない限り、費用請求されることはないと考えてください。」
網戸の破れ・穴は誰の負担か
網戸のトラブルは意外と多く、退去立会いでも問題になりやすい箇所です。
入居中に破れた・穴が開いた場合は原則として借主負担です。猫などペットによる引っかき傷、子どもが勢いよく触れての穴なども借主負担になります。網戸の張り替えは1枚3,000〜10,000円程度で、専門業者に依頼しなくても市販の修理テープや張り替えキットで対応できる場合があります。ただし自分で張り替える場合は管理会社に事前確認を。
入居直後から破れている・明らかな経年劣化の場合は管理会社負担になります。入居時に網戸の状態を写真で記録しておくことが、こうしたトラブルを防ぐ最大の自衛手段です。入居時チェックのポイントは重要事項説明の確認記事をあわせてご覧ください。
結露を放置すると借主負担になるケース
結露そのものは自然現象であり、借主の責任ではありません。しかし結露を放置して窓枠・サッシ・壁が腐食・カビ化した場合は善管注意義務違反として借主負担になります。特に木製の窓枠は腐食が進むと交換が必要になり、数万円〜十数万円規模の修繕費になることがあります。
結露対策の実践ポイント
①毎朝の結露拭き取り
起床時に窓ガラス・窓枠の結露をタオルや結露取りワイパーで拭き取る習慣をつけてください。これだけでカビのリスクを大幅に下げることが可能です。
②こまめな換気
1日2回程度、5〜10分の換気で室内の湿気を逃がします。冬場は特に意識してください。
③窓用断熱シートの活用
ホームセンターで購入できる断熱シートを貼ることで結露の発生を抑えられます。退去時に跡が残らないタイプを選び、貼る前に管理会社に確認しておくとよいでしょう。
店長の独り言
「退去立会いで結露による窓枠腐食が問題になるケースは少なくありません。『結露は仕方ない』という感覚はわかりますが、放置していた事実は変わりません。毎朝1分の拭き取りで防げるリスクです。ぜひ習慣にしてください。
なお、窓枠のみならず、窓と窓枠に付随するゴムパッキンにカビが発生すると、除去はかなり困難となります。特にアルミサッシはカビキラーとの相性が悪く、サッシ部分に液漏れすることで色褪せが生じたりします。
くれぐれも、窓際のカビ問題には気を付けて生活してください。」
補助錠・防犯対策を付けたい場合の注意点
防犯上の理由で補助錠を追加したい、窓に防犯フィルムを貼りたいという場合は、必ず事前に管理会社に確認してください。無断で取り付けた場合、退去時に撤去費用を請求される可能性があります。
賃貸で使いやすい補助錠は、サッシに挟むだけで固定できる「挟み込みタイプ」です。工具不要・原状回復不要で管理会社の許可を取りやすいです。クレセント錠を防犯性の高いものに交換したい場合は管理会社の判断によります。いずれも書面で許可を確認しておくと退去時に安心です。
連絡の手順——この順番を守る
①まず管理会社に連絡する
「いつから・どのような症状か」を整理してから連絡します。夜間・休日は24時間駆けつけサービスへ連絡してください。契約書や入居書類に番号が記載されていますので、そちらを参考にされてください。
②状況を写真・動画で記録する
クレセント錠のぐらつき・ガラスのひびの形状・サッシの開閉状況などを撮影しておきます。熱割れか過失による割れかの判断材料になります。
③管理会社の指示に従って修理を進める
業者の手配は管理会社が行うのが原則です。自分で業者を呼ぶ場合は、事前に管理会社から指示を受けた上で動いてください。勝手に修理すると費用が出なくなります。
まとめ
窓・サッシ・クレセント錠のトラブルは経年劣化によるものが多く、管理会社負担になるケースがほとんどです。熱割れによるガラスのひびも管理会社負担です。一方、自分でDIY修理して悪化させた場合・結露を放置して腐食させた場合・網戸を入居中に破った場合は借主負担になります。
ガラスをうっかり割ってしまった場合は、借主負担になりますが、加入中の火災保険(不測かつ突発的な事故)でカバーできるケースがあります。諦める前に保険証券を確認してください。
「少し調子が悪いけど使えている」という状態で放置するのが最もリスクが高いです。気になり始めた時点で管理会社に連絡し、記録に残しておくことが退去時のトラブル回避につながります。
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この記事を書いた人:不動産会社店長
業界歴20年以上の現役店長。現場の第一線で培った知見を活かし、大手不動産メディアにて累計50本以上の専門記事を執筆中。 業界の表も裏も知り尽くした「不動産のプロ」として、不動産会社の不都合な真実を伝えます。
不動産・建築の専門家として、以下の大手メディアにて2026年現在も継続的に執筆・監修を行っています。
- 東急リバブル(LIVABLE タイムズ):法人・投資家向けのCRE戦略や空き家対策記事を20本以上寄稿
- ハウスコム(暮らしエイト):宅建士の視点から賃貸トラブル解決法を30本以上執筆
- CHINTAI(CHINTAI情報局):現場を知る店長としてお悩み解決記事を連載中