賃貸のフローリングが浮いている|退去立会い1,000件の店長が教える原因・費用負担・正しい対処法

歩くたびに床がパカパカする。ペコペコとへこむ。部分的に波打っている。そんな状態を「フローリングの浮き」と呼びます。

発見したとき「自分のせいかもしれない」と不安になる方がいますが、浮きは傷とはまったく別物です。原因のほとんどは経年劣化であり、入居者の過失ではないケースがほとんどです。

私は不動産会社の店長として20年以上、1,000件を超える退去立会いを経験してきました。この記事では、フローリングの浮きの原因・修繕方法・費用負担の考え方を現場の視点でお伝えします。


この記事でわかること

  • フローリングの浮きが起きる仕組みと4つの原因
  • 入居者の過失になるケース・ならないケース
  • 修繕方法と費用の目安
  • 発見したときの正しい対処法
  • 退去時の費用負担の考え方

目次

フローリングの「浮き」とは——傷とは根本的に別物

フローリングの浮きとは、床材が部分的に膨張・剥離して浮き上がった状態です。入居者からは「床がパカパカする」「ペコペコしている」「波打っている」というオリジナリティ溢れる表現で連絡を頂戴します。

フローリングの浮きとフローリングの傷(引っかき傷・へこみ)とは発生原因がまったく異なります。傷は床の表面に物理的なダメージが加わることで生じますが、浮きは床材そのものの膨張や接着剤の劣化によって起きます。

ここでは、まず「フローリングの浮き」について理解を深めましょう。

なぜフローリングの浮きが起きるの?スリット構造の話

フローリングの裏側には「スリット」と呼ばれる溝があります。これは木材の伸縮を吸収するための構造です。

木材は湿気を含むと膨張する性質を持っています。何らかの理由でフローリングが膨張すると、このスリットが反り、板の端部が浮き上がってきます。わずかな膨張でも端部では大きな隆起になるため、「少し湿気が多かっただけなのに」というケースでも浮きが発生することがあります。

マンションに多い「コンクリート直貼り工法(床下に下地材を入れず、コンクリートの上に直接フローリングを接着剤で貼る工法)」では、この浮きが特に発生しやすくなります。木材とコンクリートの間に緩衝材がないため、湿気や温度変化の影響を受けやすいからです。


浮きの原因4つ——ほぼ劣化だが過失になるケースもある

①経年劣化(最も多い)

接着剤の経年剥がれや根太(床を支える骨組み)の変形によって、フローリングが浮き上がるケースです。現場での実感として、浮きの原因はほぼこれです。長年の温度変化・湿度変化の繰り返しによって接着剤が少しずつ剥がれていきます。入居者の使い方に関係なく発生します。

②湿気・水分の吸収

キッチン周辺での水はねや、廊下の温度差による結露など、水分をフローリングが吸収することで膨張して浮きが生じます。現場では特にキッチン横や、温度差が生じやすい廊下での浮きが見られます。

水をこぼした場合は床材の色の変化(シミ・変色)として痕跡が残ることが多く、退去立会いの際に確認できます。

なお観葉植物の鉢受けからの水漏れや水槽からの漏水も同様の原因になります。気づかないうちにじわじわと水分が浸透していることがあるため、水を使う・水を置く場所のフローリングには特に注意が必要です。

何度もこのブログではお伝えしていますが、キッチンなどの水回りや、リビングダイニングなどでは、かならず養生をするようにしてください。これによって床が長持ちするほか、掃除もかなり楽になります。水回りでフローリングの浮きが生じていると、やはり水濡れを疑いたくなってしまうもの。あらぬ濡れ衣を着せられないためにも、予防の一環としてぜひご検討ください。


③施工不良

入居者にとって最もやりきれない原因です。マンションの施工時にコンクリートの乾燥が不十分なまま直貼りフローリングを施工した場合、後からコンクリートの水分をフローリングが吸収して波打ちが発生することがあります。また、フローリングを詰めすぎて貼った場合も、逃げ場がなくなり浮き上がることがあります。

入居者が水をこぼした覚えがないのに浮きが発生している場合は、施工不良の可能性があります。この場合は明確に貸主負担です。

④重量物の設置(レアケース)

大型水槽・重量のある機材など、通常の家具を超えた重量物を床に置き続けることで下地が変形し、浮きにつながるケースがあります。頻度としては少ないですが、退去立会いで確認することがあります。


修繕方法と費用の目安

浮きの修繕は、状態によって対応が異なります。張り替えが必要になるケースは少なく、部分的な補修で対応できることがほとんどです。

1枚(単板)だけ浮いているケース

弾性の接着剤を横から流し込み、突っ張り棒などで圧着する方法が取られます。費用は2〜3万円・作業時間は2時間程度が目安です。

数か所に波打ちが出ているケース

フローリングのスリット部分をカット(スリット加工)して膨張を緩和し、残った浮きグセに接着剤を注入して圧着して浮きを解消します。費用は5万円以下・作業時間は半日程度が目安になるでしょう。

広範囲に波打っているケース

複数エリアをカット調整した上で、再発防止のために廊下とリビングの境目に見切り材を設置するケースもあります。作業はおおむね1日かかり、費用は10万円前後になることもあります。

放置すると費用は増えるか

作業内容そのものは大きく変わらないため、費用が劇的に上がるわけではありません。ただし、放置すると浮きの範囲が広がることがあります。また1枚浮きの状態が続くと、歩いたときに足を引っかけて怪我をするリスクも否定できません。早めに管理会社へ連絡することをおすすめします。

なお、フロアタイルを上から貼って浮きを隠す方法がありますが、根本的な解決にはなりません。管理会社に無断で行うことも賃貸借契約上認められていませんので、やめておいたほうがよいでしょう。

修繕費用は貸主負担か入居者負担かによって、誰が業者に依頼するかが変わります。費用負担の判断が出る前に自己判断で業者を呼んで支払ってしまうと、後から管理会社に請求できなくなるリスクがあります。


発見したらすぐ管理会社へ——自己補修は絶対にNG

浮きを発見したとき、絶対にやってはいけないことが一つあります。それは自分で補修しようとすることです。

市販の補修キットや接着剤を使って自分で直そうとした場合、仕上がりが悪くなるだけでなく、「補修の失敗」が過失とみなされるリスクがあります。浮きの原因が劣化であれば本来貸主負担になるはずが、自己補修によって「入居者が何か手を加えた」という状況を作ってしまうと判断が複雑になります。

発見したらそのままの状態で、すみやかに管理会社へ連絡してください。連絡は早ければ早いほどよいです。

写真の撮り方

連絡の際は写真を添付すると管理会社が状況を把握しやすくなります。フローリングに横から光を当てて撮影すると、凹みや歪みが映りやすくなります。真上から撮るより斜めから光を当てた方が浮きの状態が鮮明に記録できます。

入居時から浮きがある場合

入居直後にすでに浮きがある場合は、入居当日に管理会社へ連絡してください。連絡の記録が残ることで「入居前からある状態」を証明できます。入居時の確認として写真を撮っておくことも有効です。

設備・内装の不具合全般に共通する連絡の流れはこちらで解説しています。 → 賃貸で設備が故障したらどこに連絡する?


フローリング浮きの退去時の費用負担——ほぼ貸主負担が原則

退去立会いでフローリングの浮きが見つかった場合、入居者に状況を確認することはしますが、実態としてほぼ劣化として処理します。接着剤の経年劣化や直貼り工法の特性による浮きは、入居者がどれだけ丁寧に生活していても避けられない変化であり、貸主が費用を負担するのが原則です。

入居者負担になりうるのは以下のケースです。

水をこぼして放置した痕跡がある場合は、床材の変色・シミとして退去立会いで確認できます。色の変化が明らかな場合は過失として判断されることがあります。

重量物の設置による下地変形は退去立会いで確認します。ただし通常の家具の設置は通常損耗の範囲であり、よほどの重量物を設置していたなどの特別な理由がない限りは、原則として貸主負担です。ただ、重いものを設置するときは管理会社へ連絡相談の上設置を行い、必要に応じて床の上にマットを敷くなどの処置をしておいてください。

耐用年数と費用負担の関係

浮きへの対応が「部分補修」で済む場合、耐用年数の適用はありません。部分補修は前後でフローリング全体の価値が変わらないため、補修費用の全額が対象になります(ただし貸主負担の案件であれば入居者への請求はありません)。

耐用年数が適用されるのは全面張り替えになる場合です。浮きの修繕が全面張り替えに至るケースは少ないため、実務上この論点が浮きで問題になることはほぼありません。

耐用年数の詳細はこちらで解説しています。 → 賃貸退去の耐用年数一覧と減価償却の計算方法

店長の独り言

「フローリングの浮きで退去者が費用を払うケースは、現場ではかなり少ないです。水をこぼした痕跡が明確に残っていれば別ですが、それ以外は劣化処理が現実的な対応です。

入居者の方には『自分のせいかも』と不安になって自分で直そうとする方がいますが、それが一番まずい、うん、非常にまずい。

そのままにしておいて管理会社に連絡するのが、結果的に一番損しない対処法です。」


まとめ:浮きは傷と違う——発見したらそのまま管理会社へ

フローリングの浮きの原因はほぼ経年劣化です。マンションの直貼り工法では特に発生しやすく、施工不良が原因のケースもあります。傷と異なり、入居者の過失によるものは少数です。

修繕は張り替えではなく接着剤注入・スリットカットで対応できるケースがほとんどです。費用は状態によって2〜10万円の幅があります。放置しても費用が大きく上がるわけではありませんが、範囲が広がることや怪我のリスクがあるため早めの連絡が賢明です。

発見したら自分で触らず、写真を撮って管理会社へ連絡する。これが最善の対処法です。

浮きの状態を放置していて退去時に「知っていたのに連絡しなかった」とみなされると、状況が複雑になることがあります。早めに連絡して記録を残しておくことが、退去時のトラブルを防ぐ最大の対策です。

フローリングに関する関連記事はこちらです。 → 賃貸のフローリングに傷をつけてしまったら賃貸のフローリングがきしむのは入居者のせい?賃貸退去の耐用年数一覧と減価償却の計算方法

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この記事を書いた人:不動産会社店長

業界歴20年以上の現役店長。現場の第一線で培った知見を活かし、大手不動産メディアにて累計50本以上の専門記事を執筆中。 業界の表も裏も知り尽くした「不動産のプロ」として、不動産会社の不都合な真実を伝えます。

不動産・建築の専門家として、以下の大手メディアにて2026年現在も継続的に執筆・監修を行っています。

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