
「田舎の実家を相続したが、売れるかどうかわからない」「不動産会社に相談したら難しいと言われた」——筑後市・柳川市・みやま市・広川町・八女市エリアでも、こういった相談は年々増えています。
業界歴20年・宅建士として、このエリアの再建築不可物件を利回り20%超で成約させた経験を持つ現役店長が、田舎の家・土地の売却について現場の本音をお伝えします。「売れない」と「売りにくい」は別の話です。問題の本質と突破口を正しく理解すれば、動き出せる物件は思っているより多くあります。
田舎の家・土地・実家が売れない本当の理由|福岡県南部エリア特有の事情
田舎の不動産が売りにくい理由として、需要の少なさや建物の老朽化はよく言われます。ただそれは全国共通の話で、筑後・柳川・みやま・八女・広川エリアには、このエリアならではの事情があります。
市街化調整区域の多さ(新たな建築・建て替えができない)
このエリアで売却依頼を受けて最初に確認するのが、市街化調整区域かどうかです。市街化調整区域は原則として新たな建築ができないため、買い手の選択肢が大きく限られます。実務上は、隣接する農家への売却くらいしか現実的な選択肢がなく、一般の方への売却はほぼ難しいと考えてください。
農地(田・畑)の多さ(農地法による売買の制限)
農地の売買は農地法の規制があり、農家や農業法人でなければ原則として購入できません。農地転用の手続きを経なければ宅地として売却もできず、手続きには時間もコストもかかります。市街化調整区域と農地転用は別の問題ですが、このエリアでは両方が重なっているケースも少なくありません。
柳川に多い「字図と現況の不一致」問題
柳川エリアでは、法務局に登録されている字図(地図)と実際の土地の形や境界が合致していないケースが珍しくありません。古くから農地として使われてきた経緯で、地割りが変わっても登記が追いついていないのです。
字図と現況が違うと、境界確定の作業が複雑になります。隣地所有者との確認が必要になり、場合によっては測量費用も発生します。「この土地、どこからどこまでが自分のものか」がはっきりしないまま売却活動を進めることはできません。
店長の独り言
「不動産売買実務において、すべての売買取引で確定測量を実施する必要があるわけではありません。登記をもとにした面積を信用して取引をする『公簿取引』をすることがあります。
これは個人的な意見ですが、東京の一等地で確定測量をしても、柳川市有明町で確定測量をしても、費用は変わりません。ただ、土地の値段には雲泥の差があるという悲しい現実があるのですが。」
井戸水・上水引き込みに費用がかかる問題
このエリアでは井戸を水源としている物件が多く存在します。上水道に接続されていない物件は、買い手が購入後に上水を引き込む必要があります。この引き込み費用が想定以上にかかるケースが多く、買い手の購入意欲を削ぐ要因になります。
さらに厄介なのが、引き込みのルートです。隣地を経由して上水を引いている物件では、隣地所有者との関係次第で将来的なリスクが生じます。また、別ルートで引き込もうとすると国道を横断しなければならないケースもあり、その場合は費用が現実的ではない水準になります。上水の問題は、発覚してから解決策がほぼない、という意味で深刻です。
浄化槽がなく生活排水を直接放流している物件
柳川エリアには、浄化槽が設置されておらず、生活排水を川に直接流している物件が今でも存在します。購入後に浄化槽の設置が必要になるため、買い手にとってはコスト面の懸念材料になります。一般の買主にご説明すると、何それ?みたいな感じで、ちょっと嫌がられるイメージですね。
店長の独り言
「なお、ほとんどの自治体において、浄化槽の設置には補助金が設定されています。そのため、本当に莫大な金額がかかるかと言われると、実際はそんなことはありません。」
田舎の物件の突破口——現役店長が実際に使う出口
売りにくい物件だからといって、手放せないわけではありません。私が実際によく使う出口を整理します。
賃貸物件化して投資家に売却する
私が最も得意とするのがこのパターンです。買い手が見つからない物件でも、賃貸物件として入居者をつけた状態(オーナーチェンジ)にしてから投資家に売却するという方法です。
エンドユーザー(実際に住む人)向けには売れなくても、利回りが出れば投資家には売れます。このエリアでも利回りを重視した投資家の需要は確実に存在しています。
更地化・買主解体で流通させる
更地にすることで買い手の選択肢が広がります。一度は必ずオーナーに提案しますが、解体費用が高額になるケースでは断られることも多いです。
そのような場合、「買主解体」という形もあります。建物付きのまま売り出し、解体費用分を価格に反映させた上でアパート業者などに卸す方法です。金額は叩かれますが、手間をかけずに手放せるという点でオーナーに選ばれることがあります。
売却ではなく賃貸・駐車場として活用する
「売れない」という発想を一度外してみることも有効です。固定資産税を払い続けながら売れずに困っているオーナーに、私が最初に確認するのは「お金の問題ですか、それとも手間の問題ですか」という点です。
手間の問題であれば、管理会社に任せることで解決できる場合があります。お金の問題であれば、賃貸として貸し出すか、駐車場として活用することで固定資産税分をカバーできないか検討します。郊外でも意外と決まるケースはあります。売却一択で考えず、まず活用できないかを検討することが、結果的に最善の出口につながることも多いです。
「売る前にリフォームすべきか」という質問への答え
「古い家だから、せめてリフォームしてから売りたい」と相談を受けることがあります。私の答えは明確で、すべきではありません。
理由はふたつあります。
ひとつ目は、築古物件のリフォームは買い手の楽しみであり、見せ場だからです。田舎の古い家を探している買い手の多くは、自分好みにリノベーションすることを前提にしています。売主側が先にリフォームしてしまうと、その選択肢を奪うことになります。費用をかけてリフォームしても売却価格への転嫁が難しく、結果として売主が損をするケースがほとんどです。
ふたつ目は、契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)のリスクです。売主が施工したリフォームに欠陥や不具合があった場合、買い手から契約不適合責任を問われる可能性があります。リフォームの仕上がりや素材の選択に対するクレームが売却後の紛争に発展するリスクがあります。現状のまま「現況有姿」で引き渡し、買い手に判断とリスクを委ねることが、売主にとって最もシンプルで安全な方法です。
筑後・柳川エリアで売れる・買い手がつきやすい田舎の家・土地の条件
筑後・柳川・みやま・広川・八女エリアでの経験から、買い手がつきやすい物件とつきにくい物件の傾向をお伝えします。
買い手がつきやすい条件
このエリアで最も重要なのは、駅距離よりも土地の広さと駐車スペースです。
駐車場が3〜4台確保できること、これはほぼマストの条件です。家族が複数台の車を持つのが当たり前のエリアなので、駐車スペースが足りない物件は敬遠されます。
戸建て用地であれば300㎡(約90坪)以上は欲しいところです。前面道路の幅員も重要で、幅員が狭いと建築基準法上の制限が生じる場合もありますし、日常の使い勝手も悪くなります。道路が狭い物件は客付きが明確に悪くなります。
売却が難しい条件
市街化調整区域・農地に加え、浄化槽なし物件・上水引き込みに難がある物件は厳しいです。字図と現況が大きく乖離していて境界確定の見通しが立たない物件も、売却活動を始めにくいです。
建物の状態よりも、法的・インフラ的な問題の方が売却の障壁として大きいというのが現場の実感です。
結局、どうすればいいのか|相談先の選び方
田舎の物件を手放したいと思ったとき、どこに相談するかで結果が大きく変わります。
地元の不動産会社への相談がまず基本です。エリアの相場観・法的制限・インフラ状況を熟知しているからです。ただし、扱いが難しい物件は断られる場合もあります。断られた理由を聞いて、次の手を考えましょう。
買取業者への相談は、仲介では動きにくい物件に有効です。価格は仲介より下がりますが、スピードと確実性があります。ただし、いきなり買取業者に飛び込むより、地元の不動産会社から買取業者を紹介してもらう方が、説明の手間が省けて査定額も有利になる傾向があります。
訳あり物件・特殊物件を専門に扱う業者への相談も選択肢のひとつです。市街化調整区域・再建築不可・農地など、通常の仲介会社では扱いにくい物件を専門に取り扱うケースがあります。
当サイトへのご相談は、1社にじっくり任せたい方も、複数社を比較したい方も、どちらにも対応できます。売主様が主導権を持って進められるよう、状況に応じた選択肢をご提示します。宅建士として法令の範囲内でお答えしますので、お気軽にお問い合わせください。
【店長の独り言】
「『田舎の家だから売れない』と最初から諦めている所有者の方は多いですが、実際に問題の中身を整理してみると、意外と動ける案件は少なくありません。市街化調整区域でも農地でも、出口の選択肢は一つではない。まず「お金の問題か手間の問題か」を整理して、そこから一緒に考えるのがよいでしょう。諦める前に一度相談してください。」
不動産売却を断られた方や、一括査定で連絡がこなかった方は以下の記事もあわせてどうぞ。
不動産売却を断られた・連絡がこない・買い取ってくれない理由とは?断る側の本音と次の一手を現役店長が解説
【売却事例】柳川市吉原・再建築不可の一戸建てが利回り20%超・80万円で成約
この記事を書いた人:不動産会社店長
業界歴20年以上の現役店長。現場の第一線で培った知見を活かし、大手不動産メディアにて累計100本以上の専門記事を執筆中。 業界の表も裏も知り尽くした「不動産のプロ」として、不動産会社の不都合な真実を伝えます。
不動産・建築の専門家として、以下の大手メディアにて2026年現在も継続的に執筆・監修を行っています。
- 東急リバブル(LIVABLE タイムズ):法人・投資家向けのCRE戦略や空き家対策記事を20本以上寄稿
- ハウスコム(暮らしエイト):宅建士の視点から賃貸トラブル解決法を30本以上執筆
- CHINTAI(CHINTAI情報局):現場を知る店長としてお悩み解決記事を連載中
「ネットの情報だけでは不安…」「自分の初期費用や退去費用の見積もりが妥当か見てほしい」という個人のお客様から、大手メディア様・不動産業者様からの記事監修や執筆、お仕事のご依頼まで、幅広くお受けしております。
相談のジャンル(個人・法人)に合わせて、下記よりお気軽にご相談ください。