
ある日の夜、天井からポタポタと水が落ちてきた。壁にじわじわとシミが広がっている。そんな経験をしたとき、まず頭をよぎるのは「これって自分で直すもの?お金はどうなるの?」という疑問ではないでしょうか。
先にお伝えしておくと、雨漏りの修繕費用は原則として貸主(管理会社・家主)の負担です。ただ、「天井から水が落ちてきた」という状況が、実は雨漏りではないケースもかなりあります。また、ベランダの掃除を怠っていた場合など、借主側の負担になるパターンも存在します。
管理実務20年以上・現役宅建士として実際の現場を見てきた立場から、雨漏りのリアルな対処法をお伝えします。
この記事でわかること
- 「雨漏り」と「上階からの水漏れ」を見分ける方法
- 発見したらすぐやること・絶対にやってはいけないこと
- 費用負担の境界線(貸主か借主か)
- 管理会社が動かないときの正しい動き方
- 家賃減額請求の進め方
「雨漏り」か「上の部屋からの水漏れ」か——まずここを見極める
天井が濡れているのを見つけたとき、最初に確認してほしいのが「どの場所から水が漏れているか」です。水が漏れてきている場所から、ある程度原因を絞り込むことができます。
窓のサッシや窓の上部が濡れている、壁の上のほうから染み出している——これは雨漏りのサインである可能性が高いです。屋根や外壁のひびやコーキングのひび割れ部分から雨水が浸入した場合、サッシや壁に沿って流れてくることが多いからです。
一方、廊下の照明器具の周辺・洗面台の真上・キッチンの真上の天井が濡れているときは、上の部屋からの水漏れも疑ってみてください。照明の取り付け部分は天井に開口があるため、上の階で水が漏れると、その開口部分に水が集まってきます。水回りの真上で水が落ちてきた場合は、上階の水漏れが原因のひとつとして考えられます。
また、雨が降っていない日に天井が濡れていた場合も、上階からの水漏れを疑うのが自然な判断です。ただし、バルコニーに蛇口が設置されている物件では、その配管からの水漏れが晴れた日に発生するケースもごくまれにあります。「雨が降っていないから上階の問題」とも断定しきれない場合があることを頭に入れておいてください。
いずれにせよ、原因の特定は管理会社や業者が行うものです。「サッシ周辺が濡れている」「晴れた日に水が落ちてきた」といった情報を具体的に伝えることが、スムーズな対応につながります。
店長の独り言
「水漏れの基本は、水があるところから漏れてくる、ということです。上の部屋のキッチンや洗面台・浴室の真下で天井が濡れているなら、上の部屋が原因である可能性は高いです。ただ、バルコニーに給水設備がある物件では例外もあります。入居者側で断定するより、状況を記録して管理会社に伝えるほうが確実です。
なお、上の入居者に直接声をかけるのは避けておいたほうが良いでしょう。管理会社を通して確認してもらうのが賢明です。」
発見したらすぐやること
写真・動画で記録を残す
発見した瞬間の状態を記録してください。天井のシミ・水が落ちている場所・壁の濡れ具合——アップの写真だけでなく、部屋全体の位置関係がわかる引きの写真も必ず撮っておきましょう。スマートフォンのカメラで撮影すれば日時が自動で記録されます。
また、雨漏りによって私物が濡れてしまったときなどは、その状況も撮影しておきましょう。後で管理会社への説明や、保険申請の証拠として使えます。
被害が広がらないよう応急処置をする
水が落ちてくる場所にバケツを置く、家具や家電をビニールシートで保護する——こういった応急処置を先にしておきましょう。天井が膨らんでいる場合は水が溜まっているサインで、そのまま放置すると天井が落下することがあります。膨らんでいる部分の真下には立ち入らないようにしてください。
管理会社に連絡する——電話+文字で残す
電話で状況を伝えたあと、メールやLINEなど文字として記録に残る手段でも連絡しておくことをおすすめします。「〇月〇日〇時頃から、寝室の天井から水が落ちています。写真を添付します」という内容で十分です。記録があると「言った・言わない」の水かけ論になりません。
店長の独り言
「漏水はライブ感が重要です。現場が濡れているそのときに確認しないと、原因を特定するのがとても難しくなります。報告を受けた管理会社は、すぐに現場に駆けつけるのが基本の対応です。
軽微な場合に限り、次に雨が降ったときにまた連絡をいただいて確認する、という流れになることもありますが、それはあくまで状況確認のためです。
なお、雨漏りや上階からの漏水によって私物が濡れてしまったときは、クリーニング費用や賠償費用は保険申請することが可能です。くれぐれも、濡れた私物の撮影も忘れないようにしておいてください。」
費用負担の判断基準
雨漏りの修繕は、原則として貸主負担です。民法第606条に「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」と定められているためです。ただし、以下の場合は借主負担になることがあるので、チェックしておきましょう。
| 原因 | 費用負担 |
|---|---|
| 屋根・外壁・サッシの経年劣化や自然損耗によるもの | 貸主負担 |
| 施工不良・構造上の問題によるもの | 貸主負担 |
| 上階入居者の水漏れによるもの | 上階入居者(または貸主) |
| ベランダの排水口を放置して詰まらせた | 借主負担 |
| 雨漏りを知りながら放置して悪化させた | 借主負担(悪化分) |
ベランダの排水口詰まりは借主の責任になる
落ち葉やゴミが排水口に溜まり、ベランダがプール状態になって室内に逆流してきた。これは現場でよくあるパターンです。ベランダの清掃は借主の日常管理の範囲であり、排水口の詰まりを放置した結果としての浸水は借主負担になります。
月に一度、排水口のゴミを取り除くだけで防げるトラブルなので、雨が多い季節の前にはチェックしておく習慣をつけておくといいでしょう。
また、戸建ての2階にあるベランダでは、このような事態に備えてオーバーフロー用の排水口が設置されていることもあります。ついつい掃除をさぼってしまう人や、長期にわたって不在が続く可能性のある人は、このような点もお部屋探しのときにチェックしておくとよいでしょう。
気づいていたのに放置すると借主の負担が増える
天井のシミを「そのうち直るだろう」と放置していたら、カビが広がって壁材が腐食してしまった。こういう場合、シミ自体は貸主負担でも、放置による悪化分は善管注意義務違反として借主負担になることがあります。
気になったらすぐ管理会社に連絡する、それだけで余計な出費を防ぐことができますので、くれぐれもめんどくさがらずに連絡するようにしてください。
管理会社が動かないとき——現場の本音と対処法
連絡しても修理が来ない、管理会社が対応してくれない、というあまり経験したくないケースが稀に発生します。このケースでは、いくつかの理由が考えられます。
ひとつは、管理会社の対応が単純に遅いパターンです。漏水は現場をその場で確認するのが原則です。報告を受けてすぐ動かない管理会社は、正直言って管理会社の業務品質に由々しき問題があります。
もうひとつは、管理会社は動こうとしているのに家主がお金を出したがらない・工事を嫌がっているパターンです。こういうケースは意外と多く、管理会社の担当者自身も板挟みになっていることがあります。「実際どういう状況ですか?」とストレートに聞いてみると、状況が見えてくることがあります。
ここで大切なのが、管理会社を「敵」ではなく「味方」として動かす意識を持つことです。担当者は家主に修繕を促す立場でもあります。記録をきちんと持って、丁寧に相談することで、担当者も動きやすくなります。
それでも動かないなら家賃減額請求へ
2020年の民法改正により、賃貸物件の一部が使用できなくなった場合、その割合に応じて家賃が当然に減額されることが明文化されました(民法611条)。雨漏りで生活に支障が続いているなら、家賃減額を請求する権利があります。
- 連絡の日時・内容・管理会社の反応を時系列でメモしておく
- 「修繕対応がなければ家賃減額を請求します」と書面で伝える
- それでも動かない場合は消費生活センター(電話番号:188)や宅建業協会に相談する
いきなり強硬な手段に出るより、まず担当者と率直に話し合うのが現実的です。管理会社を味方につけながら、必要に応じて段階的に動く、それが最もスピーディな解決につながります。
店長の独り言
「修理に来てくれない管理会社は正直なところ『ダサい』と思います。ただ、原因が家主側にある場合、担当者も板挟みになっていることがあります。『どうなっているんですか?』と正直に聞いてみてください。
丁寧に相談すれば、担当者が動きやすくなることはよくあります。なぜなら、担当者も言い訳をしたいはずですし、愚痴もこぼしたいからです。さらに言えば、担当者も家主からのゴーサインがなければ動くことができないので、進捗がなければ入居者へ連絡しづらい、という構造心理があるからです。
それでも動かないなら、担当者を味方につけたうえで、家賃減額請求を粛々と進めるのがよいでしょう。」
雨漏りで家財が濡れた——損害はどうなる?
建物の劣化が原因で貸主の修繕義務が認められる場合、家具や家電の損害も貸主に請求できる可能性があります。ただし交渉に時間がかかることも多いため、加入している火災保険(家財保険)の補償内容をあわせて確認しておくといいでしょう。保険で対応しながら並行して貸主との交渉を進める、という流れが現実的です。
家具や家電の申請には、被害状況の写真のほか、高額な商品においては購入当時の金額がわかるものの提出を求められることがあります。クレジットカードの購入履歴などでも対応できますので、高額な家具家電があるときは、領収書などをとっておくとよいでしょう。
店長の独り言
「雨漏りは新しい物件でも発生することがあります。そのため、いつどの物件で発生するかなど予測することは不可能です。
ただし、雨漏りしそうな物件、を事前に察知することは可能です。
方法は簡単で、内見のときに外壁を手でなぞってみてください。手にチョークの跡のような粉状のものが付着したら危険信号です。チョーキングと呼ばれており、外壁の塗料が劣化している証拠です。
チョーキングが出ているということは、外壁の塗料が効果を喪失しているということですので、雨漏りが起こってもおかしくない、と予想できるわけです。」
まとめ
天井から水が落ちてきたら、まずどこから水が出ているかを確認してください。サッシや窓の上部なら雨漏り、晴れた日に水回りの真上から落ちてきているなら上階の水漏れです。
費用は原則として貸主負担ですが、ベランダの排水口を放置したり、シミを知りながら放置して悪化させた場合は借主負担になります。発見したらすぐ写真を撮って管理会社に連絡する、これに尽きます。
管理会社が動かないときは、担当者を味方として相談しながら記録を積み重ねる。それでも改善しないなら家賃減額請求という手段があります。感情的にならず、粛々と記録を残して動くことが最終的な解決への近道です。
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この記事を書いた人:不動産会社店長
業界歴20年以上の現役店長。現場の第一線で培った知見を活かし、大手不動産メディアにて累計50本以上の専門記事を執筆中。 業界の表も裏も知り尽くした「不動産のプロ」として、不動産会社の不都合な真実を伝えます。
不動産・建築の専門家として、以下の大手メディアにて2026年現在も継続的に執筆・監修を行っています。
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