- 徒歩1分 = 80メートル
- 根拠 :不動産の表示に関する公正競争規約(不動産公正取引協議会)
- 計算方法:分速80m・端数は1分に切り上げ
- 対象 :駅・バス停など、物件から最も近い出口までの直線距離
- 注意点 :信号待ち・坂道・踏切の待ち時間は含まれない
不動産広告における「徒歩1分」は80メートルです。これは法律で決まっています。そして、この数字は正しい。
でも、あなたの体感時間とは一致しません。
その理由を、この記事で全部説明します。
徒歩1分は何メートル?結論と法律の根拠
答え:1分=80メートル、1秒でも超えたら切り上げ

不動産広告に記載される「駅徒歩○分」は、不動産の表示に関する公正競争規約(不動産公正取引協議会が定める業界ルール)によって厳密に決められています。
- 分速80メートルを基準とする
- 80メートルに満たない端数は、1分に切り上げ
- つまり「81メートル」でも「159メートル」でも、広告上はどちらも「2分」
この基準は、健康な女性がハイヒールを履いて歩く速度を参考に設定されたと言われています。分速80メートルは時速4.8キロメートル。ウォーキングとしてはやや速めの、しっかり歩いたペースです。
数字そのものは嘘ではありません。ただし、この数字が「実際の所要時間」を意味するかどうかは、まったく別の話。
店長の独り言
「大手ポータルサイトの解説記事は「分速80mで計算します」と書いて終わり。おそらくお部屋探しの中でもこのような説明を営業担当者から受けたことがある人はたくさんいるでしょう。でも現場で20年やってきた私に言わせれば、この数字を鵜呑みにして後悔した人もたくさん見てきました。ここから先が本当の話です。」
1分=80メートルに含まれていない3つのもの
規約の計算式は正確です。問題は、計算式に含まれていないことを誰も教えてくれないことです。「実際に歩いたらもっとかかった」という声を聴いたことはありませんか?
ここでは、なぜ徒歩〇分の誤差が生じてしまうのか、その理由に迫ります。
含まれていないもの① 信号待ち・踏切
分速80mの計算に、信号待ちの時間は一切含まれません。
駅まで400メートルの物件なら、規約上は「徒歩5分」です。しかし途中に2か所の信号があり、毎回1分待つとすれば実際は「徒歩7分」になります。
特に注意が必要なのが「開かずの踏切」。朝のラッシュ時に最大10分近く待たされる踏切が存在します。広告の徒歩時間にその待ち時間はゼロ秒も含まれていません。
含まれていないもの② 坂道・高低差
平坦な80メートルと、急な上り坂の80メートルは、体感時間がまったく違います。しかし規約の計算式は距離しか見ません。
坂道の多いエリアでは、広告表記の1.5倍から2倍の時間がかかることも珍しくありません。地図だけ見ていると絶対に気づかない落とし穴です。
含まれていないもの③ 計測の起点
規約では、計測の起点は「建物の出入口」とされています。規約上は、「最も近い出口からの距離」で計算すればOKとされています。これ自体はルール通りですが、ここに大きな落とし穴があります。
つまり、「最も近い出口」=「あなたが使う出口」とは限らない、ということです。
例えば、日本が誇る巨大ターミナル駅である、新宿駅で考えてみましょう。
新宿駅は南北に約800メートル、東西に約400メートルにわたる巨大ターミナル駅です。出口の数は一説によれば200以上もあるとされています。南口と北口の端から端まで歩くだけで、それだけで約10分かかります。
駅の構内に入ってから、改札まで歩き、階段を上り下りして、自分の乗る電車が来るホームにたどり着くまでのアディショナルタイムは必ず押さえておきたいポイントです。
また、賃貸物件が大規模なタワーマンションや複合施設などのときはどうでしょうか。建物の出入口に到達するまでに、建物内部や敷地内をかなり歩きます。この時間はカウントされません。
駅から徒歩5分の大型マンションと言われると聞こえは良いです。しかし、エントランスから実際に自分の部屋に帰るまでに、エレベーター待ち含めてさらに5分かかった、という話は珍しくありません。
店長の独り言
「『最も近い出口』=『あなたが使う出口』とは限りません。また、『出口』と『改札』と『ホーム』は別物ということも理解しておく必要があります。」
「自転車で」「車で」と言われたら注意しよう
営業担当者が突然「自転車を使えば駅まで5分ですよ」、地方都市や郊外なら「車で10分くらいです」と提案してくることがあります。おそらくそのシチュエーションは駅からの距離について不満か不安があるときでしょう。
実際の自転車通勤にかかる時間を計算してみましょう。
- 自転車で駅の最寄りの駐輪場まで:5分
- 駐輪場に自転車を停めて、駅改札まで歩く:5分
- 合計:10分以上
しかもこれは順調な日の話です。
雨の日は自転車に乗ることはできません。タクシーを呼ぶか、傘を差して徒歩で行くか。
また、大きな荷物がある日も自転車は向かないでしょう。
月々の駐輪場代(都内では月3,000円が相場)も、当初の家賃比較には含まれていないコストです。
そのほか、車移動についても注意が必要です。マンションの駐車場ではスムーズに入出庫できますか?立体駐車場のときは、出庫までに数分待つことも珍しくありません。また、広大な敷地のある大型マンションであれば、自分の駐車区画に着くまでに数分歩くこともあるでしょう。
店長の独り言
「20年やってきて確信しているのは、「自転車なら〜」「車なら~」という言葉が出てきたとき、それはセールストークではなく、物件の正直な評価だということ。お客様が気に入った物件であれば、その言葉はそもそも出てきません。」
損をしない内見術:あえて「片道10分」を歩く勇気
まず、内見の「標準的な流れ」を知ってください
不動産の内見は、ほとんどの場合こういう流れで設計されています。
店舗集合 → 担当者の車で物件へ → 店舗に戻ってクロージング
つまり最初から「歩く」という選択肢が、スケジュールの中に存在しないんです。店舗に戻ることがセットになっているため、車を使うのは「業界の当たり前」として完全に定着しています。
お客様もそれに慣れてしまっているので、疑問を持たないまま内見が終わる。これが現状です。
「車でご案内します」の裏にあるもの
ただし、車移動には担当者側にもう一つの理由があります。
歩いてもらうと、物件の弱点がすべてバレるからです。
車に乗っていると、見えないものがたくさんあります。
- 坂道のきつさ(足腰への負担)
- 踏切や信号の待ち時間
- 周辺の騒音(幹線道路の交通量、工場の音)
- アスファルトの照り返し(夏場の体感温度)、冬の寒さ
- 夜道の人通りの少なさ(安心感)
快適な車内からは、これらが一切伝わりません。担当者もそれをわかっています。
逆に言えば、自社の物件に自信がある担当者ほど「一緒に歩きましょう」と言います。坂があれば「ここがちょっとした坂ですね」と自分から言える担当者は、後でクレームが来ないことを知っているからです。
損をしない内見のテクニック
「店舗集合→車で移動→店舗に戻る」が当たり前の業界ですが、内見のときに、営業担当者にこう伝えてみてください。
「現地集合でお願いできますか。自分で電車に乗って歩いて行ってみます」
やることは単純です。自分で電車に乗って最寄り駅まで行き、そこから実際に自分の足で物件まで歩く。必要であればバスも使う。そして物件の前で担当者と待ち合わせをする。それだけです。
この道のりが、すべてを教えてくれます。信号の数、坂のきつさ、踏切の有無、夜道の雰囲気。担当者の車の中では絶対にわからないことが、歩いた10分間で全部わかります。
そして、悪いことだけではありません。
Googleマップにも載っていない隠れ家的なカフェ、夜遅くまで開いている地元の総菜屋さん、毎朝顔を合わせることになるパン屋さん。不動産情報には「駅徒歩〇分・スーパー〇m・コンビニ〇m」しか書かれませんし、確かにコンビニは便利です。でも、本当に暮らしを豊かにするのは、どこにでもあるお店ではなく、自分のお気に入りのお店ではないでしょうか。
歩いてみて初めて「あ、ここに住んだら毎日ここに寄るな」と思える場所に出会えることがあります。それは、車の窓からは絶対に見えません。
内見が終わった後は、担当者が責任を持って店舗までお送りし、ゆっくりとご要望をお伺いする時間を取ってくれます。それが仲介業者の仕事です。重要なのは、行きを自分の足で体験することだけです。
店長の独り言
「インターネットの記事には『実際に歩いてみましょう』と書いてあります。それは正しい。正しいけれども、わざわざ別の日に電車に乗って、一人で下見に行くのは正直、骨が折れます。実際に、私が接客しているお客様でも、別日に行ってきました、という人はほとんどお会いしたことがありません。
現地待ち合わせにすれば、内見と下見が一度で済みます。私はこの方法を、むしろ積極的にお客様にお勧めしています。一回で全部わかるし、その日に感じたことを、帰りの車の中でそのまま話してもらえる。お客様にとっても、私たちにとっても、一番いい内見の形だと思っています。」
自分の足で歩いて、後悔のないお部屋探しをしよう
この記事で伝えたかったことを整理します。
- 「徒歩1分=80m」は正しい。数字そのものは嘘ではありません。
- ただし信号・坂・踏切・計測起点の関係で、体感時間は広告表記より長くなることがあります。
- 大型ターミナル駅は「出口からの距離」と「ホームへの実際の所要時間」が異なります。
- 「自転車で5分」は、駅距離の長い物件でよく出てくる言葉ですが、雨の日・荷物のある日も想定して判断してください
- 現地待ち合わせにすれば、内見と下見が一度で済みます。行きだけでも自分の足で歩いてみてください。
「徒歩○分」は物件を探すときのフィルターです。その数字を出発点にして、最後は自分の足で確かめてください。歩いた距離が教えてくれることは、どんな情報サイトにも載っていませんし、営業担当者も知らないこともたくさんあるはずです。
ぜひこの記事を参考にして、自分の足でより良い物件にたどり着いてください。
この記事を書いた人:不動産会社店長
業界歴20年以上の現役店長。現場の第一線で培った知見を活かし、大手不動産メディアにて累計50本以上の専門記事を執筆中。 業界の表も裏も知り尽くした「不動産のプロ」として、不動産会社の不都合な真実を伝えます。
不動産・建築の専門家として、以下の大手メディアにて2026年現在も継続的に執筆・監修を行っています。
- 東急リバブル(LIVABLE タイムズ):法人・投資家向けのCRE戦略や空き家対策記事を20本以上寄稿
- ハウスコム(暮らしエイト):宅建士の視点から賃貸トラブル解決法を30本以上執筆
- CHINTAI(CHINTAI情報局):現場を知る店長としてお悩み解決記事を連載中