賃貸退去のキッチン掃除、どこまでやれば請求されない?1,000件超の立会いを経験した現役店長が請求ラインを徹底解説

「賃貸物件を退去するときに、キッチンの掃除をどこまでやれば退去費用を請求されないの?」

この疑問を持って検索している方に、はっきりお伝えしたいことがあります。

退去時のキッチンで本当に怖いのは、換気扇の油汚れよりもキッチンパネルの焦げ付きIHガラストップの破損です。換気扇は頑張って掃除するのに、これらの箇所が盲点になっている方が非常に多いため、意外と退去費用が高額となり、トラブルになるケースが後を絶ちません。

この記事では、管理会社として1,000件以上の退去立会いを経験してきた現場の視点から、「実際に何を請求されるか」「何は請求されないか」を、よくある情報よりも一歩踏み込んで解説します。掃除の方法は他のサイトにお任せして、ここでは判断のラインに絞って話します。

ぜひ最後までお読みいただき、ご自身の退去立会にお役立てください。

なお、賃貸物件の退去に伴い、お風呂のことが気になっている人は、こちらの記事が参考になります。

【関連記事】退去前のお風呂、どこまで掃除すれば費用を取られないか|立会い1,000件の店長が本音で解説


目次

退去のとき、キッチンで「請求される汚れ」「されない汚れ」

まず、退去立会でどのようなときにキッチンで退去費用を請求されるのか、その全体像を把握しておきましょう。

借主負担になりやすい箇所

箇所内容費用目安
換気扇・レンジフード油の固着1〜2万円
キッチンパネル焦げ付き・シール・フック跡1枚2〜3万円
ガスコンロごとく・点火プラグの炭化数万円
IHガラストップ割れ・焦げ付き天板交換5〜10万円
コンロ下収納調味料のこぼれ放置約1万円
シンク・天板もらい錆び(特殊処理が必要な場合)状況による
蛇口・泡沫キャップ紛失・個人設置の浄水器残置〜1万円
排水口目皿の紛失数千円

貸主負担になる箇所

箇所内容
冷蔵庫裏の壁電気焼け(黒ずみ)は経年劣化
シンクの軽微な水垢通常使用の範囲
排水口の軽度の汚れ日常的な使用の範囲
設備の自然な老朽化耐用年数を超えたもの

店長の独り言

「退去立会いで借主が驚くのは、換気扇ではなくキッチンパネルとIH天板の請求額です。換気扇は一生懸命掃除してくれているのに、パネルと天板は手つかずのまま退去される方が多い、という印象です。おそらくこの根底には『キッチンパネルやガラストップ・天板は普通に使っていたから汚れてもしょうがない→払わなくてよい』という誤った解釈が働いているものと考えられます。」


原状回復ガイドラインとキッチンの関係

国土交通省のガイドラインでは、経年劣化や通常の使用によって生じた損耗は貸主負担、故意・過失・善管注意義務違反による損耗は借主負担とされています。

キッチン設備で押さえておくべき耐用年数は、シンクが5年、給排水設備が15年。年数が経つほど借主の負担割合は下がる仕組みです。

ただし現場では、明らかな油汚れ・焦げ付きは耐用年数に関わらず請求対象になるのが実態です。「6年住んだから換気扇の汚れは請求されない」という解釈は現実にはほぼ通用しません。炭化した焦げや固着した油は「通常の使用」の範囲を超えていると判断されるためです。

また、契約書に「クリーニング費用は借主負担」という特約があれば、キレイな状態で退去しても契約書で定められた金額必ず支払わなければいけません。思い込みで損をしないよう、退去前に契約書を確認しておくことをおすすめします。


退去立会で管理会社がチェックしているポイント

次に、実際に退去立会の現場で、管理会社の社員はどのようなポイントをチェックしているのかを解説します。相手の立場を知ることで、より対策も打ちやすくなるというものです。

換気扇・レンジフード

油汚れの程度によって1〜2万円が相場です。フィルターやファン自体に油が固着しているレベルになると、分解・洗浄の専門作業が必要になります。

意外と盲点なのが、換気カバーの内部に食べ物カスが入り込んでいるケースです。自然に落ちてしまったものですが、分解して取り出す作業が発生するため、別途追加料金になることがあります。換気カバーの内側まで掃除できているか、退去前に確認しておきたいポイントです。

なお、換気カバーを外し、それ以上の作業は非常に危険な作業ですので、過度な分解は絶対におやめください。あくまでも、換気カバーを外し、手の届くところのゴミを除去する程度に留めるのがよいでしょう。入居中に換気カバー内のゴミがどうしても気になる人は、費用がかかりますが専門業者へ清掃を依頼してください。

キッチンパネルへの焦げ付き・撤去忘れ

退去立会の現場で意外と多いのが、キッチンパネルです。

焦げ付きについては、コンロ使用時に飛び散った油が熱で焼き付いたものが蓄積するとパネル交換になります。1枚あたり2〜3万円で、複数枚に及ぶと請求は跳ね上がります。くれぐれも、入居中はコンロの火力には注意してください。

また、見落とされやすいのが、撤去忘れです。キッチンパネルやコンロ下の収納扉に、シールが貼りっぱなしだったり、ふきんかけやフック類が貼り付けたままになっているケースがあります。剥がし跡や糊跡、下地へのダメージが補修対象となります。

退去掃除の最後に、キッチン周りをぐるっと一周確認する習慣をつけてください。シールは早く剥がすほどキレイに取れます。

店長の独り言

「キッチンパネルは面積が大きいぶん、複数枚になると請求も大きくなります。焦げ付きがある例はそこまで多くありませんが、くれぐれも注意して利用するようにしてください。また焦げがついてしまったときは、管理会社に早めに相談するようにしましょう。」

ガスコンロの焦げ付き

ごとくや点火プラグに炭化レベルの焦げが付いていると、数万円の請求になることは珍しくありません。

ここで知っておきたいのが、プロパンガスと都市ガスの違いです。プロパンガスの場合、ガス会社が無償で対応してくれるケースがあります。一方、都市ガスの物件では無償対応してくれるケースは著者の経験上少ないように思われます。同じ汚れでも契約しているガスの種別で扱いが変わるため、確認する価値があります。賃貸物件のガスの種類を確認のうえ、一度ガス会社に相談してみてください。

なお、ごとくや点火プラグに関する相談は、入居中に終わらせておきましょう。退去してからではガス会社は対応してくれませんので、くれぐれもお気を付けください。

IHシステムキッチンのガラストップ

キッチン関連でもっとも高額になる箇所です。割れや焦げ付きはほぼ100%過失扱いとなり、天板交換で5〜10万円になります。

「少し焦げただけ」と思っていても、ガラストップは部分補修ができない構造のため、天板を丸ごと交換するしかありません。鍋を落として割ってしまったケースも月に何件もあり、借主が請求額を聞いて絶句する場面を何度も目にしています。

IHの天板は、絶対に自分でやすりがけや研磨剤で削ろうとしないこと。傷が広がり、かえって高額になります。なお、IHの天板を破損させてしまったときは、保険申請が可能なこともあります。この場合も保険会社や管理会社に相談してみてください。

シンク・キッチン天板の「もらい錆び」

あまり知られていない問題ですが、金属製の缶詰や鍋をシンクや天板に置きっぱなしにすると、もらい錆びが発生することがあります。自分のステンレスが錆びたわけでなく、置いたものから錆が移った状態ですが、「置いたのは自分」ということで善管注意義務の問題になります。

軽度であればクリーニング業者に除去してもらえる場合がありますが、特殊な処理が必要だったり、痕が残るときは別料金になります。天板全体を交換するのは現実的ではないため、できる範囲で除去して現状有姿のまま次の入居者に貸す、という対応になるのが一般的です。

次に住む人のためにも、錆びには気をつけて生活するようにしてください。

コンロ下・シンク下の収納内部

意外と見られます。調味料などがこぼれたまま放置されていると、補修シートを貼る形で対応するため約1万円の請求になることがあります。カビが発生していれば善管注意義務違反として扱われます。

蛇口まわり・泡沫キャップ・浄水器

地味ですが請求対象になります。泡沫キャップ(蛇口先端の部品)の紛失は数千〜1万円未満。見落としがちなのが個人で取り付けた浄水器の取り付けっぱなしで、脱着費用が請求対象になります。同様に、排水口の目皿を紛失している場合も数千円の請求になります。

店長の独り言

「キッチンだけで10万円を超える請求になるケースも珍しくありません。IHパネル1枚で5〜10万円、キッチンパネル数枚で6〜9万円、というだけで敷金1ヶ月分が消えます。」


キッチンの掃除は自分で掃除すべきか、プロに頼むべきか

自力で対応できる範囲は、換気扇・コンロ周りの油固着が浅い段階まで。重曹やアルカリ系洗剤を使えば、早めの汚れは十分落とせます。キッチンパネルの表面的な汚れも、研磨剤で傷をつけないよう様子を見ながらであれば対応可能です。

触らない方がいい箇所は、IHガラストップの焦げ・傷。自分で何とかしようとして削ると状況が悪化します。深い焦げがついたキッチンパネルも、無理に削ると下地を傷めるリスクがあるため、そのまま管理会社に相談する方が賢明でしょう。

もらい錆びはクエン酸系の洗剤で軽度なら対応できますが、取り切れない場合は管理会社への事前相談をおすすめします。「気づいていなかった」より「取ろうとしたが取り切れなかった」の方が、心証は大きく変わります。

完璧に仕上げる必要はありません。やった形跡を残すことが大切です。手をつけていない部屋と丁寧に掃除した形跡のある部屋では、管理会社の判断も変わります。


退去立会当日にこれだけは押さえておきたいポイント

まず、ある時で構いませんが入居時の写真を準備しておいてください。 特にコンロ・キッチンパネル・IHトップの状態を記録していた写真があると、「元から傷があった」という主張の根拠になります。写真1枚で数万円変わることがありますので、一度探してみてください。

また、過失に関してサインを求められることがありますが、その場ではサインをしないようにしましょう。 また、サインのみならず、退去立会後に見積もりが提示されても、「内容を確認してから回答します」と言って持ち帰ることができます。その場で押し切られてサインしてしまうと、後から覆すのは難しくなります。

店長の独り言

「立会いで不利になる方の共通点は、入居時の状態を証明できないことです。スマホで撮った写真で十分。入居した日に、キッチン全体と各設備の状態を記録しておく習慣をつけてください。また、どの記事でも書いていますが、納得いっていないものに対してその場でサインをする必要性は全くありません。

もちろん、明らかに汚したり壊したりしているのに、私じゃない、と言ってサインをしないのは褒められたことではありませんが、納得いかないポイントについては話し合いを重ねる意味は十分にあると考えます。」


退去に伴いキッチンでよくある質問

Q. IHを少し焦がしてしまった。必ず天板交換になる?

焦げの程度にもよりますが、ガラストップは部分補修ができない構造のため、交換になるケースが多いです。まず管理会社に相談してみてください。保険申請を手伝ってくれるかもしれません。

Q. プロパンガスならコンロの焦げは請求されない?

ガス会社が無償対応してくれるケースがありますが、会社によって対応は異なります。確約ではないため、事前にガス会社に確認するのが確実です。

Q. もらい錆びは経年劣化にならない?

「放置した」という事実が問題になるため、原則として借主負担の判断になることが多いでしょう。自分では錆を発生させていなくても、善管注意義務の問題として扱われます。

Q. 換気扇を一度も掃除していなかったら確実に請求される?

目視で油の固着が確認できれば、ほぼ請求対象になります。ガイドライン上の耐用年数より、「明らかな手入れ不足」の方が判断の根拠になります。

Q. キッチンだけ業者にクリーニングを依頼できる?

できます。業者によっては水回り1箇所からの対応も可能です。特にコンロ・換気扇・パネル周りが気になる場合は、退去前のキッチン単体クリーニングを検討する価値があります。


まとめ——退去前キッチンチェックリスト

退去立会が決まったら、以下を内容を確認してみてください。

  • IHガラストップに割れ・焦げがないか
  • キッチンパネルの焦げ付きを確認・早めに拭き取る
  • シール・フック類の貼りっぱなしがないか(キッチンパネル・収納扉)
  • ガスコンロのごとく・点火プラグの状態を確認
  • シンク・天板のもらい錆びをチェック
  • 泡沫キャップの有無、個人設置の浄水器を取り外す
  • コンロ下・シンク下の収納内部を拭く
  • 入居時と現状の写真を比較しておく

キッチンは退去費用の中でも請求額が大きくなりやすい場所です。「換気扇だけ掃除しておけば大丈夫」という認識で臨むと、後から予想外の金額に驚くことになります。特にIHパネルとキッチンパネルは、日頃から小まめに掃除・点検しておくことが節約につながります。


この記事を書いた人:不動産会社店長

業界歴20年以上の現役店長。現場の第一線で培った知見を活かし、大手不動産メディアにて累計50本以上の専門記事を執筆中。 業界の表も裏も知り尽くした「不動産のプロ」として、不動産会社の不都合な真実を伝えます。

不動産・建築の専門家として、以下の大手メディアにて2026年現在も継続的に執筆・監修を行っています。

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