賃貸フローリング退去費用の嘘!6年耐用年数の罠と現役店長が教える防護術

この記事は、20年以上の現場経験に基づいた筆者の本音のみで構成しています。ぜひ賃貸物件の退去立会のほか、賃貸物件での生活にお役立てください。


賃貸物件に住んでいると、気になるのは退去のときの費用請求。とりわけ、床を傷つけていると退去費用が高額になるのでは、と気が気ではありません。

まず理解しておくべきこととして、フローリングの傷や汚れは、そのすべてが請求対象になるわけではありません。日焼けや家具の設置跡は原則として借主負担にならず、請求されるのは「清掃を怠った汚れ」と「故意・過失による損傷」に限られます。

ただしフローリングには、他の箇所と違う厄介な特性があります。それは、小さな傷が部屋全体に積み重なると、一室単位の張替え請求につながる場合がある、ということです。そしてその判断は、担当者の目に委ねられている、という実務面も外せないポイントです。

そこで、この記事は、退去立会いを1,000件超経験してきた現役店長として、現場の本音だけで書きます。「どの傷が請求されるか」「修繕費用をどう抑えるか」——知っているだけで、退去の結果は変わります。

この記事を読む前に知っておいてほしいこと

ネット上で「6年住めばフローリングの退去費用は1円になる」という情報がありますが、これは半分正解で、半分間違いです。価値が1円になるのは「床材本体」だけで、張替えの「人件費」は請求される罠があります。カモられないための実務知識を現役店長が暴露します。

また、補修と貼替で費用負担の額や耐用年数の考え方は大きく変わります。


目次

請求される傷・されない傷を症状別に一発で確認

フローリングの退去費用で最初に知りたいのは「自分の傷は請求対象なのか」という一点に尽きます。まずここを症状別に整理します。日焼けや家具跡は原則として請求されません。

問題になるのは以下の症状です。

なお「通常の生活の範囲内か」「清掃を怠った結果か」という判断が、退去費用の分かれ目になります。国土交通省の原状回復ガイドラインでは経年劣化や通常使用による損耗は借主負担にならないと明記されていますが、その線引きは現場担当者の目に委ねられている部分が大きいのが実態です。

傷——キャスター・学習椅子・ハイヒール・えぐれ

キャスター付き家具による傷はほぼ例外なく過失認定されます。オフィスチェアを毎日使用することでフローリングに無数の傷が広がります。気づいたときには手遅れになっていることが多く、現場で最も多いトラブルの原因です。

子ども部屋の学習椅子による傷も同様です。毎日繰り返し動かすため気づかないうちに子ども部屋のフローリング全面に傷が広がり、「子ども部屋だけ一室単位の請求」になるケースは現場では珍しくありません。

ハイヒールの室内履きによる点状の凹みも過失認定されます。ヒール部分が細く尖っているため歩くたびにフローリングへ深い凹みが生じます。本人がまったく気づいていないまま退去立会いで初めて発覚するパターンが意外と多いです。

何かを落としたことによるえぐれは深さ・範囲によってグレーゾーンです。浅い傷であれば通常損耗の範囲として扱われるケースもありますが、深くえぐれた傷は過失として請求対象になります。

店長の独り言

「キャスター付きの椅子を使うなら保護マットは必須です。『知らなかった』は通用しません。住んでいるときから保護マットを敷いておくことがこのトラブルを防ぐ唯一の方法です。

子ども部屋の学習椅子も同様であり、これを知っているかどうかだけで退去費用が数万円変わります。」

汚れ|水こぼし放置・タバコの焦げ

水こぼしを放置した結果として生じた膨れや変色は過失として請求対象になります。キッチンや洗面所との境界付近のフローリングは水がかかりやすい場所です。冷蔵庫周辺や洗面所の出入り口付近は見落とされやすく立会いで指摘されるケースが多い箇所です。

タバコの焦げは明確に過失です。フローリングへの焦げ跡は補修が難しく、範囲によっては一室単位の請求につながります。

浮き・膨れ|水まわり近辺の放置による損傷

水まわり近辺のフローリングの浮き・膨れは、水こぼしの放置が原因であることがほとんどです。この損傷は見た目以上に修繕費用が高くなりやすく、下地まで傷んでいる場合は大規模な工事が必要になることがあります。退去前に水まわり周辺のフローリングを重点的に確認しておくことをおすすめします。

きしみ|経年劣化か過失かの見極め

フローリングのきしみは原則として経年劣化として扱われます。長年の使用によって床材が収縮・膨張を繰り返した結果として生じるきしみは通常損耗の範囲です。ただし水こぼしの放置や重量物の設置による変形が原因のきしみは過失として扱われるケースがあります。

店長の独り言

「きしみが退去者負担か貸主負担かなんて、ふたを開けてみないとわからないじゃないか。そのお気持ち、よくわかります。

ただ、退去立会を1,000回以上経験している私から見れば、わかります。

例えば、水をこぼしてしまったことにより、下地にダメージが与えられ、それによりきしみが生じたときは、フローリングの表面に必ずと言っていいほど染みや剥がれが生じています。

逆に言えば、そうでもないのに請求されたときは、なぜこれが退去者の負担になるのかを具体的に明示させるようにすればよいでしょう。」

請求されない損耗|日焼け・家具跡・自然な摩耗

退去時のフローリングについて、以下のような症状では原則として請求されません。

  • 日焼けによる変色
  • 家具を長期間置いたことによる軽い凹み
  • カーペット跡の変色
  • ワックスの自然な劣化・剥がれ
  • 通常の歩行による自然な摩耗

以下の表で請求される傷・されない傷を一覧で確認してください。

傷・不具合の種類請求理由
家具設置による軽い凹みされない通常損耗
キャスター付き家具による傷されるほぼ例外なく過失認定
子ども部屋の学習椅子による傷されるほぼ例外なく過失認定
引っ越し搬出による傷される(引っ越し会社対応が多い)過失
日焼けによる変色されない経年劣化
カーペット跡の変色されない通常損耗
水こぼし放置による膨れ・変色される過失・清掃怠慢
タバコの焦げされる過失
ペット(猫)の引っかき傷される過失
ハイヒール室内履きによる点状凹みされる過失
ワックスの自然な劣化・剥がれされない経年劣化
入居者施工ワックスの剥離グレー〜されることもある本来不要な剥離作業が発生する場合あり
入居者によるカラーワックス施工される再施工が必要になるケースがほぼ100%
落下物によるえぐれグレー深さ・範囲による
家具の色移り・染みグレー素材・程度による
配線モールの両面テープ接着痕される過失による損耗

配線モールの接着痕は「やった本人が気づいていない」過失の典型

フロアモールで床に配線を固定していると退去時に剥がした後に両面テープの接着痕やモール跡がフローリングに残ります。退去前に部屋を見渡して接着痕が残っていないか必ず確認してください。

ワックス・カラーワックスは管理会社に確認してから

善意でワックスがけをしても施工が甘いと剥離が起き本来不要だった剥離作業の費用が別途発生します。また最近のフローリングやフロアタイルにはノンワックス仕様のものも多くワックスをかけると逆に素材を傷めることがあります。必ず管理会社に確認してください。

店長の独り言

「最近はフローリングのかなり良いものが賃貸住宅で利用されるようになりました。とりわけ、ノンワックスといって、ワックスが不要なタイプのフローリングをよく見かけます。

もちろん、室内で利用するにあたっては傷がつくことが想定されますので、傷や水汚れに対するコーティングはされていますが、それでもやっぱり傷はつきます。

入居中に押さえておきたいポイントとしては、これはワックスをかけていよい素材かどうかを管理会社に確認しておくことです。」


退去費用はいくらかかるか|修繕方法で金額がまったく変わる

請求対象とわかった場合、次に気になるのは金額です。フローリングの退去費用は修繕方法によって大きく変わります。そして修繕方法の選択は損傷の程度だけでなく、耐用年数による減価償却が適用されるかどうかという観点でも重要な分岐点になります。この違いを知っているかどうかが交渉の分かれ目です。

修繕方法は段階がある

損傷の程度修繕方法費用感
軽微な色褪せ・カスレカラーワックス安価
軽微な傷・小傷タッチアップ(専用塗料で色合わせ補修)比較的安価
中程度の傷1㎡単位の部分補修中程度
広範囲・全面上貼り施工(重ね貼りで費用軽減可)全面張替より安価
全面張替剥離→下地処理→施工最高額

タッチアップ・部分補修は減価償却なし|費用全額が入居者負担

軽微な傷に対するタッチアップや1㎡単位の部分補修は、耐用年数による減価償却が適用されません。つまり入居年数に関わらず費用の全額が入居者負担になります。

「6年住んだから費用が下がるはず」という認識は部分補修には当てはまりません。タッチアップで対応できる傷であれば費用は比較的安価ですが、減価償却という概念がそもそも存在しないという点を押さえておいてください。

貼替は減価償却あり|「6年で1円」が適用される条件と落とし穴

上貼り施工・全面張替という貼替が必要になった場合は、耐用年数による減価償却が適用されます。ここで初めて「6年で1円」というルールが登場します。

ただし落とし穴があります。価値が1円に近づくのはあくまでも「フローリング本体」の話です。張替えに要する人件費・廃材処理費・間接経費は耐用年数の対象外であり、入居年数に関わらず請求されます。

整理するとこうなります。入居年数が長いほどフローリング本体への請求額は下がります。しかし人件費や副資材費は別途負担しなければならない可能性があるという点を忘れないでください。

店長の独り言

「『6年住んだから払わなくていい』と主張する入居者の方は毎年必ずいます。その都度、人件費の話をすると納得してもらえますが、退去立会いの場で初めて知るより事前に知っておく方がお互いにとって気持ちがいいです。

なお6年というのはフローリング単体の耐用年数であり、全面張替の場合は建物の構造ごとの耐用年数をベースに計算する点も押さえておいてください。」

費用を左右する「修繕の単位」|1㎡か一室か

フローリングは原則として1㎡単位で修繕されます。数センチの傷でも費用は1㎡分が請求単位になります。さらに小傷が1か所だけなら問題にならなくても部屋全体に点在していると一室単位での張替えが請求根拠になり得ます。

「1箇所しか傷つけていないのに1㎡相当額や、小さい傷なのに一部屋分の請求が来た」というトラブルはこの仕組みを知らないことで起きてしまうのです。

戸建て2階は上貼り施工が現実的な落とし所

戸建て住宅の2階でフローリングを全面張替する場合、床をはぐ工事は建築確認申請が必要になることがあります。これを知らないオーナーや管理会社は少なくありません。

戸建て2階で全面張替の話が出た場合は上貼り施工が現実的な落とし所になりやすく、この知識があるだけで交渉の展開が変わります。

店長の独り言

「管理会社から『2階の床を全面剥がしてやり直す』と言われたら『上貼りでの対応は可能でしょうか』と一言確認してみてください。建築確認申請の費用は30〜50万円かかります。それを知っている入居者に対して、担当者は根拠のない請求を引っ込めてくれる可能性が高くなります。知識は最強の交渉ツールです。」

出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

フローリングのトラブルを防ぐために退去前にできること

請求を減らすために退去前にできることは2つあります。在住中の予防と退去直前の確認です。どちらも知っているだけで数万円の差になることがあります。

退去前日にやるべき最低限チェックリスト

  • 部屋全面を実際に歩いて凹み・傷・膨れを確認する
  • 水まわり周辺(キッチン・洗面所境界)を重点的に確認する
  • 家具・家電の搬出直後に新たな傷がないか確認する(搬出当日が勝負)
  • キャスター跡・色移りの有無を確認する
  • 子ども部屋の学習椅子跡を確認する
  • 配線モールの剥がし跡・両面テープ接着痕がないか確認する
  • 焦げ・えぐれがある場合は火災保険の対象になるか確認する

特に搬出当日は要注意です。家具や家電を動かした後はその場でフローリングの状態を確認する習慣をつけてください。

住んでいるときからできる予防策

キャスター付き家具には保護マットを敷く・ハイヒールの室内履きを避ける・水まわり近辺の水こぼしはすぐに拭く。この3つだけで退去時のフローリングトラブルの大半を防ぐことができます。

ワックス・カラーワックスを使う前には必ず管理会社に確認してください。善意でやったことが請求につながるという理不尽なケースを防ぐためです。


店長の独り言

「賃貸物件にとって床は補修・貼替費用がかなり高額になるポイントであるため、退去立会でも担当者はかなり神経質にチェックしています。

いつもお話していますが、普通に使ってついた傷だから補修する義務はない、という論理は通用しません。綺麗に使う義務が賃借人にはある、ということを改めて認識しておいてください。」

まとめ|フローリングの退去で損しないためにも正しい知識を身に着けよう

フローリングの退去費用は「傷の種類」と「修繕の範囲・方法」で決まります。日焼けや家具跡は請求されませんが、キャスター傷・水こぼし放置・ハイヒール跡は過失として請求対象になります。

修繕方法によって減価償却の適用有無が変わります。タッチアップ・部分補修は減価償却なしで全額負担。貼替は減価償却ありですが人件費は別途請求されます。「6年住んだから払わなくていい」という理解は誤りです。

「全面張替です」と言われたときにタッチアップや上貼り施工という選択肢を知っているかどうかで交渉の結果が変わります。

すでに請求書が届いて金額に納得がいかない場合は退去費用は安くできる|管理会社が嫌がる3つのポイントと交渉術退去費用の請求書チェックポイント完全解説退去費用が高すぎると感じたときに読む記事もあわせてお読みください。



この記事を書いた人:不動産会社店長

業界歴20年以上の現役店長。現場の第一線で培った知見を活かし、大手不動産メディアにて累計50本以上の専門記事を執筆中。 業界の表も裏も知り尽くした「不動産のプロ」として、不動産会社の不都合な真実を伝えます。

不動産・建築の専門家として、以下の大手メディアにて2026年現在も継続的に執筆・監修を行っています。

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