退去時のベランダ・バルコニー費用、払うのは誰?|ほぼ請求されない理由と庭・専用庭が高額になる注意点を退去立会い1,000件超の店長が解説


「退去のとき、ベランダの汚れって請求されますか?」

結論から言うと、ベランダ・バルコニーの汚れは原則として経年劣化・自然損耗として扱われるため、ほぼ請求されません。退去立会いを1,000件超経験してきた現場の感覚でも、ベランダ関連のトラブルは件数が少ない箇所のひとつです。

ただし「ほぼ請求されない」と「絶対請求されない」は別の話です。排水口の詰まり・ベランダ喫煙・残置物の放置——この3点だけは例外として請求対象になり得ます。また戸建ての庭や1階の専用庭は話がまったく別で、残置物や除草の放置が高額になるケースもあります。

この記事では、ベランダ・バルコニーから庭・専用庭まで、退去時の費用負担の判断基準を現場の本音で解説します。


目次

退去時のベランダ・バルコニー、実は請求されることがほぼない——その理由

ベランダ・バルコニーは外に面した場所です。排気ガス・砂ぼこり・雨による汚れは日常的に蓄積しますが、これらはすべて経年劣化・自然損耗として貸主負担が原則となります。

エアコン室外機の設置跡や植木鉢・プランターの跡も同様です。設置していれば跡が残るのは当然のことであり、自然損耗として扱われることがほとんどです。また大型の物置きや自転車をベランダに置いていたとしても、退去時に撤去してくれていれば、それによる軽微な汚れは不問です。

店長の独り言

「ベランダの汚れで退去費用を請求されたという話は、正直あまり聞きません。外に面した場所ですから、汚れるのは当たり前。それを入居者のせいにするのは無理があるからです。ただし『ほぼ請求されない』と『絶対請求されない』は別の話。この後に説明する例外だけはしっかり押さえておきましょう。」


退去時のベランダ・バルコニー、請求される・されない判断基準

損傷・不具合の種類請求根拠
排気ガス・砂ぼこりによる汚れされない経年劣化・自然損耗
雨による床面の汚れ・変色されない自然損耗
エアコン室外機の設置跡されない自然損耗
植木鉢・プランターの跡されない自然損耗
大型物置き・自転車跡(撤去済み・軽微な汚れ)されない軽微な汚れは不問
重量物設置による防水シートの破損される過失・原状回復必要
排水口の詰まり・清掃不足される善管注意義務違反
ベランダ喫煙による汚損・臭いされる過失
残置物の放置される原状回復義務違反
台風による飛来物での破損されないオーナー保険対応
隣戸パーテーションの風による破損されないオーナー保険対応

重量物の設置で防水シートが破損していたら要注意

重量物をベランダに置くこと自体は、重さにもよりますがほぼ問題ありません。問題になるのは、重量物を設置していた結果、ベランダ床面の防水シートが破れていたケースです。この場合は原状回復が必要となり、補修・張替えの費用はそれなりの金額になることもあります。

「撤去してしまえばわからない」と思いがちですが、退去立会いで床面を確認すれば破損はひと目でわかります。重量物を置く際は床面への影響を意識しておく必要があります。

台風・パーテーション破損はオーナーの保険で対応

台風による飛来物でベランダが破損した場合や、隣戸との仕切りであるパーテーションが風でやられた場合は、オーナーの火災保険・建物保険で対応するのが原則です。入居者が費用を負担する必要はありません。ただし破損に気づいた時点で速やかに管理会社へ報告することが重要です。放置して損害が拡大した場合は話が変わる可能性があります。


「ベランダは共用部だから関係ない」は通用しない——管理責任は入居者にある

ベランダ・バルコニーを「共用部だから自分には関係ない」と思っている入居者が少なくありません。これは半分正解で、半分は誤りです。

ベランダ・バルコニーは「専用使用権のある共用部分」です。建物全体の共用部分ではありますが、その使用権と管理責任は入居者にあります。管理責任がある以上、善管注意義務も当然発生します。

またマンションのバルコニーは避難経路でもあります。緊急時に隣の部屋へ避難するための通路として設計されており、大型の物置きや荷物でその通路を塞ぐことは管理規約違反になり得ます。

店長の独り言

「マンションにおいてベランダは緊急時に隣の部屋へ逃げるための経路として設計されています。大型の物置きや荷物でその通路を塞いでしまうのは、いざというときに命取りになるため絶対にやめてください。退去費用の話以前に、避難経路は常に確保する必要があるのです。」


ベランダ喫煙は「室内禁煙」でも請求対象になる

室内では吸わず、ベランダだけで喫煙しているという方が一定数います。室内へのヤニ汚れや臭いの充満を避けるためですが、ベランダへの汚損は防げません。ベランダの床への焦げ付きなどは過失として請求対象になります。

また現場でよくあるパターンが、近隣住民から「洗濯物に臭いがつくのでなんとかしてほしい」というクレームです。管理会社に苦情が入る→調査の結果ベランダ喫煙が発覚→退去時に床の焦げ付きを汚損として請求、という流れもよくある話です。「ベランダは外だから大丈夫」という認識は誤りです。


排水口の詰まりは唯一の「やるべき清掃」

ベランダの中で、入居者が在住中に清掃すべき箇所が排水口です。落ち葉・土・ゴミが詰まったまま放置すると排水不良が起き、大雨の際にはベランダがプール状態になります。さらに悪化すると、雨水が室内へ逆流するケースもあります。

マンションにはオーバーフローを防止する水抜き穴が壁面に設置されている物件もありますが、ほぼないと思った方が無難です。詰まりを放置して損害が発生した場合は善管注意義務違反として請求対象になり得ます。

退去前の清掃で対応できるため費用は発生しないことがほとんどですが、排水口だけは在住中から定期的に確認しておくことをお勧めします。


戸建て・庭つき物件は話が別——残置物と除草が高額になるケース

マンションのベランダとは異なり、戸建ての庭や1階の専用庭は退去時の費用が膨らみやすい場所です。ここでは、その理由と対応策について解説を進めます。

残置物の放置は全額借主負担

庭に物置き・自転車・家具・ゴミなどを残置していた場合、処分費用は全額借主負担です。量によっては数万〜十数万円になることもあります。「後で取りに来る」という約束は通用しません。退去日までに自分で処分・撤去することが原則です。

除草は約定の有無に関わらず借主負担

国土交通省のガイドラインでは、戸建賃貸住宅の庭に生い茂った雑草は、草取りが適切に行われていない場合に善管注意義務違反に該当すると明示されています。契約書に庭の管理義務が書いてあるかどうかに関わらず、除草の放置は借主負担として判断されることがほとんどです。

在住中から定期的に草刈り・除草を行い、退去時に手がかかる状態にしないことが唯一の予防策です。

店長の独り言

「マンションの1階に専用庭つきの物件や一戸建ては、庭があることへの憧れで入居されることが多いです。ただ、実際に住んでみると除草や植栽の剪定が意外と大変で、だんだん放置されていく。退去時に業者を入れることになって初めて費用の高さに気づく、というパターンが少なくありません。庭つき物件を選ぶときは、管理コストも含めて判断するのが良いでしょう。

また、これはレアケースですが、家主から『この木は思い入れがあるからきちんと手入れをしてくれ』とお願いされることがあります。そのときは、もちろんのことながら綺麗に手入れをしなければなりませんし、勝手に伐採するなんてもってのほかです。」


退去前日にやるべきベランダ・庭のチェックリスト

  • [ ] 排水口のゴミ・詰まりを清掃する
  • [ ] 植木鉢・プランター・物置き・自転車をすべて撤去する
  • [ ] ベランダ床面・壁面に残置物がないか確認する
  • [ ] 床面の防水シートに破損・傷がないか確認する
  • [ ] 喫煙していた場合はヤニ汚れ・臭いの程度を確認する
  • [ ] 隣戸とのパーテーションの状態を確認する(破損は管理会社へ報告)
  • [ ] 戸建て・専用庭つき物件は残置物の撤去と除草を完了させる

まとめ|ベランダ・バルコニー・庭の退去で押さえるべき3原則

① ベランダ・バルコニーの汚れはほぼ請求されない——ただし排水口・喫煙・残置物は例外

外に面した場所の汚れは経年劣化として扱われることがほとんどです。在住中に意識すべきは排水口の清掃のみ。ベランダ喫煙と残置物の放置だけは退去前に必ず確認してください。

② 「共用部だから関係ない」は通用しない——善管注意義務と避難経路の確保は入居者の責任

専用使用権のある共用部分である以上、管理責任は入居者にあります。特にマンションのバルコニーは避難経路でもあるため、通行を妨げる荷物の放置は退去費用の問題以前にリスクがあります。

③ 戸建て・専用庭は別物——残置物と除草の放置が高額になる

マンションのベランダとは費用感がまったく異なります。除草はガイドライン上、約定の有無に関わらず借主負担です。庭つき物件を選ぶ際は、在住中の管理コストも含めて検討してください。


ベランダ・バルコニーは退去トラブルが少ない場所ですが、知らないまま放置してしまう落とし穴がいくつかあります。この記事がその落とし穴を避けるための一助になれば幸いです。


この記事を書いた人:不動産会社店長

業界歴20年以上の現役店長。現場の第一線で培った知見を活かし、大手不動産メディアにて累計50本以上の専門記事を執筆中。 業界の表も裏も知り尽くした「不動産のプロ」として、不動産会社の不都合な真実を伝えます。

不動産・建築の専門家として、以下の大手メディアにて2026年現在も継続的に執筆・監修を行っています。

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