
「プロパンガスは高い」という話は聞いたことがあるけれど、実際いくら違うのかよくわからない。気に入った物件がプロパンだったとき、どう判断すればいいのかわからない。なんとなくのネガティブイメージに惑わされて、お部屋探しを進めている人、実はけっこういらっしゃるのではないでしょうか。
結論から言ってしまうと、プロパンガスは都市ガスより確かに高く、東京都の場合、単身世帯で月3,500円以上、4人世帯では月7,000円近い差があります。ただし、「だからプロパン物件は選ぶな」とは一概に言えません。なぜなら、エリアの現実、災害時のリスク、節約でどこまで補えるかを含めて整理すると、そんな金額だけの単純な話でもないからです。
この記事では、プロパンガスと都市ガスの差を数字で示し、プロパン物件で実際にできる節約術まで解説します。
ぜひ最後までお読みください。
まず数字で確認する——プロパン・都市ガス・オール電化の月額比較
「高い」という感覚ではなく、実際の金額で把握しておくことが出発点です。ガス種によって毎月の支出がどれだけ変わるのかを、世帯別・光熱費トータルで整理しました。単純なガス料金だけでなく、電気代を含めた光熱費全体で比べることで、オール電化との比較も可能になります。
ガス料金だけの差(東京都・月額平均)
下記はエネピ(ガス・電気比較サービス)による2025年度版の東京都データです。
(出典:エネピ「都市ガスとプロパンガスの料金比較【2025年度版】」)
| 世帯人数 | 都市ガス | プロパンガス | 差額 |
|---|---|---|---|
| 単身(1人) | 4,001円 | 7,579円 | +3,578円 |
| 2人 | 5,627円 | 9,474円 | +3,847円 |
| 4人 | 8,879円 | 15,765円 | +6,886円 |
4人世帯では年間に換算すると約82,000円の差になります。10年住めば80万円超の差です。ちょっとした海外旅行に行けてしまうお金です。どうやら、プロパンガスが高い、というのは本当のようです。
光熱費トータルで比較する(電気代+ガス代)
オール電化はガス代がゼロですが、その分電気代が上がります。公平に比べるには光熱費全体で見るべきでしょう。
電気代の参考値は総務省「家計調査(2024年)」を使用。オール電化の電気代は関西電力が2021年に公表したデータをもとに、2024年推計値(同1.09倍)で算出しています。
(出典:idemitsuでんき「オール電化の4人家族における電気代」・総務省「家計調査2024年」)
| 世帯 | 都市ガス併用(電気+ガス) | プロパン併用(電気+ガス) | オール電化(電気のみ) |
|---|---|---|---|
| 単身 | 約10,757円 | 約14,335円 | 約10,000円 |
| 4人世帯 | 約21,000円 | 約28,000円 | 約18,000円 |
この比較で見えてくることがあります。まず、単身世帯では都市ガス併用とオール電化の光熱費はほぼ同等です。プロパンは単身でも月3,000〜4,000円高い計算になります。次に、4人世帯ではオール電化がもっとも安く、プロパンとの差は月1万円近くになります。ただし、後述しますが「オール電化なら安心」とも言い切れない理由があります。
ただ、少なくともデータから見ると、光熱費は、オール電化<都市ガス併用<プロパンガス併用、という位置づけであることがわかりました。金額面で見れば、オール電化は強く、プロパンガスはどうやら分が悪そうです。
なぜプロパンは高いのか——構造的な理由
では、なぜプロパンガスは高いのでしょうか。その理由は主に2つあります。
都市ガスは地下に埋設されたガス管を通じて各家庭に供給されます。一度インフラが整えば、あとは管理・維持費だけで済み、配送の人件費が発生しません。また、料金設定に国の規制が入るため、会社による価格差が出にくい構造になっています。
一方、プロパンガスはガスボンベを定期的にトラックで各家庭に届ける必要があります。この配送コストと人件費が料金に上乗せされます。さらに、プロパンガスは「自由料金制」のため、ガス会社が独自に価格を設定できます。会社によって料金に大きな差があり、同じエリアでも倍近く違うケースすらあります。
そして賃貸の場合、入居者はガス会社を選べません。建物のオーナーがガス会社と契約しており、入居者はそれに従うしかないのです。料金が高くても「変えてほしい」と言える相手もいないし、そもそもその権利すらないことが、賃貸プロパン問題の本質です。
プロパン物件は選ぶべきでないのか
料金差だけを見ると「プロパン物件は避けるべき」という結論になりそうですが、現場にいる身としてはそう単純でもありません。いくつかの観点から整理します。
そもそも都市ガスを選べない場所がある
都市ガスはガス管が整備された地域にしか供給されません。郊外や地方では、駅から近くても都市ガスが使えない地域が多く存在します。「プロパンが嫌だから都市ガス物件に限定する」とすると、そもそも選択肢がほとんど消えてしまうエリアもあります。
「プロパン物件は嫌です」とはっきり希望するお客様は確かにいます。ただその場合、自然と「駅近・都市部」に絞られていくことが多く、プロパンが嫌というより都市部に住みたいという希望が根本にあることがほとんどです。地方では都市ガスかどうかを気にする以前に、選べる物件自体が限られているのが現実です。
その観点から言えば、都市ガスはプロパンガスより安いけれども、都心部や駅に近いところにあるので、家賃が高くなる、というトータルコストの点を考える必要がありそうです。
地震後の復旧はプロパンが圧倒的に早い
都市ガスの最大の弱点は、大規模災害時の復旧の遅さです。東日本大震災では、都市ガスの全面復旧まで被災地によっては2ヶ月近くかかりました。インフラが地下に埋まっているため、破損箇所の特定と修復に時間がかかるのです。
プロパンガスはボンベを各家庭に設置する仕組みのため、配管が無事であれば早ければ数時間で復旧できます。「いざというとき頼りになる」という点では、プロパンに分があります。
オール電化は停電が発生した瞬間にすべてのインフラが止まります。マンションでは水を各階に供給しているのも電気ですので、停電が起こると言うことは断水も連鎖的に発生します。
太陽光発電と蓄電池があれば話は変わりますが、賃貸ではそのような設備が付いている物件はまれです。
無償貸与契約は入居者にとってプラスに働くことがある
プロパンガス業界には「無償貸与契約」という商慣習がありました。ガス会社がオーナーに給湯器やコンロなどの設備を無償で提供し、その費用をガス料金に上乗せして回収する仕組みです。「料金が高い理由はこれだ」と言われることが多いですが、設備費用分の上乗せは月数百円程度にすぎず、料金差の主因ではありません。
むしろ入居者にとってのメリットすらあると個人的には考えます。
例えば、給湯器が故障した場合、通常であれば管理会社がオーナーに報告し、見積もりを取り、業者を手配し…という時間のかかるプロセスを経ることになります。無償貸与契約が結ばれている場合、ガス会社が設備を無償対応してくれることがあり、修理が早く完了するケースがあります。
賃貸の給湯器が故障したら——連絡先・費用負担・対応が遅いときの対処法まで、現役店長が全部解説でも給湯器トラブルの流れを詳しく解説していますが、修理が早いというのは入居者にとって確かなメリットです。
店長の独り言
「すぐに壊れたら直すのは家主の仕事だろ?と思うかもしれませんが、家主も人間です。一円でも安くできないか、なんなら支払わずに済む方法はないか、と邪推なことを考える人も中にはいます。
少なくとも、給湯器の交換など10万円以上する修理を二つ返事で快く引き受けてくれる家主さんのほうが稀です。
いずれにしても、見積を提示してからの発注となることが原則ですので、スピード感がある、という点は見えないかもしれませんが、明らかなメリットなのです。」
内見前に外からガス種を見分ける方法
物件の室内に入る前に、外観からガス種を確認できます。この方法を知っておくと、内見の準備段階で「この物件はプロパンか都市ガスか」を自分で判断できます。仲介担当者の説明を待たなくても確認できる、現場で使えるチェック法です。
ガス感知器の位置を見る
室内に設置されているガス感知器の位置で判断できます。感知器が床に近い低い位置(床から30cm以内)にあればプロパンガスです。プロパンガスは空気より重いため、漏れると床に溜まる性質があります。そのため感知器を低い位置に設置することが義務付けられています。
一方、感知器が天井付近にあれば都市ガスです。都市ガスの主成分であるメタンは空気より軽く、漏れると天井付近に溜まるため、感知器は高い位置に設置されます。
建物の外にガス庫があるか確認する
もっと簡単な方法があります。建物の外壁や敷地内に、灰色や白色のボンベを収納した「ガス庫(プロパン庫)」があれば、その建物はプロパンガスです。室内に入る前に外観を一周するだけで確認できます。集合住宅であれば、建物の裏手や駐車場側に設置されていることが多いです。
なお、仲介担当者は物件提案の時点でガス種を説明するのが通常の流れです。確認漏れがあった場合は遠慮なく聞いてください。内見時の確認項目全般については、賃貸の内見チェックリスト|現役店長が教える管理品質の見抜き方と退去費用を防ぐ確認箇所も参考にしてください。
ガスをいちばん使うのはお風呂——節約の順番を間違えない
気に入ったプロパン物件に住むことになった場合、月々のガス代をどこまで節約できるかを考えましょう。ここで大前提として知っておきたいのが、家庭のガス使用量の内訳です。節約の順番を間違えると、努力の割に結果が出ません。
給湯(お風呂)が使用量の約75〜80%を占める
家庭のガス使用量のうち、お風呂などの給湯用途が約75〜80% を占めます。キッチンのコンロが占める割合は約20〜25% にすぎません。
(出典:プロパンガス料金消費者協会「ガス代が月1万円以上かかる家庭の特徴」)
つまり、ガス代を節約したいなら、コンロの使い方を工夫するよりもお風呂の使い方を変える方が圧倒的に効果があります。毎日の料理をどれだけ工夫しても、お風呂まわりを変えなければ大きな節約は期待できません。
賃貸でできる節約術(効果が高い順)
① 節水型シャワーヘッドに交換する【最もコスパが高い】
お風呂のシャワーを流しっぱなしにすることは、ガス代と水道代の両方に直結します。節水型シャワーヘッドに交換するだけで、使用するお湯の量を30〜50%程度削減できる製品があります。1,000〜5,000円程度で購入でき、取り付けは工具不要のものがほとんどです。退去時には元に戻せるため、賃貸でも問題なく使えます。月500〜1,500円程度の節約効果が見込めます。
また、美容効果が見込めるものや、手元で止水できるものもありますので、ぜひ参考にしてみてください。
② 保温シートで追い焚きを減らす
浴槽にお湯を張った後、保温シートをかけておくと湯温の低下を防ぎ、追い焚き回数を減らせます。プロパンガス料金消費者協会の検証によると、保温シートありとなしでは2時間後に2.5℃の温度差が生まれ、ひと冬の追い焚き節約額はプロパンガスで約2,808円になるとしています。
(出典:プロパンガス料金消費者協会「冬のガス代、高すぎ?」)
保温シートは500〜1,500円程度で購入でき、初期投資の回収は1シーズンで完了します。
③ 家族が時間を空けずに入浴する
家族全員が連続してお風呂に入るようにすると、追い焚きの回数が大幅に減ります。お金をかけずにできる最も基本的な節約方法です。
④ シャワーをこまめに止める習慣をつける
シャワーを出しっぱなしにするのが一番のガスの無駄遣いです。シャンプー中・体を洗っている間はシャワーを止める習慣だけで、使用するお湯の量が大きく変わります。
ガスファンヒーターはガスの大食い——エアコンに切り替えを
暖房にガスファンヒーターを使っている方に特に知っておいてほしいことがあります。ガスファンヒーターは暖房効果が高い一方で、ガス消費量が非常に多い器具です。
プロパンガス料金消費者協会のデータによると、ガスファンヒーターを1日5時間・30日使用した場合のガス代はプロパンで約5,550円にのぼります。エアコンで同等の暖房をした場合の電気代は、これをはるかに下回ります。
プロパン物件にお住まいの方は、冬の暖房はエアコンを使うことを基本にするだけで、ガス代を月数千円単位で圧縮できます。賃貸のコンロ・換気扇が故障したらどこに連絡する?ガスコンロ・IH・レンジフードなどキッチンの症状別対処法を現役店長が解説でもガス機器まわりの話を解説しています。
また、窓から冷気が入ってくることが多いため、遮熱カーテンなどもおススメです。カーテンを変えるだけで、驚くほどの保温効果を得ることができます。
ガス漏れが起きたときに絶対知っておくこと
プロパン・都市ガスを問わず、ガス漏れは生命に関わる緊急事態です。この項目は一度しっかり読んでおいてください。知識があるかどうかで対応の正否が分かれます。
まずやること
ガスの臭いがしたら、①窓を開けて換気する、②ガスの元栓を閉める、③建物の外に出る、④ガス会社に電話する、この順番で動いてください。
絶対にやってはいけないこと
電気のスイッチのオン・オフ、換気扇のスイッチ操作は厳禁です。スイッチを入れた瞬間の微弱な電気火花が、ガスに引火する可能性があります。タバコに火をつけることは言うまでもありません。携帯電話での通話も、建物の外に出てから行ってください。
管理会社ではなくガス会社が専管領域
ガス漏れの対応はガス会社の専管領域です。管理会社に電話しても、ガス会社への連絡を促されるだけです。ガス会社の緊急連絡先を確認しておくこと、そして緊急時は管理会社より先にガス会社に連絡することを覚えておいてください。ガス会社の番号はガスメーターや検針票に記載されています。
まとめ:プロパンガスの賃貸物件にもメリットはたくさんある!
プロパンガスは都市ガスより高く、東京都の場合、単身で月約3,600円、4人世帯で月約6,900円の差があります(出典:エネピ2025年度データ)。年間・長期で見れば無視できない差です。ただし、都市ガスが使えないエリアでは選択肢がそもそもなく、地震後の復旧速度という観点ではプロパンに優位性があります。
プロパン物件を選んだ場合の節約は、お風呂まわりを攻めることが鉄則です。ガス使用量の約75〜80%が給湯によるものである以上、コンロではなくお風呂の使い方を変えることに集中してください。節水シャワーヘッドと保温シートは、数千円の初期投資で長期的な節約効果が見込める最優先グッズです。
初期費用の全体については賃貸の初期費用はいくら?内訳・相場・誰に払うかを現役店長が本音で解説も、物件選びの総合判断にあわせてご参照ください。
スラッグ: chintai-gas
メタディスクリプション(79字):

