賃貸の築年数と旧耐震は本当に気にすべきか?現役店長が「築年数信仰」の正体と後悔しない物件の見極め方を解説


「築年数は何年までなら安心ですか?」 「築年数が古いのが気になります」

部屋探しのお客様からよく聞かれる質問です。正しい回答としては、「築何年以内なら安心」という数字なんて存在しません。

驚いた方もいるかもしれませんが、これが20年以上この業界にいる私の本音です。大切なのは築年数という「数字」ではなく、その建物が歩んできた「管理の年輪」です。

この記事では、多くの競合サイトが「築20年未満を選びましょう」で思考停止しているところを、一歩踏み込んで解説します。

旧耐震の本当のリスク、リノベーション済み物件の落とし穴、そして内見で管理状態を見抜く具体的な方法まで、現場の視点でお伝えします。

ぜひ最後までお読みください。


目次

築年数より「管理の年輪」を見てほしい理由

築年数という数字は、建物の状態を測る物差しとして、実はかなり精度が低いものです。もっと厳密に言えば、ばらつきがある、ということです。

私がいつも思うのは、築年数は「人間の年齢」に似ているということです。30歳でも不摂生が続けば体は病みます。60歳でも毎日鍛えて健康診断を欠かさない人は、30歳の不健康な人より体が動く。物件もまったく同じです。

たとえば、築3年でも貯水槽の清掃記録がない、消防設備の点検が未実施、そういう物件は築年数の若さに関係なく、管理の質という観点では「不健康」です。逆に、築40年でも法定点検を継続し、給排水管をやり替え、外壁の定期補修を積み重ねてきた物件は、建物としての「健康体」を維持しています。

築年数は建物が何年生きてきたかを示すだけです。その間にどう過ごしてきたか、つまり「管理の年輪」のほうが、実際の居住の快適さや安全性をはるかに正確に反映しています。

店長の独り言

「例えば、マンションの廊下などにある消防設備(消火器や火災報知器)は半年に一度ずつ点検をしなければいけません。これは消防法で定められている所有者の義務です。

おそらくほとんどの人は、こういった設備の点検は知らない間に管理会社やオーナーがやってくれているものと考えているでしょう。

しかし、実態は残念ながらそうではありません。消防設備点検の実施率は2023年発表数字で55.2%となっています。

つまり、法律で点検しなさい、と言われているものでさえ、実は半分くらいしか実施していないのが現実です。」

出典:都道府県消防設備協会 「消防用設備等点検報告率について(全国の点検報告率の推移)」


「旧耐震基準」とは何か——まず正確に理解する

旧耐震・新耐震の話は他の記事にも必ず出てきますが、誤解されがちな点があるので整理しておきます。

1981年(昭和56年)6月1日に建築基準法が改正されました。この日を境に、耐震基準が大きく変わっています。重要なのは、判断基準が「完成日」や「引き渡し日」ではなく、「建築確認申請を受けた日」であるという点です。1981年5月31日以前に建築確認を受けた建物が「旧耐震基準」の対象となります。

旧耐震基準は「震度5強程度の揺れで倒壊しない」ことを求めるものでした。新耐震基準はこれを大幅に引き上げ、「震度6強〜7の大規模地震でも倒壊しない」ことを要求しています。数字だけ見ると、旧耐震が大きく劣るように見えます。

さらに、2000年6月には木造住宅を対象に耐震基準がもう一度改正されています(いわゆる「2000年基準」)。木造のアパートや一戸建てを検討する場合は、この2000年基準も意識しておくと良いでしょう。


旧耐震物件、本当に借りてはいけないのか

「旧耐震には住まないほうがいい」と言い切る記事が多いですが、私はそこまで断言する気にはなれません。理由は一つです。旧耐震という建築確認日のラベルより、その後の管理とリノベーションの内容のほうが、実際の居住安全性や快適性に大きく影響するからです。

借りても良いと判断できるケース

給排水管や電気配線・ブレーカーまでやり替えたリノベーションが施されている物件は、旧耐震であっても評価が変わります。建物の骨格を変えることはできませんが、インフラ部分がしっかり更新されていれば、居住上のリスクは大幅に下がります。

また、管理組合や管理会社による大規模修繕の記録がきちんとある物件も、日常管理への意識の高さがうかがえます。

避けたほうがいいと判断するケース

表面のクロスやフローリングだけを張り替えた「見た目リノベ」しかされていない、共用部が荒れている、修繕記録がまったくない、こういう物件は旧耐震かどうかに関わらず、管理の放置という意味で注意が必要です。

なお、「大地震が来たら旧耐震は崩れるのでは?」という疑問はよく出ます。「崩れる・崩れない」の二択で考えるより、「避難できる時間があるかどうか」の視点が現実的です。日常的にクラック補修や外壁点検をしている物件は、建物の粘りが維持されています。

一方、新耐震基準の物件であっても管理不全でコンクリートの中性化が進んでいれば、構造は脆くなります。築年数だけで安心を判断するのは、やや危うい考え方です。


築古物件で本当に怖いのは耐震性より「配管」の話

耐震性より、もっと日常的な実害として現れやすいのが配管の問題です。古いRC造のマンションでは、共用の排水縦管に「鋼管」が使われていることがあります。鋼管は経年で錆や腐食が進みやすく、排水詰まりが起きた際に高圧洗浄をかけると、管が破損するリスクがあります。これが「古い鋼管配管への高圧洗浄は禁忌」と言われる理由です。

この状態だと何が起きるかというと、排水詰まりが起きたときに対応できる業者が限られ、修理が長引くことがあります。居住者として直接困る場面が生まれるわけです。

排水管が鋼管かどうかを内見で確認する方法

これは少し知っておくと役に立つポイントです。古いRCマンションでは、トイレの奥や壁面に点検口が設けられていることがあります。そこにスマホのライトを当ててみてください。トイレ付近の点検口から覗けるのは排水の縦管です。

  • 銀色の金属管が見えたら要注意。鋼管の可能性が高く、老朽化が進んでいれば前述の高圧洗浄リスクを頭に入れておく必要があります。
  • グレーや白の樹脂管(塩ビ管)が見えたら◎。排水管がすでに更新されているサインです。

なお、給水管(ピンク・青の樹脂管)は床下に通っており、床下点検口がある物件でなければ内見で確認することはできません。床下点検口がない場合は、不動産会社に「給水管の更新履歴があるか」と口頭で確認するのが現実的な方法でしょう。


店長の独り言

「一般論ですが、間取りも変更されている、給湯器やキッチン、トイレ、お風呂、洗面台などもすべて交換されている。このようなケースでは給水管もやり替えていると想像できます。

戸建てなどでは床下点検口があることがほとんどですが、マンションなどで点検口がないときは、確認しておいて損はありません。

床下収納かな?と思ったら点検口だった、というのはよくあります。そのとき、せっかくならライトを照らして給水管の状況をチェックしておくとよいでしょう。

また、床下収納だったときは、収納ボックスは実は外すことができます。外したところが点検口になりますので、そのときもやっぱり覗き込んでチェックしておきましょう。」

「リノベーション済み」の落とし穴

競合記事の多くはリノベーション済み物件を「お得」と紹介しています。確かにそういう面もありますが、現場から見ると、リノベと一口に言っても中身は千差万別です。そもそも「リノベーション」という言葉に法的な定義はありません。クロスを貼り替えてフローリングを張り直しただけの物件でも、「リノベ済み」と表記されることがあります。

「見た目は新品・中身はボロ」という落とし穴

表面しか手を入れていない物件は、見た目の清潔感とは裏腹に、その下の給排水管や電気配線は築年数分の老朽化をそのまま引きずっています。これが後々の設備トラブルや故障の原因になります。

個人的には、キッチン・洗面台・浴室などの水回りを交換するときは、給排水管も一緒にやり替えるのが当然だと思っています。伴って電気配線やブレーカーも一新するのがセットです。このセットがされているかどうかが、表面リノベと本質的なリノベの分岐点です。

なお、「リノベ済みなのに排水が臭う」という経験をした方は、これがその答えです。見えるところ(シンク・浴槽)は新品でも、その下のトラップや古い排水管が残ったままになっています。見た目で判断せず、においにも正直になることが大切です。鼻は案外正直です。給水・排水ともに更新されているかどうかは、「配管の更新履歴はありますか」と口頭で確認するのが一番確実です。

ブレーカーボックスの確認も有効です。新しく綺麗なブレーカーボックスは、電気配線を更新したサインになります。さらに一歩踏み込むなら、アンペア数(容量)も確認してください。見た目が新しくても、電気容量が30Aのままであれば、電子レンジとドライヤーを同時に使うだけでブレーカーが落ちます。現代の生活家電を考えると、40〜60Aが確保されているかどうかは実生活への直接的な影響があります。

店長の独り言

「排水が臭う、下水臭がする、だからこの物件はダメだ、と決めつけるのはちょっと早いです。トラップは虫や臭いが上がってこないように、簡単に言えば水で蓋をしています。※この水を「封水」といいます。

封水はつまり水ですから、夏場などは数日で蒸発してしまうんですね。そのため、下水臭が上がってくることがあるわけです。

旅行から帰ってきたらなんだか変なにおいがしたことはありませんか?まさにそれです。

下水臭がするときは、未交換なのか、封水切れなのか、このあたりも可能な限りチェックしておくとよいでしょう。」


退去費用と築年数の関係——実務の本音

築古物件に住んで退去するとき、費用はどうなるのか。これも現場の本音をお伝えします。

結論から言うと、退去費用の判断は「築年数」ではなく、「入居年数×設備や内装の交換履歴」で考えることになります。

たとえば、10年・20年と長期入居した方に対して、ちょっとした小傷や消耗品(パッキン類など)を細かく請求することは、実務感覚としてほとんどありません。それだけ時間が経てば、経年劣化として当然の範囲に収まるものが多いからです。ただ、例外もあります。襖や障子の破れ、目立つ大きな損傷は、築年数や入居年数に関係なく、借主負担として扱います。

築古物件だから退去費用が安い、というわけではなく、「その部位がどれだけ使われてきたか・交換されてきたか」を軸に判断するのが実務の現実です。退去費用の全体的な考え方については、賃貸の退去費用|何を請求されて何を払わなくていいか、現役店長が全部解説もあわせてご覧ください。


店長の独り言

「これは感覚論なのですが、経年劣化、という言葉がありますよね。

経年って言っても、1年でも経年だし、20年でも経年です。つまり、入居期間が長期になればなるほど経年劣化と判断する範疇は多くなるはずです。

冷静に考えてみてください。家賃が7万円の部屋に20年お住まいいただいたとしたら、総支払家賃はなんと1,680万円にのぼります。もう、郊外の中古戸建を購入できるお値段ですよ。

細かい傷も問題視すべきかもしれませんが、まずは家主に代わって『長くお住まいいただいてありがとうございます』という気持ちの方が芽生えますね、少なくとも私は。」

内見で「管理の年輪」を読む7つのチェックポイント

築年数という数字ではなく管理の実態を見るべきだと言いましたが、では内見でどこを確認すればいいのでしょうか。具体的なポイントをまとめます。

① ゴミ置き場と駐輪場の清潔感

共用部の管理状態は、管理会社や大家の姿勢をそのまま反映します。ゴミ置き場に分別されていないゴミが放置されていたり、駐輪場が整理されていなかったりする物件は、日常管理への関心が薄いサインです。

内見チェック全般については賃貸の内見チェックリスト|現役店長が教える管理品質の見抜き方と退去費用を防ぐ確認箇所も参考にしてください。

② 消火器の点検シールの日付

廊下や階段踊り場に設置されている消火器には、点検シールが貼ってあります。直近の点検日を確認してください。法定点検が継続されているかどうかが、ひと目でわかります。

半年以内の日付が表示されていればきちんと消防設備点検がなされています。

③ 掲示板の掲示物の日付

共用廊下の掲示板に貼られているお知らせの日付を見てください。古い日付の掲示物がそのまま残っていれば、管理会社の巡回頻度が低い可能性があります。逆に、最新の日付のお知らせが貼られていれば、定期的に管理者が訪問しているサインです。

④ ブレーカーボックスの新しさとアンペア数

前述のとおり、ブレーカーが新しければ電気配線の更新が期待できます。加えて、アンペア数(容量)が現代の生活に対応しているか確認しましょう。30Aのままは要注意です。40〜60Aであれば、一般的な生活での不便は少ないでしょう。

⑤ キッチン下の排水管の素材

シンク下の扉を開けて、排水管の素材を確認します。銀色の鋼管ではなく、グレーや白の塩ビ管(樹脂管)であれば、排水管が更新されている可能性が高いです。なお、給水管(ピンク・青の樹脂管)は床下に通っており、床下点検口がなければ内見での目視確認はできません。口頭で管理会社に更新履歴を確認するのが現実的です。

⑥ トイレ奥・壁面点検口の排水縦管の確認

スマホのライトで照らして、排水の縦管を確認します。グレー・白の塩ビ管が見えれば◎、銀色の鋼管であれば老朽化リスクを念頭に置いてください。

⑦ 大規模修繕の履歴を確認する

「そんなこと、素人が管理会社に聞いてもいいの?」と思う方もいるかもしれません。むしろ積極的に聞いてください。管理会社や大家にとって、修繕履歴の開示は恥ずかしいことでも特別なことでもありません。

「出せない」と言われたとしたら、その時点でその物件・その管理会社は慎重に考えるべきサインです。きちんと管理してきた物件なら、記録があって当然だからです。


店長の独り言

「例えば、賃貸物件やオフィスビルなどを売却するとき、ほぼ100%の確率で『修繕履歴を出してください』と言われます。

そこで、『修繕履歴はありません、わかりません』などと言おうものなら、間違いなく購入意欲はごっそり削がれてしまいます。ほぼ普通の売却はかなわないでしょう。

購入した人からすれば、今からどれだけ修繕にお金がかかるかわからないため、買う気にならないのです。もっと言えば、ガンガン金額交渉をしてください、と言っているようなものです。

そのくらい、修繕の管理というものは大切なものです。」

築古物件に向いている人・向いていない人

築古物件は、全員に向いているわけではありません。自分がどちらに当てはまるかを確認してから判断してください。

築古物件に向いている人

家賃を抑えることが最優先で、多少の設備の古さは許容できる方。数年以内の短期入居を前提にしている方。内見で管理状態を自分でしっかり確認できる方。これらに当てはまるなら、築古物件は十分に選択肢になります。

築古物件に向いていない人

地震リスクを強く気にしていて、耐震性に絶対的な安心感を求める方。浴室乾燥機・温水洗浄便座・宅配ボックスなど最新設備を必須条件にしている方。長期入居を前提としていて、10年・20年先の老朽化リスクも含めて考えたい方。このような場合は、築浅物件や新耐震基準以降の物件を中心に探すほうが、後悔が少ないでしょう。


まとめ:築古物件でもきちんと調べれば優良物件は見つかる!

「築何年以内なら安心」という問いに、正確な数字で答えることはできません。しかし、「どこを見れば管理の質がわかるか」という問いには、具体的に答えられます。

  • 築年数は「年齢」に過ぎず、「管理の年輪」こそが建物の実態を示すものです。
  • 旧耐震でも、給排水管・電気配線まで更新したリノベが施されていれば評価は変わります。
  • リノベ済みという表記を鵜呑みにせず、ブレーカーのアンペア数とキッチン下の配管素材を自分の目で確認してください。
  • 大規模修繕の履歴は、聞けば必ず出してもらえます。出せないと言われたら、それ自体が判断材料になります。

築年数という一つの数字で物件を切り捨てるのは、良い部屋を見逃すことにもつながります。数字ではなく、管理の実態を見る目を養うことが、部屋探しで後悔しないための一番の近道です。

初期費用の全体像を把握したい方は賃貸の初期費用はいくら?内訳・相場・誰に払うかを現役店長が本音で解説も、あわせて参考にしてください。

この記事を書いた人:不動産会社店長

業界歴20年以上の現役店長。現場の第一線で培った知見を活かし、大手不動産メディアにて累計50本以上の専門記事を執筆中。 業界の表も裏も知り尽くした「不動産のプロ」として、不動産会社の不都合な真実を伝えます。

不動産・建築の専門家として、以下の大手メディアにて2026年現在も継続的に執筆・監修を行っています。

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