賃貸の「保証人不要」とは何か?現役店長が時代の変化・審査の現実・各立場別の注意点を本音で解説


「保証人不要」という条件を見て、「怪しい物件なのでは」と思ったことはないでしょうか。あるいは「保証人を探す手間が省けてラッキー」と感じた方もいるかもしれません。どちらも今の時代における賃貸仲介の実態とは少しずれています。

不動産業界で20年近く現場を見てきた立場から正直に言いますと、今や「保証会社に加入して保証人なし」がスタンダードです。保証人を両方揃えなければならない物件の方が、むしろ管理会社から嫌がられる時代になっています。

この記事では、なぜそうなったのかという背景から、借主・家主・仲介業者・宅建受験者それぞれに必要な知識まで、立場別に整理してお伝えします。


目次

「保証人不要」はなぜ当たり前になったのか──2020年民法改正の影響

「保証人不要」物件が急増した背景には、2020年4月に施行された改正民法があります。

改正前は、連帯保証人がオーナーの損害を無制限に補填しなければならない構造でした。家賃滞納が続けば、滞納総額が連帯保証人に全額請求される可能性があり、連帯保証人の人生を狂わせるケースが社会問題になっていました。

改正後、個人が保証人となる継続的な契約(賃貸借契約の連帯保証がこれに当たります)では、極度額(保証の上限金額)を書面で明示しなければ、保証契約そのものが無効になるというルールが設けられました。つまり、家賃6ヶ月分を上限にする・合計50万円を上限にするといった具体的な金額を定めなければ、連帯保証契約は成立しなくなったのです。

これにより、オーナーにとって「個人の連帯保証人を立ててもらっても、上限額以上は回収できない」という状況が生まれました。結果として、代わりに保証会社を使えば督促・滞納対応を保証会社が担ってくれて、しかも信用情報による事前審査で滞納リスクを下げられるという判断が広がりました。現場の実感としても、督促や滞納件数は明らかに減少しています。

「いまや駐車場の契約でも保証会社を使う時代」というのが、現場の実感です。


店長の独り言

「こんなことを言うと誤解が生まれかねませんが、保証会社全盛期に移行して、管理会社としては非常に業務が楽になりました。

なぜなら、そもそも督促業務がゼロになったからです。また、退去時のとりっぱぐれもほとんどなくなりました。これだけでもかなり業務としては楽になったと言えるでしょう。」

「保証人不要」には3つのパターンがある

「保証人不要」という言葉でひとくくりにされていますが、実態は3パターンに分かれます。

パターン①:保証会社加入+保証人なし(現在のスタンダード) 保証会社と契約することで、個人の連帯保証人なしで入居できます。これが現在の圧倒的多数派です。初回保証料(総賃料の50%〜1ヶ月分が相場)と年間更新保証料(1万円程度)もしくは月間保証料(総賃料の1~2%が相場)が発生します。

パターン②:保証会社費用をオーナーが負担する物件 空室対策として、保証会社の費用をオーナー側が負担する物件があります。入居者の初期費用が下がるため、競争力のある物件として機能します。

パターン③:保証会社も保証人も両方不要な物件 これは現実的ではありません。現場の経験では、超高齢の個人家主が管理している田舎の物件や、収益が回らなくなって困っているオーナーの物件に限られます。保証を何も求めない物件には、それだけの理由があります。審査に通らない人が集まりやすいという別のリスクもあります。

逆に、「保証人と保証会社の両方を揃えること」を条件にしている物件は、管理会社から敬遠されることすらあります。手続きが煩雑で入居者のハードルが上がるだけだからです。

保証会社の仕組み・費用・審査の詳細も合わせて参考にしてください。

店長の独り言

「実務での誤解が生じやすい点があるので、ここだけ詳しく深掘りしておきます。

基本的に、個人契約であれば保証会社の審査に通過すれば、保証人は不要です。ただし、法人契約で保証会社の審査に通過したときは、借主法人の代表者などが連帯保証人にも就任する、というのが通例です。

法人契約では、保証会社と連帯保証人がダブルで必要になる、と覚えておきましょう。」


「保証人を立てたい」という人が逆に不利になる

「保証会社を使いたくない。保証人を立てるから保証会社なしにしてほしい」という希望を持つ入居者は、20年の経験でも10人いたかどうかというくらいの少数派です。

こうした希望を持つ方の多くは、信用情報に傷があることを暗に示している場合があります。過去に家賃滞納・クレジットカードの延滞・自己破産などがあると、保証会社の審査に通らない可能性があるからです。コスト面を理由にする方もいますが、ほぼすべての物件が保証会社加入を必須にしている現状では、「保証人なら保証会社不要」という物件を探す方が現実的に難しくなっています。

なお、保証会社の審査落ち理由は、仲介会社・管理会社には開示されません。「なぜ落ちたのか」を教えてもらえない構造になっています。信用情報に不安がある場合は、担当者に事前に相談してください。不安な事情を先に話してくれる入居希望者ほど、担当者としても対応策を考えやすくなります。

保証会社には審査の厳しさに系統による差があります。信用系(クレジットカード会社系列)は審査が厳しく、独立系は比較的通りやすい傾向があります。信用情報に不安がある場合は、担当者に相談して対応できる物件・保証会社を一緒に探してもらうことをお勧めします。


各立場別ワンポイントアドバイス

【借主の方へ】──保証会社が払っても、あなたの債務は消えない

保証会社が家賃を立て替えてくれる仕組みですが、これは「保証会社があなたの代わりに払ってくれる」のではなく、「保証会社がオーナーに立て替えて、その後あなたに請求する」という仕組みです。滞納した家賃の支払い義務はなくなりません。保証会社から督促が来るだけでなく、信用情報にも傷がつく可能性があります。

また、利用できる保証会社は管理会社の提携先に限定されます。自分で「保証料が安い保証会社を選びたい」と思っても、原則として切り替えることはできません。初期費用の全体像については初期費用の解説記事も参考にしてください。

【家主・オーナーの方へ】──保証会社費用を家主負担にする選択肢

空室が続いている場合、保証会社の費用をオーナー側が負担する提案を管理会社からされるケースがあります。入居者の初期費用ハードルが下がり、入居促進につながります。費用を払ってでも空室を埋めた方が収益上合理的なケースも多いため、一概に損とは言えません。

督促・滞納対応が保証会社経由になることで、管理の手間が大幅に軽減されるという副次効果もあります。

【賃貸仲介業者・宅建実務者の方へ】──連帯保証人への説明義務と審査のさばき方

連帯保証人が個人の場合、保証契約書面に極度額を明示する義務があります(民法465条の2)。極度額の記載がない個人根保証契約は無効になりますので、書面の確認は必須です。また、連帯保証人に対する情報提供義務として、保証契約締結時に主たる債務者の財産・収支状況を把握しているかを確認することも求められます(民法465条の10)。

入居希望者から「信用情報が心配」と告白された場合の対処として、審査の系統を理解しておくことが有効です。信用系保証会社→独立系保証会社という順で、審査の厳しさが変わります。担当者として「この人にはこの保証会社が合う」という判断ができるようになることが、実務上の差別化につながります。

【宅建受験者の方へ】──令和7年本試験の問2がまさにこのテーマ

2025年(令和7年)の宅建本試験問2は、保証・連帯保証が出題されました。ここで整理しておきましょう。

保証人と連帯保証人の3つの違い

通常の保証人には、①催告の抗弁権(まず主たる債務者に請求しろと言える権利)、②検索の抗弁権(主たる債務者に財産があれば先にそちらを執行しろと言える権利)、③分別の利益(保証人が複数いる場合、頭数で割った金額のみを負担する権利)があります。

連帯保証人には、この3つの権利が一切ありません。債権者はいきなり連帯保証人に全額請求できます。

なお、賃貸借契約における保証人とは、例外なく「連帯保証人」となります。くれぐれもご注意を。

令和7年問2の正解肢(肢3)

賃貸借契約の連帯保証(継続的契約の個人根保証)には極度額の定めが必要で、定めがないと無効です。一方、売買代金債務の保証(特定の一回的な債務)は個人根保証に該当しないため、極度額の定めは不要です。この違いが2025年の本試験に出た論点です。

極度額の定めは「個人が保証人となる継続的な契約」に適用されます。賃貸借契約の連帯保証は継続的に債務が発生するためこれに当たりますが、一回限りの売買代金債務の保証は当たらない、という整理です。

保証人制度をわかりやすくサル読み


保証人制度は非常に難解でわかりにくいものです。少しでも理解が進むよう、サルでもわかり、サルに例えた保証人制度の概要を記載しています。ぜひお読みください。

1. 保証人と連帯保証人の違い(サルの力関係)

あるサル(借主)が、ボス猿(家主)からバナナを借りました。その「身代わり」になるサル(保証人or連帯保証人)の権利には大きな差があります。

  • 普通の保証人(ちょっと強いサル): ボスが「バナナ返せ」と来ても、「まず借りた本人に言え!(催告の抗弁権)」「あいつの隠しバナナを先に奪え!(検索の抗弁権)」「俺は仲間のサルと等分にしか返さないぞ!(分別の利益)」と抵抗できます。
  • 連帯保証人(人権のないサル): ボスが督促に来たら最後。「はい、どうぞ」と自分のバナナを全部差し出すしかありません。 抵抗は一切許されません。

2. 「極度額(返済するバナナの上限)」の話

令和7年(2025年)の問2で出た「極度額(きょくどがく)」。これは「最大でバナナ何本まで身代わりになるか」という約束の上限のことです。

  • パターンの違い(ここが試験に出た!):
    1. 賃貸借の保証(終わらないバナナ): 毎月バナナが発生する「継続的」な契約。上限(極度額)がないと、身代わりのサルは一生バナナを奪われ続けます。だから、「フタがない契約は無効!」となります。
    2. 売買の保証(1本の巨大バナナ): 「このバナナ1本分だけ」という「1回きり」の契約。最初から量が決まっているので、わざわざ上限(極度額)を決める必要はありません。「上限がなくても有効!」です。

まとめ──「保証人不要」で物件を探している方へ

「保証人不要」と検索しているほとんどの方は、保証会社に加入すれば問題なく入居できます。保証人不要=不人気物件・危ない物件という思い込みは、2020年以降の現代では完全に時代遅れです。

本当に検討が必要なのは、保証会社の審査に不安がある方です。その場合は、担当者に早めに相談してください。審査に通りやすい保証会社の系統を含めて、一緒に対策を考えることができます。

重要事項説明書で確認すべき保証関連の項目については重要事項説明書の確認ポイント、初期費用全体の把握には初期費用の解説記事も合わせて参考にしてください。

この記事を書いた人:不動産会社店長

業界歴20年以上の現役店長。現場の第一線で培った知見を活かし、大手不動産メディアにて累計50本以上の専門記事を執筆中。 業界の表も裏も知り尽くした「不動産のプロ」として、不動産会社の不都合な真実を伝えます。

不動産・建築の専門家として、以下の大手メディアにて2026年現在も継続的に執筆・監修を行っています。

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