遠隔地の実家・土地を売却する方法|東京から福岡県南部の不動産を売る手順を現役店長が解説

「東京に住んでいるが、みやま市の実家を売りたい」「遠くて現地に行けないから売却を諦めていた」福岡県南部エリアである筑後市・柳川市・みやま市・広川町・八女市エリアでは、こういったご相談が年々増えています。

相続や転勤をきっかけに、自分が住んでいない遠隔地の実家や土地を売却しなければならないケースは珍しくありません。「現地に行かなければ売れない」と思い込んで、固定資産税を払い続けながら放置している所有者は意外と多くいらっしゃいます。

結論から言いますと、遠隔地の不動産売却は、現地に来てもらう必要は一切ありません。信頼できる地元の不動産会社を選び、こまめに連絡を取り合えば、東京にいながら福岡県南部の実家を売ることは十分に可能です。

この記事では、現役店長として遠隔売却を何度も経験してきた立場から、その手順と現場の本音をお伝えします。

目次

遠隔地売却の第一歩|筑後・柳川・みやま・八女エリアにある不動産の「今の状態」を知ることから始める

遠隔売却で最初にすることは、現地に行くことではありません。現状を把握してもらうことです。

依頼を受けたら、私はまず現地に出向いて物件の写真を撮ります。外観・内部・庭・設備・気になる箇所、ありのままの状態を記録して、売主に送ります。売主が物件の現状を正確に把握することが、その後の判断すべての起点になるからです。

「実家がどんな状態になっているか怖くて見られない」という方もいらっしゃいます。ただ、現状から目を背けても問題は解決しません。写真で現実を共有したうえで、解体するのか・そのまま売るのか・賃貸に出すのかを一緒に考えていく、それが遠隔地にある不動産を売却するためのスタートラインです。

査定もオンラインや郵送で対応できます。現地に精通した不動産会社であれば、写真と登記情報・周辺相場をもとに査定額を算出し、メールや郵便で伝えることができます。売主が現地に来なくても、売却活動を始めることは十分可能です。

遠隔売却で最初に決めるべきこと|不動産会社の選び方

遠隔売却において、不動産会社選びは最も重要な判断です。物件のある現地エリアに精通した地場の会社を選ぶことが、成功の最大の条件です。

理由はシンプルです。みやま市や柳川市の物件を、東京の不動産会社が売却活動するのは現実的ではありません。現地の相場・法的制限・インフラ状況・買い手の傾向など、これらはすべて、その土地で長年活動してきた会社でなければ正確に把握できません。

一括査定サイトを使うと複数社から連絡が来ますが、このエリアの実態をよく知らない会社が含まれていることもあります。住所を見た瞬間に「対応外だ」と判断しながらも連絡してくる会社もいます。詳しくは不動産売却を断られた・連絡がこない・買い取ってくれない理由とは?断る側の本音と次の一手を現役店長が解説でも触れています。

遠隔地だからこそ、現地に根ざした信頼できる1社を選んで、そこと密にやり取りするという方針が正解です。複数社に依頼して情報が分散すると、かえって売却活動が非効率になります。

会社を選ぶ際の確認ポイントは3つです。そのエリアでの売却実績があるか、内見対応・草刈り・残置物処理などの現地作業を引き受けてくれるか、こまめに連絡してくれる担当者がいるかどうかです。最後の点は特に重要で、「売りに出しました、あとは連絡待ちです」という会社では遠隔売却は成功しません。

店長の独り言

「一括査定サイトがすべて悪いことだとは思っていません。不動産会社からすればいまや重要な集客ツールですし、売却を検討している人からみても、よい不動産会社とのマッチングの機会だからです。

しかし、上述のとおり、エリアに精通していない会社から連絡が入ることも少なくありません。そして、その場合ほとんどは『買取再販業者』です。

つまり、広く良い物件のみを安価で購入したい買取会社が、エリアなど関係なく参入しているケースがあるのです。

もちろん、買取を希望されている人にとっては良いマッチングと捉えることもできますが、逆に言えば、グーグルマップを見た時点で『これは買取には適さないな』と判断されてしまうと、電話がかかってくることはありません。

このあたりは本当に何が適しているかはうまく言えないのですが、大事なことは、売却したい不動産をどうしたいのか、という軸を持つことが重要だと思います。

割り切っていってしまえば、安くとも早く処分したいのか、はたまた時間がかかっても高く売りたいのか、このくらいでよいので、まずは意向を固めておくのがよいでしょう。」

現地の細々した作業|不動産会社がどこまで引き受けるか

遠隔売却で多くの売主が心配するのが、現地での実務作業です。内見対応・草刈り・残置物の処理など、「誰がやるのか」という問題です。

私の場合、これらは普通に引き受けます。草刈りも残置物の処理も日常茶飯事です。※もちろん実費相当の費用は頂戴しますので悪しからず。

ただし、仏様関係はご自身で対応いただくのが原則です。遺影などの大切なものは宅急便でお届けします。仏壇や仏具の附属物は焚き上げに出す、という段取りをこちらで手配することもあります。

少し珍しい話をすると、井戸の魂抜きに立ち会ったこともあります。このエリアでは井戸のある物件が多く、売却前後ろに井戸を埋めるときに魂抜きの儀式を行うことがあります。宗教的な行為ですから不動産会社の仕事とは言えませんが、段取りを手伝い、立会いまでします。それがこのエリアで長年仕事をしてきた者の務めだと思っています。

内見対応も不動産会社が担います。鍵を預かり、買い手候補が来るたびに案内します。売主がいちいち現地に来る必要はありません。

遠隔売却において、こういった細々した現地作業を快く引き受けてくれる不動産会社を選ぶことは、実は会社選びの最重要ポイントのひとつです。大手仲介会社は物件数も多く、こういった雑務には対応しないケースがほとんどです。地場の不動産会社の方が、この点では圧倒的に頼りになります。

店長の独り言

「大手の不動産会社がよいか、地場の不動産会社に任せるのが良いか、についてはよく議論されますが、正解はありません。

ただ、一人の営業担当者として言えることとして。

売却したい物件が築年数が浅い物件であれば大手の方に歩があるかもしれません。なぜなら、大手の不動産会社ではハウスクリーニングなどのサービスが附帯されていることがあるからです。

逆に言えば、そういった売却に向けたサービスが不要な更地などでは、小回りの利く中小の地場不動産会社のほうが良いように思います。

ただ、最近では地場の不動産会社であっても、ハウスクリーニングやプロのカメラマンによる写真撮影など、以前は大手の独壇場だった付帯サービスが充実しています。

そう考えると、やはり信頼できる営業担当者といち早く出会うことが重要なのかと考えるところです。」

媒介契約|遠隔でも郵送で締結できる

不動産会社が決まったら、次に媒介契約を結びます。媒介契約は、不動産会社に売却活動を依頼する契約です。遠隔地でも、契約書を郵送してもらい、署名捺印して返送するだけで締結できます。

媒介契約には「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3種類があります。遠隔売却の場合、専任媒介または専属専任媒介を選ぶことをお勧めします。理由は、宅建業法上の報告義務があるからです。専任媒介であれば2週間に1回以上、専属専任媒介であれば1週間に1回以上、販売活動の状況を売主に報告する義務が不動産会社に生じます。遠隔地にいる売主にとって、この定期報告は状況把握の大きな助けになります。

一般媒介は複数社に依頼できますが、遠隔売却では情報が分散してかえって管理が難しくなります。信頼できる1社に絞って専任で任せる方が、結果的にスムーズに進むことがほとんどです。

契約と決済|持ち回り契約の仕組みと4つの手順

遠隔売却で一般的に使われるのが持ち回り契約です。売主・買主・不動産会社が一堂に会さずに、郵送で契約書をやり取りしながら締結する方法です。

私も遠隔地の案件ではしょっちゅう使いますが、流れは以下の4ステップです。

  • 契約書の作成と買主への送付: 不動産会社が契約書の原本を作成し、まず買主へ郵送します。
  • 買主の署名捺印と手付金の振込: 買主が署名捺印をして、手付金を売主の口座へ振り込みます。
  • 売主(あなた)への契約書転送: 買主のサインが入った契約書が、東京のご自宅へ郵送で届きます。
  • 着金の確認と署名捺印: 手付金の着金を確認し、署名捺印して不動産会社へ返送した時点で契約成立です。

ここで特に重要なのが、「手付金の入金が確認された日」が正式な契約成立日になるという点です。「書類が届いた日」でも「署名した日」でもなく着金確認日が成立日です。この点を営業担当者とあらかじめ確認しておかないと、契約日をめぐるトラブルに発展しかねません。

なお、私は持ち回り契約であっても、ZoomなどのビデオツールによるIT重説(オンラインでの重要事項説明)を売主に対しても必ず行うタイプの営業担当者です。重要事項説明は買主に対して行えばよい、と考えている営業担当者も少なからずいます。

しかし売主こそ、物件の状況・契約条件・リスクをきちんと理解したうえで契約に臨む必要があります。遠隔地にいながら画面越しに担当者の顔を見て説明を受けられるので、売主が「初耳」のまま契約に進む、ということがありません。

決済(残代金の受け渡しと所有権移転)については、司法書士が主役になります。事前に登記識別情報(権利証)や本人確認書類を準備しておけば、決済当日に現地に来なくても対応できるケースがほとんどです。ただし、登記識別情報がないなどのイレギュラーな事態が生じた場合は、司法書士との別途調整が必要になることもあります。

遠隔売却を成功させる最大のポイント|とにかくこまめな連絡

遠隔売却でトラブルになる原因のほとんどは、情報共有の不足です。

私が実践しているのは、可能な限り写真付きで、とにかくこまめに連絡することです。売却活動中のメールのやり取りは、1件の案件で軽く100通を超えることもあります。

「内見に来た方がいました、写真です」「草刈りが完了しました」「価格交渉の申し入れがありました、以下の理由でこう判断します」こういった状況はすべて根拠を添えてお伝えます。

不動産の売却はお金が動く話です。売主が「なぜその価格なのか」「なぜその条件なのか」を理解できていなければ、最終的な判断ができません。重要事項説明の段階で「初耳」の情報がゼロになるくらい、事前に情報共有を積み上げていく。それが遠隔売却を成功させる最大のポイントです。

【店長の独り言】

「『現地に行かないと売れない』という思い込みで、何年も手をつけられないオーナーは本当に多いです。その間も固定資産税は払い続け、建物は劣化し、草は伸び続ける。早く動くほど選択肢は広がります。写真を送るところから始めればいい。それだけで半分は解決します。遠隔売却を何十件もこなしてきた経験から言えば、やる気さえあれば距離は問題になりません。」

田舎の物件特有の事情については以下の記事もあわせてどうぞ。

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この記事を書いた人:不動産会社店長

業界歴20年以上の現役店長。現場の第一線で培った知見を活かし、大手不動産メディアにて累計100本以上の専門記事を執筆中。 業界の表も裏も知り尽くした「不動産のプロ」として、不動産会社の不都合な真実を伝えます。

不動産・建築の専門家として、以下の大手メディアにて2026年現在も継続的に執筆・監修を行っています。

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