
重要事項説明は、契約のために重要な手続きですが、難しい専門用語も多いため、どうしても聞き流してしまいがちです。しかし、重要事項説明はその名のとおり「重要な事項」が盛りだくさん記載されているため、少しの聞き逃しも本来は許されません。
そこで、事前に「ここだけは要チェック!」という押さえておきたいポイントポイントを知っておけば、あとでトラブルに発展することを防ぐ手助けになります。退去立会い1,000件超・不動産業20年以上の宅建士・現役店長が、現場で実際にトラブルになりやすい項目を優先順位とともに解説しますので、ぜひ最後までお読みください。
この記事でわかること
- 設備と残置物(サービス設置品)の違いってなに?
- 水道料定額の物件は、実はお得じゃないかも
- 解約予告期間だけでは確認は不十分?
- 重要事項説明に記載されない更新料がある?
- 特約条項の読み方と、退去費用トラブルを防ぐポイント
- 貸主と管理の委託先からわかる、今後の住みやすさ
①設備と残置物の違いを確認してください——見落とすと修理費が全額自己負担になります
そもそも「設備」と「残置物(サービス設置品)」とはどのような意味があり、どのように違うのでしょうか。
「設備」とは、借主がそのお部屋で生活するために家主が提供している備品のことです。キッチンや給湯器、トイレや洗面台などが設備に該当します。家主が提供している備品である以上、借主が普通に使っていて壊れたときは所有者が修理したり交換する必要があります。
一方、「残置物(サービス設置品)」とは、前入居者が「残置」していった備品のことを指します。所有者の立場からすれば、前の入居者が置いていったものなのに、修理とか交換しなきゃいけないの?と思うのは当然です。なので、残置物は壊れても所有者は交換してくれません。修理や交換に要する費用は借主が負担する必要があります。
もちろん、設置されている設備や残置物はお部屋によって異なりますので、重要事項説明書でチェックする必要があるのです。
重要事項説明の設備欄には、物件に備え付けられている設備の一覧が記載されています。ここで確認すべきことが2つあります。
ひとつ目は、内見時に確認した設備と重説の記載が一致しているかどうかの照らし合わせです。内見でエアコンや給湯器があっても、重説の設備欄に記載がなければ「残置物(サービス品)」扱いになります。
残置物は故障しても管理会社・家主に修理義務はなく、修理・交換は借主の全額自己負担です。入居後に「壊れたけど対応してもらえない」となる前に、重説の段階で必ず照合してください。
ふたつ目は、内見時に交渉した内容が特約に反映されているかどうかの確認です。「エアコンを設備として追加してほしい」「残置物のエアコンは撤去しておいてほしい」などを事前に交渉していた場合、その内容が重要事項説明または特約条項に明記されているかを確かめましょう。
口頭での約束は書面に残らなければ証拠になりませんので、特約への記載を忘れずに確認してください。
店長の独り言
「内見でエアコンがあったから設備だと思っていた。壊れたら自己負担と言われた」というトラブルは後を絶ちません。また、重要事項説明書の設備欄が100%正しいかどうかも、あとからは検証しようとしても不可能です。
そのため、契約時に細かく確認することが双方にとって重要になるのです。一度契約して入居してしまったら、その後は『記載があるかどうか』が唯一の判断基準になるため、積極的にチェックをする癖をつけておいてください。」
②水道・電気が定額制や管理会社検針の物件は割高になることがあります
重要事項説明では、水道・電気・ガスなどのライフラインがどのように設置されているか、どこに連絡すればよいか、も説明が行われます。ここで、ちょっと押さえておきたいポイントがあります。
水道は自治体の水道局から、電気はエリアを管轄する電力会社から、ガスはガス会社から、検針数値に応じて請求されるのが一般的です。
しかし、水道・電気・ガスの料金が、行政やライフライン会社から直接請求されるのではなく、管理会社経由で請求される物件があります。この場合、実際の使用量よりも割高になることがあるため、注意が必要です。
特に気をつけたいのが水道定額制の物件です。「水道代は月〇〇円定額」と設定されていると、「やった、使い放題だ!」なんて喜ぶ人もいらっしゃるかもしれません。
しかし、その金額には共用部の水道代が含まれているケースがあります。もちろん、家主が損をしない(場合によっては含み益が出る)ように設定されていることがほとんどなので、実際の使用量が少なくても割高になりやすい構造です。電気・ガスが管理会社検針の場合も同じ仕組みが当てはまります。
重説の「供給施設の整備状況」欄で検針方式を確認し、管理会社経由であればその料金体系についても質問してみてください。
③解約予告は「何か月前か」と「日割りか月割りか」の両方を確かめましょう
解約予告期間は「1ヶ月前」が一般的ですが、物件によっては2ヶ月前・3ヶ月前の告知が必要なケースもあります。知らずに1ヶ月前に連絡してしまうと、余分な家賃を払い続けることになりますので、入居時に確認してメモしておくことをおすすめします。
あわせて確認しておきたいのが、退去時の家賃精算が「日割り」か「月割り」かという点です。月割り精算の物件では、月の途中で退去しても1ヶ月分の家賃が丸ごと発生します。
たとえば15日に部屋を明け渡しても、その月の家賃が満額かかる物件があるのです。退去のタイミングを計画するときに大きく影響しますので、予告期間と合わせて必ず押さえておきましょう。
④更新時は家賃以外に数万円かかることがあります——5つの費用を確認してください
更新時の費用は、「家主や管理会社に払う更新料だけ」だと思っている方が多いのですが、実際にはいくつかの費用が同時に発生することがあります。重要事項説明の段階で全項目を確認し、1〜2年後にいくら必要になるかを把握しておくようにしてください。
| 費用の種類 | 支払先 | 目安 |
|---|---|---|
| 更新料 | 家主 | 家賃1か月分が多い(地域差あり) |
| 更新手数料 | 仲介・管理会社 | 家賃0.5〜1か月分 |
| 保証会社更新料 | 保証会社 | 1〜2万円程度(1〜2年ごと) |
| 火災保険料 | 保険会社 | 1〜2万円程度(2年更新が多い) |
| 24時間サービス等 | 管理・保証会社 | 年払いの場合はまとめて請求されます(1~2年ごと) |
これらが重なる更新時期には、家賃以外だけで数万円〜10万円近い出費になることもあります。「更新のタイミングで思ったよりお金がかかった」とならないよう、重要事項説明の段階で各項目の有無・金額・更新頻度を確認しておいてください。
⑤特約条項は退去費用トラブルの震源地です——内容を一字一句確認してください
特約は重説の中で最も重要な項目です。なぜなら、契約に関することの特別な約束が記載されているからです。また、特約は契約時のみならず、退去に至るまでの数年後の約束ごとまで記載されているため、先の話だからと聞き流してしまい、退去時に「聞いていない!」とトラブルに発展することも少なくありません。
まさに、退去費用トラブルの大半はここに原因があると言っても過言ではありません。
さらに言えば、通常の条項とは別に、その物件だけに適用されるルールが書かれている箇所で、見落としが最も多い部分でもあります。
ここでは、特約のなかでも特に注意してチェックしておきたいポイントを解説します。
よくある特約のパターンと確認ポイント
「退去時のクリーニング費用は借主負担」:特約として有効ですが、金額が記載されているかどうかを確かめてください。「実費」とだけ書かれている場合は、退去時に高額請求されるリスクがあります。
「原状回復はガイドラインによらず借主負担」:このような表現がある場合は要注意です。国土交通省の原状回復ガイドラインを排除しようとする、言わば借主にとって一方的に不利な特約は、内容によっては無効になるからです。意味がわからなければその場で担当者に質問してください。
「畳・クロスの張替えは借主負担」:入居年数や経年劣化の考慮が一切ない表現の場合、無効と判断される可能性があります。どのような条件で適用されるかを確認しておきましょう。
物件固有の特約について:ペット可物件では消臭・クリーニングの追加費用、楽器可物件では防音対策費用など、その物件特有のルールが設定されていることがあります。見落としやすい部分ですので、特約全体に目を通してください。
店長の独り言
「退去立会いを1,000件以上経験してきて感じるのは、契約書に記載があるにも関わらず『聞いていない』と主張する人が異常に多いということです。そう言われても、重要事項説明書や賃貸借契約書にサインしている以上は証拠が残っており、譲歩する必要性も理由もないため、無用なトラブルに発展します。
内見時に交渉した内容が特約にきちんと反映されているかどうかも、忘れずに確かめてください。」
⑥ハザードマップと過去の水害履歴は必ず説明を受けてください
2020年8月から、ハザードマップに関する説明が重説での義務事項となりました。水害・土砂災害・津波のリスクエリアに該当するかどうかが説明されますので、内容をしっかり確認してください。
加えて、過去に水害に遭った物件かどうかも説明義務の対象になっています。過去の浸水履歴がある場合は重説で告知されますので、見落とさないようにしましょう。
ただし、近年はハザードマップの「想定外エリア」でも水害が発生するケースが増えています。重説での確認はもちろん大切ですが、入居後も日ごろから防災意識を持って備えておくことが重要です。
なお、余談ですが、水害は河川の近くのみならず都心や駅前でも頻繁に発生しますし、水が引いてからも電気関係にダメージがあることが多く、即時の復旧に至らないケースが増加しています。
特に、お子様がいらっしゃる子育て世帯などでは水も電気も使えない状態が続くことは、健康上の被害も懸念されます。天災は家主も管理会社も防ぐことはできません。長期の避難生活を余儀なくされることもありますので、日ごろから防災への備えをしておくことをおススメします。
具体的には、避難場所を事前に確認しておくことのほか、以下のような防災グッズを備蓄しておくことが考えられます。
⑦管理委託先の連絡先は入居したらすぐに携帯へ登録しておきましょう
重説には管理委託先の連絡先が記載されていますが、記載されているのは通常時の連絡先のみや代表番号のみです。夜間対応の緊急連絡先や、設備故障時の駆けつけサービスの番号は別になっていることがほとんどです。
入居後すぐにすべての連絡先を整理して、スマートフォンに登録しておくことをおすすめします。深夜に水漏れが起きたときに番号を探す余裕はありませんし、焦った状態では間違った窓口に連絡してしまうこともあります。通常時・夜間・緊急の3パターンをあらかじめ整理しておくと、いざというときに落ち着いて動けます。
店長の独り言
「どこに連絡すればいいかわからず右往左往するケースは、実際のところ非常に多く見受けられます。実際に賃貸仲介会社に問い合わせをいただくことも少なくありません。
重要事項説明の段階で『設備が壊れたときはどこに連絡すればいいですか?夜間はどうなりますか?』と確認するだけで、入居後にバタバタすることもなくなるでしょう。
そもそも、管理会社の連絡先が知りたいときというのは、急いで対応が必要なときです。つまり、『連絡しなければならないのに連絡先がわからん』では、事態は悪化の一途をたどることは明白です。
やはり事前の準備は絶対にしておくべきでしょう。」
⑧貸主と所有者の関係を確認してください——管理形態によって入居後の対応速度が変わります
重要事項説明書には登記上の所有者と貸主が記載されています。一般的には同一人物や同一法人ですが、異なるケースもあります。この違い、実は賃貸物件を選ぶうえでちょっとだけ知っておきたいポイントなんです。
パターン別の実態
①所有者=貸主+管理会社が入っているパターン(最も一般的)
設備故障などのリクエストが入ると、「入居者→管理会社→家主」というプロセスを経て実際の修理や交換対応に話が進みます。つまり、登場人物が多く、承認プロセスも複数存在しているため、時間がかかることがあり得る、というリスクがあります。
ただし賃貸物件のプロである管理会社が介在しているため、対応の品質は安定している、というメリットもちゃんと存在しています。
②サブリース(転貸借)のパターン
管理会社が所有者から物件を借り上げて入居者に転貸する形態です。重要事項説明書の貸主欄に所有者と異なる管理会社名が記載され、サブリースである旨が明記されます。
管理会社内で即時決済・対応が完結するため、本来はスピーディに動けます。ただし担当者・管理会社の品質によるところが大きく、良い会社なら頼もしい反面、対応の質が低いサブリース会社だとトラブルが長引くリスクもあります。
③所有者=貸主の自主管理パターン
管理会社へ管理業務を委託せず、家主が直接管理する形態です。
表現に語弊があるかもしれませんが、家主の独自ルールと判断で運営されることが多く、対応品質は家主個人の能力・性格に大きく左右されます。
そもそも、一個人が24時間の緊急対応に備えることには限界がありますし、専門知識を持つ管理会社のサポートも受けられません。管理会社がきちんと入っている物件の方が、入居者にとっては安心できる環境が整いやすいといえます。
店長の独り言
「重要事項説明書でよく聞かれるポイントに、『抵当権が設定されているから競売になったら出ていかなければいけないのでは』というものがありますが実際にはほぼ問題ありません。
そもそも、賃貸物件が競売になる可能性は極めて低いからです。なぜなら、賃貸物件は家賃収入が毎月必ず発生するため、金融機関に対する返済の原資を調達しやすい構造だからです。
加えt、万が一にも競売で新しい所有者になったとて、入居者という『家賃収入を生む資産』を排除する合理的な理由はないからです。
それよりも、管理形態と担当者の品質の方が日常生活にはるかに直結します。重要事項説明書で管理会社名と連絡先を確認し、どんな会社かを把握しておく方がずっと実用的です。」
まとめ——重説は受け身ではなく、能動的に確認する場です
今回は、賃貸契約における重要事項説明の中身について解説しました。
まず覚えておいていただきたいこととして、重要事項説明は、説明をただ聞くだけの場ではない、ということです。わからないことは繰り返しわかるまで聞き、物件の現況や聞いていた話と違いがあるときは、必ずサインをせずに確認をして、納得の上契約を進めるようにしてください。
特に今回説明した、設備の記載照合・インフラ検針の方式・解約予告期間と精算方法・更新費用の全体像・特約条項・ハザードマップ・管理形態——この8つのポイントを意識して臨むだけで、入居後のトラブルと想定外の出費を大幅に減らすことができます。
わからない言葉や気になる項目があれば、その場で遠慮なく質問してください。それがこの機会を最大限に活かす正しい使い方です。
📌 退去費用・原状回復についてはこちら
特約条項で定められた原状回復の範囲が実際の退去でどう影響するか、詳しくはこちらで解説しています。
📌 設備故障の連絡先についてはこちら
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この記事を書いた人:不動産会社店長
業界歴20年以上の現役店長。現場の第一線で培った知見を活かし、大手不動産メディアにて累計50本以上の専門記事を執筆中。 業界の表も裏も知り尽くした「不動産のプロ」として、不動産会社の不都合な真実を伝えます。
不動産・建築の専門家として、以下の大手メディアにて2026年現在も継続的に執筆・監修を行っています。
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