家具家電付きの賃貸物件は本当にお得なのか?現役店長が「初期費用ゼロ神話」の正体と後悔しない選び方を解説

「家具家電付きって初期費用が安いんですよね?」と聞かれることがあります。たしかに、家電を一から買い揃えずに済むのは、忙しい転勤族や初めての一人暮らしにとって魅力的な話です。

でも、20年以上この業界にいると、「思っていたより家賃が高かった」「家電が壊れたのに直してもらえなかった」という声も、けっして珍しくはありません。

家具家電付き賃貸は、選ぶ人と選び方によって、大きな節約にも余計な出費にもなりえます。

この記事では、現役店長として実際に現場で見てきた視点から、家具家電付き賃貸物件のメリットとデメリットをお伝えしながら、契約前に知っておくべき実務ポイントをひとつずつ解説していきます。

目次

家具家電付き賃貸とは何か

家具や家電があらかじめ備え付けられた賃貸物件のことで、荷物をほとんど持ち込まなくても入居当日から生活が始められるのが最大の特徴です。一人暮らし向けのワンルームや1K・1DKに多く、単身赴任者や学生、転勤が多い方など、短期間の居住を前提とした物件が中心になります。

ただし「家具家電付き」という表現は非常に幅が広く、備え付けられているものの種類やグレードは物件によってかなり差があることも事実です。

同じ「付き」でも最低限の家電だけの物件もあれば、ソファや食器棚まで揃った物件もありますので、契約前に必ず設備一覧を確認しておきましょう。

標準的に揃っているもの

「家具家電付き」という言葉に法的な定義があるわけではないため、何が含まれているかは物件によってバラつきがあります。

一般的に多く見られる構成としては、家具類ではベッドやテーブル・椅子・カーテン・照明器具、家電類ではエアコン・冷蔵庫・洗濯機・電子レンジ・テレビとテレビ台が揃っていれば、フルセットに近い物件といえます。

ただし「洗濯機はない」「テレビは含まれない」という物件も少なくありません。内見前に設備一覧を取り寄せて確認しておくことで、必要なものが揃っているかどうかを事前に把握できます。

マンスリーマンションとは何が違うのか

混同されやすいのがマンスリーマンションですが、こちらは「月単位で契約できる短期滞在型」の物件です。

家具家電付きである点は共通しますが、マンスリーは水道光熱費やWi-Fi代が家賃に含まれていることが多く、1ヶ月あたりのコストはかなり割高になります。ホテルと通常の賃貸の中間のような位置付けで、1〜2ヶ月の超短期滞在ならマンスリー、半年以上住む予定があるなら一般的な家具家電付き賃貸の方がトータルで安くなるケースがほとんどです。

どちらが合っているかは、居住予定期間と利用目的によって変わってきます。

家具家電付き賃貸の3つのメリット

「スタートの負担を一気に下げられる」という点が、家具家電付き賃貸の本質的な価値です。初期費用が抑えられる、すぐ生活できる、退去が楽になるという3つのメリットはいずれもその延長線上にあります。よく知られた話ではありますが、ここでは金額のイメージも交えながら、それぞれ少し具体的に整理してみます。

初期費用と引越し費用をまとめて抑えられる

賃貸の初期費用は、敷金・礼金・仲介手数料・火災保険料などを合計すると家賃の4〜5ヶ月分になることが珍しくありません。これに家電一式を新品で揃えると、エアコン・冷蔵庫・洗濯機・電子レンジだけで20〜30万円近くかかります。ベッドや照明などの家具まで加えると、引越し初日までに50万円超の出費になるケースも十分にありえます。

家具家電付き賃貸を選べば、この家具家電代が丸ごと不要になります。また、大型家具や家電を搬入する必要がなくなるため、引越し費用も大幅に下がるでしょう。宅配便と自分の荷物だけで引越しが完結するケースもあるほどです。

初期費用の全体像については、賃貸の初期費用はいくら?内訳・相場・誰に払うかを現役店長が本音で解説もあわせてご覧ください。

入居当日から生活が完結する

通常の賃貸では、家電の購入・配送・設置が完了するまでに数日〜1週間かかることも珍しくありません。その間は布団も揃っていない、自炊もできない、という状況が普通に起こります。

家具家電付き賃貸であれば、鍵を受け取ったその日から炊事も洗濯も眠ることもできます。転勤や急な引越しで準備期間がほとんど取れない方、仕事が忙しくて家電を選ぶ余裕がない方にとって、このメリットは特に大きくなるでしょう。

退去時の処分費・搬出費もゼロになる

引越しには「入居時」だけでなく「退去時」にもコストがかかりますが、これらの引っ越しコストを軽減させることが可能です。なぜなら、家具家電付き賃貸物件では、家具や家電の搬出費用のほか、家電の処分費用などがかからないからです。

大型家電を処分するときはリサイクル料金が別途発生しますし、搬出作業費も合わせると意外と高くつきます。家具家電付き賃貸なら、退去時に持ち出すものがほぼないため、出ていくときの引越し費用も最小限で済みます。

転勤や転職が多く数年おきに引越しをくり返す方にとって、この「退去時の軽さ」は積み重なると大きな差になるでしょう。

店長の独り言

「退去における管理会社の悩み事として、『ゴミ庫に粗大ごみを大量に捨てられてしまう』というものがあります。これ、実は結構切実なお話でして、ゴミ庫はいっぱいになって他の人が捨てられなくなりますし、分別もされていないので収集業者も持って行ってくれない。

そりゃあもう入居者からのクレームが鳴りやまない、という最悪な結末を迎えます。

くれぐれも、退去のときは、急にバタバタとゴミを捨てることのないよう、事前に準備をして進めてください。」

知っておきたい4つのデメリット

メリットは直感的に分かりやすいのですが、デメリットの方は入居後に気づいて後悔するパターンが多いです。特に「住む期間」と「どの家電が必要か」によってコストの評価がまるで変わりますので、ここをしっかり整理してから判断してください。

家賃が割高になる——何ヶ月で逆転するか

家具家電付き賃貸は、同条件の物件と比べて月1〜1.5万円ほど家賃が高く設定されているケースが多いです。仮に月1万円の上乗せがあるとすると、1年で12万円、2年で24万円の差になります。

家電一式を新品で揃えた場合の費用を25万円と仮定すると、単純計算での損益分岐点は約25ヶ月(2年強)です。それ以上住むなら、自分で揃えた方がトータルで安くなる計算になります。

ただしこれはあくまで目安で、「どの家電が実際に必要か」によって金額はかなり変わります。手持ちの家電がすでにある方であれば追加費用はさらに少なくなるため、損益分岐点はもっと早まります。

自分好みにできない・レイアウトが固定される

備え付けの家具は、基本的に勝手に動かしたり処分したりすることができません。「ベッドはいらない、床で寝たい」「デスクを壁際に寄せたい」「冷蔵庫の位置が動線に合わない」といった要望も、原則として通りません。

インテリアにこだわりたい方や、自分の生活動線に合わせて部屋を整えたい方には、日常的なストレスの原因になりやすいポイントです。

中古品であることへの心理的なハードル——ただしレンタル品なら別の話

備え付けの家具家電は基本的に中古品です。前の入居者が使ったベッドや洗濯機に抵抗を感じる方には、かなり心理的なハードルは高いでしょう。ただし知っておいていただきたいのが、「オーナーが自費で購入・設置した備品」と「家具家電レンタルサービスを利用している物件」とでは、状態がまったく異なるという点です。

レンタルサービスを使っている物件は、交換のたびに専門業者によるクリーニングが施されており、ほぼ新品同然の状態で届くことも珍しくありません。一方、オーナーが個人で購入・設置した備品は、ハウスクリーニング後でも使用感や汚れが残っていることがあります。

備品の全体的なきれいさや統一感が、どちらのパターンかを判断するひとつのヒントになります(内見での見極め方は後述します)。

古い家電は省エネ性能が低く、電気代にじわじわ影響する

見落とされがちなポイントですが、製造から年数が経った家電は現行モデルと比べて省エネ性能が大きく落ちています。特に冷蔵庫とエアコンは、10年前のモデルと現行モデルとでは年間の電気代に数千円から1万円以上の差が出ることもあります。

「家賃は抑えられているはずなのに、毎月の電気代が妙に高い」という状況になっても、家電の型番を確認しない限り原因に気づきにくいです。内見時に製造年を確認しておくだけで、こうした見えにくいコストを事前に把握できます。

「設備」と「残置物」の違いを正しく理解する

家具家電付き物件に関しては「トラブルに注意」と書かれている記事を目にしますが、実際には契約書と重要事項説明書を正しく読めば、大きなトラブルになることはほとんどありません。なぜなら、契約書類にはどの家具家電が設備で、どの家具家電が残置物(サービス設置品)かが、明確に記載されているからです。

ただ、「設備」と「残置物」という区別を知らないまま入居すると、いざ家電が壊れたときに「誰が修理費を出すのか」で話がかみ合わなくなります。怖い話ではなく、正しく理解しておけば防げる話です。

故障時の費用負担が、設備と残置物で大きく変わる

「設備」とは、オーナーが正式に提供している備品のことです。通常の使用による故障や経年劣化であれば、修理・交換費用はオーナー負担になります。

「残置物(サービス設置品)」とは、前の入居者が退去時に置いていった私物のことです。使えるうちはそのまま使っていい、という扱いですが、壊れてもオーナーは対応してくれません。自費で修理するか、撤去して自分で用意するかのどちらかになります。外見だけでは設備か残置物かを判断できないことがありますので、判断の根拠になるのが重要事項説明書の「設備一覧」です。

重要事項説明書の設備一覧の読み方

重要事項説明書には、物件の「設備の有無」を示す欄があります。ここで「有」または「○」と記載されているものが、オーナーの正式な設備です。「無」または「×」になっているにもかかわらず、部屋の中に何かが置いてある場合、それは残置物である可能性が高いです。

内見時または契約説明時に「この家電は設備ですか、それとも残置物ですか」と確認することは、決して失礼な質問ではありません。現場では当然の確認事項ですので、遠慮なく聞いてください。

重要事項説明書の全体的な確認ポイントについては、賃貸の重要事項説明で見落としやすい8つのポイントで詳しく解説していますので、こちらもあわせてご参照ください。

店長の独り言

「家具家電に限った話ではありませんが、壊れたからという連絡を毎日何件も管理会社は受け取っています。連絡を受けると、管理会社の担当者は壊れたものが設備なのかどうかを契約書類で確認します。

そのため、『申し訳ありませんが、それは残置物ですので修理や交換はご入居者様のご負担でお願いします。』と丁重にお断りするしかないのです。

生活に密接するものほど、急な対応が必要となり、出費も嵩みます。

細かい話ですが、重要事項説明はきちんと頭に入れるようにしておいてください。」

内見で確認しておきたい5つのポイント

家具家電付き物件の内見は、通常の物件より確認事項が多くなります。間取りや日当たりだけを見て終わりにすると、入居後に「こんなはずじゃなかった」となりやすい物件タイプです。以下の5点を内見時のチェックリストとして活用してください。

内見全体の流れや確認ポイントについては、賃貸の内見チェックリスト|現役店長が教える管理品質の見抜き方と退去費用を防ぐ確認箇所もあわせてご覧いただくと、より準備が整います。

①オーナー購入品かレンタル品かを見極める

前述の通り、家具家電付き物件には「オーナーが自費で購入・設置した備品」と「家具家電レンタルサービスを利用している物件」の2種類があります。

レンタル品は交換のたびに専門業者がクリーニングを施しており、状態は非常にきれいです。担当者に「この家具家電はレンタルサービスのものですか、それともオーナーが購入されたものですか」と直接聞いてしまうのが最も確実な方法です。

備品の状態が全体的にきれいで統一感があればレンタル品の可能性が高く、メーカーや色がバラバラで使用感がある場合はオーナー購入品である可能性が高いと判断できます。

②全家電の動作確認をその場で行う

室内が通電されていれば、内見時に家電の電源を入れて動作確認をしてください。

エアコン・冷蔵庫・洗濯機・電子レンジ、全部するのが理想的です。「動かなかった」「異音がした」という問題を入居前に発見できれば、修理・交換をオーナー負担で対応してもらえます。

入居後に発見すると「入居前から壊れていたのか、入居後に壊れたのか」という水掛け論になりやすく、証明が難しくなることがあります。内見でその場で確認しておくことが、後のトラブルを防ぐ最も確実な方法です。

③家電の型番・製造年を確認する

家電の側面や背面には型番のシールが貼られています。型番をスマートフォンで検索すれば、製造年を調べることができます。

目安として、製造から10年以上経過している家電は、省エネ性能の低下と故障リスクの両面で注意が必要です。特に冷蔵庫とエアコンは電気代への影響が大きいため、優先的に確認しておきましょう。

「古い家電込みで割高な家賃を払い続ける」という状況を避けるための、大切な確認事項です。

④不要な家具の撤去・変更を交渉する

「ベッドはいらない」「デスクはもっと大きいものがほしい」という場合、撤去や交換の交渉は可能です。ただし必ずしも通るわけではなく、設備として重要事項説明書に記載されている場合はオーナーの判断次第になります。

入居前に相談するのが原則で、入居後の無断撤去はトラブルの原因になりますので注意してください。また「家具家電なし」への変更交渉も物件によっては可能で、その場合は家賃の値下げも並行してお願いしてみるのがよいでしょう。

⑤退去時の家電清掃リスクを頭に入れておく

通常のハウスクリーニングは床・壁・水回りが対象ですが、家具家電付き物件では、備品として提供された家電を著しく汚れた状態で返却した場合に、清掃費用を追加で請求されることがあります。

冷蔵庫の庫内・電子レンジの内部・洗濯機の槽など、日常的に目が行きにくい場所の汚れが退去時に問題になるケースがあります。

退去費用の全体的な考え方については、賃貸の退去費用|何を請求されて何を払わなくていいか、現役店長が全部解説を事前に読んでおくと、退去時に慌てずに済みます。

家具家電付き賃貸が向いている人・向いていない人

家具家電付きの賃貸物件は、一体どのような人に向いているのでしょうか。

「短期なら得、長期なら損」というざっくりとした言い方は大枠では正しいのですが、現場では「どの家電が必要か」「不足分をどう補うか」という視点もセットで考えることが重要です。

たとえば、すでにエアコンと洗濯機は持っている、あとは冷蔵庫と電子レンジだけ揃えれば十分、という方が家具家電フルセット付きの物件に入居するのは、なんだかお得感が薄いですよね。

必要なものだけを自分で揃えれば、その分安く済む場合があります。どの家電が必要かを事前に整理した上で、初期費用・月々の家賃・居住予定期間を総合して判断するのが正しいアプローチです。

向いている人

居住期間が1〜2年以内の見込みがある方は、初期費用の節約効果が大きくなります。単身赴任・進学・短期プロジェクトなど、あらかじめ期間が限定されているケースでは特にメリットが際立ちます。

急な転勤や引越しで準備期間がほとんど取れない方にも、家具家電付きは向いています。家電の選定・購入・配送を待つ時間的余裕がない状況では、入居当日から生活できる点は大きな価値があります。

一からすべての家具家電を揃える必要がある方、つまり手持ちの家電が何もない状態で新生活をスタートする方も、初期費用の節約効果を最大限に受けられます。インテリアにこだわりがなく、中古品への抵抗が少ない方であれば、デメリットのほとんどが気にならなくなります。

向いていない人

2〜3年以上住む予定がある方は、毎月の家賃上乗せ分が積み重なるため、自分で揃えた方がトータルで安くなる可能性が高いです。

インテリアや家電のスペックにこだわりがある方は、レイアウトの自由度がなく選択肢も限られてしまいます。

すでに使い慣れた家電を一式持っている方も向いていません。手持ちの家電があるにもかかわらず、備品の家賃分まで払い続けるのは合理的ではありませんので、「家具家電なし」への変更交渉か、別の物件を検討することをお勧めします。

店長の独り言

「家具家電がついていなくても、実は家具家電のレンタルサービスを利用することで、初期費用を抑えつつ、家具家電を調達することが可能です。

これは、賃貸借契約とは別途、入居する人が契約する必要がありますが、好きな家具家電を選ぶことができますし、壊れたら電話一本で交換対応してくれることがほとんどです。

物件は気に入ったけど、家具家電のことで悩んでいる、という人は、家具家電のレンタルサービスの利用を検討してみてください。」

家具家電のレンタルサービスはいくつかありますが、迷ったら業界最大手の『かして!どっとこむ』をチェックしてみてください。

プロの視点から見て、ここが選ばれる理由はシンプルに3つです。

  • 圧倒的な安さ:家電4点セットが1日単位で計算すると数十円〜。
  • 維持費ゼロ:故障時の修理はもちろん、消耗品(蛍光灯など)の交換も無料。
  • 退去が楽:返却するだけなので、面倒な「家電リサイクル料」もかかりません。

浮いた初期費用を「もう1ランク上の物件」への引っ越し代に回す、というのも賢い選択ですよ。

家具家電付きの賃貸物件で、引っ越し費用を抑えたお部屋探しをしよう

家具家電付き賃貸は、「スタートの負担を下げる」という目的に対しては、非常に理にかなった選択肢です。ただし、住む期間・必要な家電の種類・物件の管理状態によって、メリットがそのままデメリットに変わることもあります。

契約前に押さえておくべきことは、大きく3点です。「設備と残置物の区別を契約書で確認すること」「家電の状態と製造年を内見で確認すること」「自分の居住予定期間と必要な家電を整理した上でコストを計算すること」。この3点を確認しておくだけで、入居後に「思っていたのと違った」となるリスクは大幅に下がります。

賃貸選びの全体的な流れについては、いい部屋の見つけ方は「問診」が9割。20年のプロが教える、営業マンを味方に変える部屋探しの新常識もあわせてご覧いただければ、より納得感のある物件選びの参考になると思います。

この記事を書いた人:不動産会社店長

業界歴20年以上の現役店長。現場の第一線で培った知見を活かし、大手不動産メディアにて累計50本以上の専門記事を執筆中。 業界の表も裏も知り尽くした「不動産のプロ」として、不動産会社の不都合な真実を伝えます。

不動産・建築の専門家として、以下の大手メディアにて2026年現在も継続的に執筆・監修を行っています。

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