
賃貸物件を探していると、必ずといっていいほど目に入るのが「構造」の項目です。木造、軽量鉄骨造、RC造など、並んでいる建物の構造を見て、「どれが一番いいんだろう」と思った経験がある方は多いのではないでしょうか。
構造を調べている方の多くは、「防音が心配」か「耐震性が不安」、あるいはその両方を気にされてのことだと思います。
ただ、先にひとつお伝えしておくと、「構造名さえ確認すれば安心」という考え方は、現場を知る立場からすると少し危うさを感じます。その理由も含めて、順番に説明していきます。
ぜひ最後までお読みください。
賃貸物件の構造は4種類、まず整理する
賃貸物件の構造は、大きく分けると木造・軽量鉄骨造・重量鉄骨造・RC造(鉄筋コンクリート造)の4種類です。物件の検索サイトではSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)が5つ目として登場することもありますが、これは高層タワーマンションに使われる構造で、一般的な賃貸の部屋選びではほぼ選択肢に入りません。「そういうものもある」と知っておく程度で十分です。
それぞれの構造と、賃貸でよく見かける物件のタイプを整理すると、次のようになります。
木造(W造)は、柱や梁などの主要な構造部分に木材を使った建物です。2〜3階建てのアパートに多く、賃貸市場では最も数が多い構造です。建築コストが比較的安いため、家賃が抑えられやすいのが特徴です。
軽量鉄骨造(S造・軽鉄)は、厚さ6mm未満の薄い鋼材を骨組みに使う構造です。2〜3階建てのアパートに採用されることが多く、工場で部材を製造して現場で組み立てるプレハブ工法が主流です。家賃帯は木造とほぼ同水準のことが多いです。
重量鉄骨造(S造・重鉄)は、厚さ6mm以上の鋼材を使う構造で、3階建て以上の物件に採用されます。柱と梁をしっかり組んだラーメン構造が多く、開放的な間取りを実現しやすいのが特徴です。
RC造(鉄筋コンクリート造)は、鉄筋を組んだ枠にコンクリートを流し込んで造る構造です。マンションタイプの物件に多く、4種類の中では最も建築コストがかかるため、家賃も高めに設定されやすいです。
店長の独り言
「賃貸の構造を『3匹の子豚』で例えるなら、ワラの家は木造、木の家は鉄骨、レンガの家がRC(鉄筋コンクリート)造です。
物語のとおり、RC造は耐震・耐火性に優れた『最強のシェルター』として君臨し、家賃もそのスペックに見合って高額に設定されます。対して木造や鉄骨は、通気性やコストに優れており、経済合理性の高い選択と言えるでしょう。
そう考えると、誰もが『予算が許すならレンガ(RC)を選べば安心』と信じて疑いません。
しかし、現場を20年見てきた私から言わせれば、最強のはずのレンガの家にも、実は物語には描かれないちょっとした『落とし穴』が隠されているのです。」
耐震性は構造の規模に比例する。ただし、旧耐震かどうかの方がよほど重要
「木造よりRC造の方が地震に強い」というのは、大きな方向性としては正しいです。木造<軽量鉄骨<重量鉄骨<RCと、建てられる建物の規模が大きくなるにつれて基礎躯体も頑丈になっていくため、耐震性能に差があることは事実です。
ただし、現場の経験から言わせていただくと、構造の種類よりもはるかに重要な確認ポイントがあります。それが「旧耐震基準の物件かどうか」です。
日本では1981年6月1日を境に耐震基準が大幅に改正されました。この日以降に建築確認申請が受理された物件が「新耐震基準」、それ以前の物件が「旧耐震基準」と呼ばれます。旧耐震基準のRC造マンションと、新耐震基準の木造アパートを比べた場合、必ずしもRC造の方が地震に強いとは言い切れません。
物件の築年数だけでなく、「建築確認申請がいつ受理されたか」まで確認できると理想的です。物件情報の「建築確認日」や「確認済証」で確認できますが、難しければ不動産会社に「旧耐震ですか、新耐震ですか」と直接聞いてみてください。
なお、旧耐震物件の詳しい見極め方については、こちらの記事で詳しく解説しています。 →賃貸の築年数と旧耐震は本当に気にすべきか?現役店長が「築年数信仰」の正体と後悔しない物件の見極め方を解説
耐火性についても同様のことが言えます。「木造は火事が怖い」というイメージをお持ちの方は多いですが、現在の木造は準耐火構造の基準が整備されており、昔の木造とは別物です。
一方でRC造の物件でも、古い建物ではスプリンクラーの設備がなかったり、避難経路が現代の基準を満たしていないケースがあります。
「材質が木かコンクリートか」よりも、「現行の消防・耐震基準をきちんとクリアしているか」を確認する方が実質的な安全性につながります。
店長の独り言
「以前、別の記事でも解説しましたが、消防設備点検を実施していない物件がまだまだ世間には約半数も存在しています。
簡単に言えば、いざ火災が起こったときに、消火器が使えない、火災報知器がならない、というリスクを抱えている物件に50%の確率で遭遇する、ということです。
そう考えれば、構造を知ることも重要ですが、もっと重要なことがありそうな気がしますよね。」
「RC造なら防音は安心」は、半分しか正しくない
防音性について、「木造<軽量鉄骨<RC造」という序列はぼんやりとした傾向として存在します。ただし、これが「RC造なら防音は問題ない」という意味に読み替えられると、現場の実態とはだいぶずれてしまいます。
理由は二つあります。
一つ目は、構造名と壁の仕様は別の話だからです。軽量鉄骨造の物件の界壁(隣戸との壁)は、骨組みが鉄骨であっても、壁の中身は木材の軸組に石膏ボードを貼ったものがほとんどです。セキスイハイムのようなユニット工法でも、壁の構成自体は変わりません。「軽量鉄骨だから木造より静かなはず」という期待は、壁の仕様を確認せずには成り立ちません。
二つ目は、RC造にも防音性能が低い壁仕様が存在するからです。なかでも注意が必要なのがGL工法(GLボンド工法)と呼ばれる仕上げです。これはコンクリートの躯体に石膏ボードをボンドで直接貼り付ける工法で、コストを抑えられる反面、ボンドで止めた部分とそうでない部分の間に空気の層が生まれます。
この空洞が太鼓のような共鳴を生み、隣室の生活音が思いのほか響くことがあります。RC造の物件でも「思ったより音が聞こえる」という感想が出てくる背景のひとつが、この工法です。
内見で界壁を手の甲で軽く叩いたときに「コンコン」と軽い音が返ってくる場合は、GL工法や空洞のある壁である可能性があります。ただし、素人が壁を叩いてわかるのは「中が空洞かどうかの雰囲気」程度で、「隣に音がどれだけ伝わるか」まではわかりません。
確認したいなら、担当者に「この物件の界壁の仕様を教えてもらえますか」と直接聞く方が確実です。壁の仕様を具体的に説明できる担当者かどうかは、物件知識の深さを測るひとつの指標にもなります。
現場で多い騒音クレームは、構造の問題ではない
20年以上この仕事をしていて、騒音に関するクレームは数えきれないほど受けてきました。その経験から言えることがあります。実際のクレームで多いのは、次のようなケースです。
- 玄関ドアをバタンと閉める音
- 子どもや人が走る足音・ドスドスという振動
- 深夜の話し声やテレビの音
これらのうち、ドアの音については、建付けが悪くて閉めると大きな音が出るドアのまま放置されているケースが少なくありません。入居直後に建付けの不具合を管理会社に申告しておくことは、騒音トラブルの自己防衛としても意味があります。後から「音がうるさい」とクレームが来たときに、「ドアの不具合を報告してあるのに対応されていない」という事実が手元にあると、立場が変わってきます。
足音については、どれだけ構造が頑丈でも、建物が振動として伝える性質は変わりません。RCのマンションであっても上の階の子どもの足音が響く、というのは珍しくない話です。子どもがいるご家庭であれば、ラグやジョイントマットを敷くことが現実的な対策になります。
深夜の生活音については、構造の優劣以前に、人としての配慮の問題です。木造でもRCでも、深夜に大きな音を出し続ければクレームになります。
正直に申し上げると、騒音トラブルが起きるかどうかは「隣人がどんな人か」という要素が非常に大きいです。RC造を選んだからといってトラブルを完全に避けられるわけではなく、木造でもまったく問題なく過ごせるケースはたくさんあります。
店長の独り言
「隣人ガチャ、と言ってしまうとそれまでですが、実際に音に対して過剰に反応する人がいらっしゃることは事実です。もちろん、音を過剰に出していることに気づかない人もそれはそれで問題ですが。
このご時世、隣人がどのような人かなどは、ほとんどのケースで教えてはくれません、個人情報の壁は思ったよりも分厚く高いものです。
そのため、少なくとも昼間と夕方以降の2回以上は現地を内見する、というのは良い方法だと思います。
たったそれだけのことをするだけで、音を出す人、を回避できる可能性は上がります。」
賃貸物件で音が気になる方へ、プロからのアドバイス
「どうしても音が気になる」という方に、担当者として正直にお伝えしていることがあります。それは、「構造のランクを上げるよりも、物件の形態を変えた方が根本的な解決になる」ということです。
隣戸や上下階との界壁・界床をなくすことが、防音面では最も効果的です。つまり、戸建て賃貸や、隣接する住戸がない物件を探すことが本質的な解決策です。予算の都合でRC造のマンションを選ぶなら、最上階や角部屋・1階を選んで接する住戸の数を減らす、という方法も有効です。
戸建て賃貸の詳しい選び方については、こちらも参考にしてください。 → 賃貸の戸建ては本当にいいのか?現役店長が「3種類の違い」から定期借家・退去費用・内見のツボまで本音で解説
入居後にできることとしては、音が気になる界壁側に大型の本棚や収納家具を配置することが有効です。家具が吸音材の役割を果たし、生活音の伝わりを和らげる効果があります。これはRC造でも木造でも同じように使える工夫です。
まとめ:物件の構造は大切な要素、でもこだわりすぎるのも良くない
構造による家賃差は、同じエリア・同じ広さで比べると、木造・軽量鉄骨とRC造の間に1〜3万円程度の差が出ることがあります。ただしこれはあくまで傾向で、立地や設備、築年数によって逆転することも珍しくありません。
構造を選ぶときの整理として、次のような考え方が実用的だと思います。
防音性や耐震性に強いこだわりがないのであれば、木造や軽量鉄骨の物件で家賃を抑え、浮いた分を引越し費用や家具・家電に充てる方が生活の満足度は上がりやすいです。一方で、音の問題が心配という方は、構造名だけで判断するのではなく、上で触れたような壁の仕様や、隣接する住戸の数という観点で物件を絞り込んでみてください。
また、合わせて消防設備点検などの共用部の管理状態についても構造と合わせてチェックしておくとよいでしょう。
「どの構造が正解か」という問いよりも、「その物件が自分の生活にどう合うか」を確認する方が、後悔のない部屋選びに近づきます。構造は判断材料のひとつに過ぎません。
この記事を書いた人:不動産会社店長
業界歴20年以上の現役店長。現場の第一線で培った知見を活かし、大手不動産メディアにて累計50本以上の専門記事を執筆中。 業界の表も裏も知り尽くした「不動産のプロ」として、不動産会社の不都合な真実を伝えます。
不動産・建築の専門家として、以下の大手メディアにて2026年現在も継続的に執筆・監修を行っています。
- 東急リバブル(LIVABLE タイムズ):法人・投資家向けのCRE戦略や空き家対策記事を20本以上寄稿
- ハウスコム(暮らしエイト):宅建士の視点から賃貸トラブル解決法を30本以上執筆
- CHINTAI(CHINTAI情報局):現場を知る店長としてお悩み解決記事を連載中