賃貸のウォシュレット(温水洗浄便座)は本当に必要か?現役店長が「後付けの現実」と清潔感問題・故障リスクを本音で解説

「ウォシュレット付き」の物件を条件に入れて探している、というよりも、もはやウォシュレットは絶対についているものだと思い込んでいる人も多いのではないでしょうか。そのため、気に入った物件に付いていなかったとき「じゃあやめておくか」もしくは「後付けできないかな?」と考えた経験がある方もいるのではないでしょうか。

不動産業界で20年近く現場を見てきた立場から先にお伝えすると、後付けの許可はほぼ確実に下ります、ご安心ください。ただし「許可が出る」ことと「物理的に設置できる」ことは別問題で、確認すべきことがいくつかあります。

この記事では、ウォシュレット付き物件を選ぶときの清潔感問題・故障時の費用負担・後付けの現実・引っ越し時の出口戦略まで、現場の実態をもとに全部解説します。

ぜひ最後までお読みください。


目次

ウォシュレット付き物件を選ぶ前に知っておくべきこと

まずは言葉の整理から。「ウォシュレット」はTOTOの登録商標です。他メーカーが製造する同種の設備は「シャワートイレ」「温水洗浄便座」と呼ばれますが、この記事では一般的に広く使われている「ウォシュレット」という言葉で統一します。

ウォシュレットはここ10年で、賃貸物件における「あれば嬉しい設備」から「なければ困る設備」へと変わりつつあります。以前はサービス設置品(付帯設備外)として扱われるケースも多くありましたが、最近は設備として管理するオーナーが増えています。毎日使う生活直結型の設備として、インフラに近い位置づけになってきた、というのが現場の実感です。

この記事は「ウォシュレット付き物件を選びたい人」と「今の物件に後付けしたい人」の両方に向けて書いています。どちらの立場から読んでいただいても、判断に必要な情報が揃うように構成していますので、賃貸物件でウォシュレットのことでお悩みの人はこれ一本でほぼ解決できます。


最初から付いている物件の「清潔感問題」

ウォシュレット付き物件を選ぶとき、意外と見落とされがちなのが清潔感の問題です。

ウォシュレットは前の入居者が実際に使っていた設備です。ハウスクリーニングが入るとはいうものの、ノズルの先端・便座の裏面・ノズル格納部の細部まで新品同様に仕上げてくれているとはいえ、冷静に考えると、ちょっと抵抗感がある人、実は多くないですか?

例えるならコンビニのトイレです。ちょっと掃除が行き届いていなかったり、黄ばみや黒ずみが見られたら、『このコンビニ、やる気あんのかよ?』みたいな気になりませんか?なんならこちらがトイレをお借りしている立場であるにも関わらず、上から目線で評価しちゃう。でもそれがトイレの清潔感問題の本質なのです。

前の入居者が残したウォシュレットが「サービス設置品」として扱われている物件の場合、「人のモノ」という感覚がより強くなる傾向があります。サービス品扱いは目視でも分かりやすく(年式が古い・型番シールが前入居者時代のまま)、こうした設備に心理的な抵抗を感じる方はたくさんいらっしゃるでしょう。

そんな、ウォシュレットの清潔感問題を解決する方法を整理しておきます。

① ノズル洗浄剤で対処する(コスト:数百円〜) 市販のウォシュレット専用洗浄剤でノズルを洗浄する方法です。目に見える汚れが少ない場合はこれで十分なケースもあります。

② ノズルのみ交換する(コスト:数千円〜) メーカーや機種によっては、ノズル部分だけを交換用パーツとして入手できます。比較的安価に解決できるため、「便座本体は問題ないがノズルは替えたい」という方に向いています。

③ 便座ごと新品に交換する(コスト:2〜8万円前後) 最も確実な方法です。管理会社に相談し、自費での交換許可を取ったうえで新品の温水洗浄便座に替えます。退去時の取り扱いについては後述しますが、置いていく前提であれば設備として扱ってもらえる場合もあります。

どこまで許容できるかは個人差があります。「クリーニング済みなら問題ない」という方から「絶対に前の人のモノは嫌」という方まで幅広いため、自分の感覚に正直に判断してください。


店長の独り言

「一応管理会社の正義のために申し上げておきますと、ウォシュレットはかなり細かく掃除をしてくれています。管理会社では、研修のために、ハウスクリーニングを含めた原状回復の現場を見に行くことはよくあることです。

そのときの作業内容などから見るに、清掃業者さんは本当によく頑張って掃除をしてくれています。

とはいえ、だからと言って人の使ったウォシュレットを使えるか、というとまたそれは別の問題。賃貸物件では使いまわしが原則なので、気になる人も少なからずいらっしゃるでしょう。」

設備かサービス品かで、故障時の対応が全く変わる

ウォシュレット付き物件を選ぶ際に、必ず確認しておきたいのが「設備扱い」か「サービス設置品扱い」かという点です。

設備として記載されている場合、経年劣化による故障はオーナー負担で修理・交換が原則です。ウォシュレットは毎日使う生活直結型の設備ですので、壊れたらすぐに管理会社に連絡することをためらわないでください。

サービス設置品として扱われている場合、故障しても修理義務が発生しません。「壊れたままにしておく」「撤去してそのまま」という対応になる可能性があります。サービス品扱いは以前より減っていますが、完全になくなったわけではありません。重要事項説明書の設備欄を確認し、記載がない場合は担当者に直接「ウォシュレットは設備として管理されていますか」と確認してください。

詳しくは重要事項説明書の見落としやすいポイントを参考にしてください。

なお、故障に気づいたらすぐに管理会社へ連絡することが重要です。トイレは生活直結型の設備であるため、対応が遅れると生活に大きな支障が出ます。

故障時の連絡手順については賃貸のトイレ故障対処法も合わせて確認しておいてください。


ウォシュレットが付いていない物件への後付けは「ほぼ確実に許可が下りる」

ここは多くの解説記事と現場の実態が大きくズレている、と個人的に思うところがある部分です。

「後付けは管理会社への交渉が必要で、断られることもある」という記事が多いですが、実際にはウォシュレットの後付けを断るオーナーに20年のキャリアで会ったことがありません。理由は明快で、オーナーにデメリットがないからです。入居者が費用を負担して設備レベルを上げてくれる、しかも退去時にそのまま置いていってくれる可能性がある。断る理由がどこにありましょうか?

最近は原状回復工事のタイミングで管理会社側から先行して設置提案をするケースも増えています。「次の入居者のためにウォシュレットを付けておきましょう」という提案は、オーナーにも入居希望者にも喜ばれます。築古物件でトイレにコンセントがない場合、コンセント増設工事ごと入居者負担でお願いするケースもあります。和式を洋式に変える工事と同時に対応することすらある、というのが実態です。

ただし、許可が下りることと物理的に設置できることは別問題です。特に以下のケースは事前確認が必要であることに加えて、自分で工事することによって損害が発生することもあります。ウォシュレットの新設や交換は、かならず専門業者に依頼するようにしてください。

タンクレストイレ・海外製便器の場合、温水洗浄便座の取り付けに専用のアダプタが必要なケースや、そもそも対応機種が限られるケースがあります。隅付タンク(三角形のタンク型)も同様で、特殊な形状ゆえに標準的な製品では取り付けられない場合があります。

「許可が出たからすぐに商品を買う」のではなく、便器の型番を確認して適合する製品かどうかを先に調べてください。メーカーの公式サイトでほとんどの場合確認できます。

また、水圧の確認も忘れないでください。古いアパートや高層階では水圧が低く、ウォシュレットの洗浄水がほとんど出ないケースがあります。内見時にトイレを一度流してみて、水勢を確認することをおすすめします。

水圧が弱い物件でウォシュレットを購入してから「使い物にならない」となっても、返品は難しいです。一般的にウォシュレットが正常に動作するためには0.05〜0.7MPa程度の水圧が必要とされています。水勢が極端に細い場合は後付け前にメーカーへ相談することをおすすめします。

加えて、コンセントがトイレ内にないときの、配線およびコンセント設置費用もかかります。

店長の独り言

「こんな脅しのようなことを書いておいてなんですが、過去に『ウォシュレットの圧が弱い!』というクレームは受けたことがありません。シャワーの圧が弱い、なら何度も経験があるのですが。

なお、急に水圧が弱くなった、ということはあり得ます。原因としては、①止水栓が絞られていた ②水圧の強弱設定が変更されていた ③ストレーナーの目詰まり ④ノズルの目詰まり、のいずれかです。

①と②については人的なもの、③と④についてはメンテナンスの問題です。」


後付け時の3つの注意点

① 取り付けは業者に依頼する

ウォシュレットの取り付けは構造がシンプルで、取扱説明書通りに作業すれば個人でも可能です。ただし、賃貸物件でDIY取り付けを行う場合、分岐水栓のパッキンの入れ忘れや締め付け不足による水漏れが起きた場合、下の階への漏水につながる可能性があります。

修理費用・原状回復費用・下階への損害賠償が全て自己責任になります。費用はかかりますが、専門業者への依頼をおススメします。取り付け工事費の目安は8,000〜15,000円程度です。

② 元の便座は必ず保管する

取り外した元の便座は、退去時に原状回復として戻す義務が発生することがあります。小さなナットや部品も含めてビニール袋にまとめ、クローゼットや収納スペースに保管してください。紛失・破損した場合は同等品の購入費用が実費請求されます。

③ 3点ユニットバスへの設置は行わない

浴室・トイレ・洗面が一体になった3点ユニットバスへのウォシュレット設置は、入浴時の水しぶきや常時発生する湿気が電子部品に影響し、故障・漏電・感電のリスクがあります。

鏡の横のコンセントから延長コードを引き込む方法も同様の理由で避けてください。3点ユニットバスの物件ではウォシュレットの設置は諦めるか、防湿仕様の特殊な製品をメーカーに確認したうえで検討すると良いでしょう。


退去時の「出口戦略」を最初に決めておく

ウォシュレットを後付けする際に、入居時点で退去時の扱いを決めておくことをおすすめします。

「置いていく」場合は、管理会社に無償譲渡の旨を伝えておきます。退去時の原状回復作業が不要になり、新たに設備として次の入居者に引き継がれます。この場合、設備扱いにしてもらえるかどうかも合わせて確認しておくと、故障時の対応が変わります。

「持っていく」場合は、退去時に取り外して元の便座に戻す原状回復が必要です。取り外し工事を専門業者に依頼すると1.5〜2万円程度かかります。ウォシュレット本体の運搬も、ホース内に残った水の処理や衛生的な梱包が必要で、引っ越し業者に脱着を頼むと別途費用が発生します。「自分で取り付けた機種に愛着があってどうしても持っていきたい」という場合を除けば、置いていく方が費用面では合理的なケースが多いです。

なお、「自費で良いウォシュレットを設置したのだから退去時にオーナーに買い取ってもらえるのでは」と思う方もいるかもしれません。これは造作買取請求権という権利の話ですが、現在の賃貸契約書ではほぼ全てのケースで特約により排除されています。オーナーへの買取請求は原則できないと考えておいてください。

置いていくなら無償譲渡、持っていくなら原状回復、という二択が実態です。入居時に「退去時はどうするか」を管理会社と書面で確認しておくことで、退去時のトラブルを未然に防げます。退去費用に関する考え方は退去費用の全体解説も参考にしてください。


内見で確認すべき3つのポイント

ウォシュレット付き物件の内見では、以下の3点を確認してください。内見全体のチェックポイントも合わせて参考にしてみてください。

1. 設備欄に「設備」として記載されているかを確認する 重要事項説明書の設備欄で確認します。記載がなければ担当者に直接質問してください。

2. ノズル・便座の状態を目視確認する 扉を開けてノズルを引き出し、汚れや変色の有無を確認します。気になる状態であれば、入居前の対処(クリーニング・交換)について担当者に相談してください。

3. トイレのコンセントの有無と水圧を確認する コンセントがない場合は後付け時に増設工事が必要です。水圧は実際にトイレを流して確認してください。付いていない物件を検討している場合も、この2点を確認しておくと後付け工事の見通しが立ちます。


ウォシュレット付き賃貸に向いている人・向いていない人

向いている人

日常的にウォシュレットを使う習慣があり、ないと不便と感じる方はもちろん向いています。痔などの症状がある方・肌が弱くトイレットペーパーの摩擦が気になる方・衛生面へのこだわりが強い方にとっては、生活の質に直結する設備です。

バス・トイレ別の物件と組み合わせて検討している場合はバス・トイレ別のメリット・デメリットも参考にしてください。

向いていない人

前の入居者が使ったノズルへの心理的抵抗が強く、クリーニングや部品交換で解消できない方は、ウォシュレットなし物件を選んで新品を自費設置する方が精神的に楽です。その場合も後付け許可はほぼ確実に取れますので、「最初から付いている物件にこだわりすぎる必要はない」と覚えておいてください。

賃貸のトイレに関わるトラブル全般についてはトイレ故障の対処法も合わせてご覧ください。


ウォシュレットは「付いているから良い物件・付いていないから悪い物件」ではありません。清潔感の確認・設備区分の確認・後付け時の適合確認と出口戦略、この3点を押さえておけば、どちらの物件を選んでも後悔のない判断ができます。

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