
2026年7月、国土交通省が「住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」、いわゆるリースバックガイドラインを公表しました。2026年10月1日から施行されます。ガイドラインの原文は国土交通省のPDF(外部リンク)で確認できます。
リースバックに関するトラブルは年々増加しており、全国の消費生活センターへの相談件数も増加傾向にあります。「ずっと住めると思っていたのに更新できなかった」「設備が壊れたときの負担をめぐってもめた」。こういった声が積み重なった末に生まれたガイドラインです。
このガイドラインは主に業者向けの宅建業法の運用基準ですが、依頼者(売主・借主)にとっても「何を確認すべきか」を知るうえで参考になります。この記事では、筑後市・柳川市・みやま市・広川町・八女市エリアで実際にリースバック取引をたくさん手がけてきた現役宅建士が、ガイドラインの本質と実務上のポイントを解説します。
そもそもなぜガイドラインが必要になったのか
リースバックは「自宅を売却して現金を得ながら、そのまま住み続けられる」という仕組みです。老後資金の確保や急な現金需要への対応手段として需要が増えています。
ただ、この仕組みには構造的な問題があります。リースバックは本来、住みたい人のための制度です。ところが実態は、買い取って転売したい業者にとっての仕入れルートのひとつになっているケースがあります。業者が「住み続けられる」と説明しながら、定期借家契約で数年後に退去を求めるというトラブルが後を絶たない背景には、この構造的な問題があります。
リースバック契約をするとき、入居自体は可能です。問題はその後、何年後も・何十年後も住み続けられるかどうかです。「住むことができる」と「住み続けることができる」は、似ているようで全く違います。今回のガイドラインはその違いを業者に意識させることに大きな意義があると、個人的には思っています。
ガイドラインで業者に何が求められるようになったか
ガイドラインが業者に求める主な内容を整理します。依頼者としても、これらが守られているかを確認する判断基準になります。
重要事項説明の強化
リースバック取引において、売買契約と賃貸借契約の両方について、十分な重要事項説明を行うことが求められます。特に定期借家契約を使う場合、「契約期間が満了すると更新なく終了する」ことを明確に説明することが義務付けられます。
賃貸借契約の種類の明示
定期借家契約か普通借家契約かを、契約前に明確に示すことが求められます。これまで「更新できます」という口頭説明だけで定期借家契約を結ばせるケースがあったことへの対応です。
買取価格・家賃の説明責任
買取価格と家賃の設定根拠を説明することが求められます。根拠のない高い利回り設定で家賃を決められるリスクへの対応です。
【店長の独り言】
「正直なところ、私自身はリースバックのガイドラインを読んだときに思ったこととして、実務上特に変わることはないな、と感じました。
そもそも自分は普通借家契約を軸としていますし、買取価格と家賃の根拠をきちんと説明するというのはずっとやってきたことだからです。
ただ、それをやっていない業者がいるからこそガイドラインが必要になった、ということでもあります。ガイドラインの存在は、誠実にやっている業者を選ぶための「物差し」として活用できると思います。」
依頼者として契約前に確認すべきポイント
ガイドライン施行後にリースバックを検討する方が確認すべきことは、実はシンプルです。
確認ポイント① 「住むことができる」だけでなく「住み続けることができるか」
契約のときに住めることは当然です。問題はその後です。確認すべきは以下の点です。
契約は定期借家か普通借家か。定期借家契約の場合、契約期間が満了すると原則として退去が必要になります。「更新できる可能性がある」という口頭説明だけでは不十分で、契約書に更新条件が明記されているかを確認してください。
業者の保有方針はどうか。買い取った後に転売する方針の業者なのか、長期保有する方針なのか。これによって「住み続けられるか」が大きく変わります。「取得後はどのような方針で保有されますか」と直接確認してみてください。
確認ポイント② 設備修繕の範囲は契約前に明確になっているか
設備修繕の負担をめぐるトラブルは多いです。ただしこの問題は、借主側にとってだけでなく、貸主(業者)側にとっても注意が必要な話でもあります。
筑後・柳川・みやま・八女エリアの物件には、都市部と異なる特有の事情があります。築年数が古い物件が多く、雨漏り・給排水管の老朽化・シロアリ被害といった問題を抱えているケースが少なくありません。
また、広い敷地に庭木が茂っているケース、倉庫や納屋が建っているケースも多く、管理の手間や解体・剪定費用が思わぬ負担になることがあります。
さらにこのエリアでは、田畑や山林などの農地を抱き合わせで売却したいというケースもあります。農地は農地転用の手続きが必要で、転用できないケースもあるため、リースバックの対象物件に農地が含まれる場合は事前に確認が必要です。
こういった物件状態の問題を告知せずにリースバック契約を進めると、後から修繕費用の負担をめぐって深刻なトラブルに発展します。
たとえば、売却前から雨漏りがしているのにそれを告知せず、入居後に修繕を求めるケース。庭木の管理費用の負担が契約前に明確にされていないまま、入居後にもめるケース。こういった問題は、このエリアの物件では特に起きやすいです。
明らかな欠陥を告知しないのは借主側の問題ですが、業者側も事前に物件を確認せずに契約を進めようとするならそれも問題です。
理想的なリースバック契約は、売主と買主が事前に物件の状態を一緒に確認したうえで、設備修繕の範囲・買取価格・家賃設定を総合的に判断して決めることです。お互いの意向と思いがリースバック契約の中に包含されていること、それが双方にとって後悔のない契約になります。
契約前に物件を一緒に現地確認し、設備の状態・修繕の必要範囲・庭木などの管理費用の負担分担を明文化してくれる業者かどうかを見極めてください。
確認ポイント③ 買戻しの条件は契約書に明記されているか
将来的に買い戻す可能性がある場合、買戻しの条件を契約書に明記しておくことが重要です。「いつでも買い戻せます」という口頭の説明だけでは不十分で、買戻し価格・期間・条件が書面で確認できるかどうかを確認してください。
金融機関によっては短期の買戻しに消極的なケースもあるため、買戻しを前提としている場合は金融機関への事前相談もあわせて必要です。
ガイドライン施行後の業者選びのポイント
2026年10月以降、ガイドラインを守っていない業者は宅建業法違反として指導の対象になります。ただし、ガイドラインに形式的に対応しているだけで、実態が伴っていない業者もいます。
書面の内容だけでなく、以下の点で業者の姿勢を確認してください。
普通借家契約に対応しているか。「定期借家のみ」という業者は、入居者の長期居住よりも転売・出口を優先している可能性があります。
売買専門の会社かどうかを確認する。売買専門店はほぼ間違いなく転売目的です。賃貸管理や自社物件(賃貸物件)の保有実績がある会社かどうかを確認してください。「自社で管理している賃貸物件はありますか」「リースバックの実績はどのくらいありますか」と直接聞いてみるのが一番です。長期保有する気がある業者かどうかは、こういった実績に正直に表れます。
買取価格と家賃の根拠を説明できるか。「利回り何%で設定しています、なぜなら~」「この建物の利用状況からみるとこれらの設備に修繕の不安があるため~」などの具体的な説明ができる業者は信頼できます。
物件を一緒に現地確認してくれるか。設備の状態を事前に確認せずに契約を進めようとする業者は、後のトラブルリスクが高いです。
筑後・柳川・みやま・八女エリアのリースバック事情については、以下の記事でより詳しく解説しています。
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この記事を書いた人:不動産会社店長
業界歴20年以上の現役店長。現場の第一線で培った知見を活かし、大手不動産メディアにて累計100本以上の専門記事を執筆中。 業界の表も裏も知り尽くした「不動産のプロ」として、不動産会社の不都合な真実を伝えます。
不動産・建築の専門家として、以下の大手メディアにて2026年現在も継続的に執筆・監修を行っています。
- 東急リバブル(LIVABLE タイムズ):法人・投資家向けのCRE戦略や空き家対策記事を20本以上寄稿
- ハウスコム(暮らしエイト):宅建士の視点から賃貸トラブル解決法を30本以上執筆
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