
「民泊OKですか?」自社で管理している賃貸物件に対して、こんな問い合わせが、ここ1〜2年で急激に増えています。
筑後市・柳川市・みやま市・朝倉市・八女市エリアでも、物件を探している側から「民泊利用可能かどうか」を最初に確認してくるケースが珍しくなくなってきました。「ダメです」と答えると、「家賃を上げてもいいので検討していただけませんか」と返ってくることもあります。それだけ民泊事業者の需要が熱を帯びているということです。
一方で、オーナー側には「民泊やホテルって、自分には関係ない話では?」という感覚がまだあると思います。ただ、遊休不動産・空き家・古い物件を持っているオーナーにとって、この需要は決して他人事ではありません。
この記事では、福岡・九州エリアで実際にホテル×民泊の案件を手がけてきた現役店長が、利回りの現実・参入パターン・地方ならではの注意点を本音でお伝えします。
なぜ今、ホテル・民泊なのか?インバウンド需要と利回りの現実
まず、なぜ今ホテル・民泊なのかを数字で確認しておきます。
2025年の訪日外客数は過去最高の4,268万人(前年比+15.8%)に達しました。2026年も高水準が続いており、この需要は一時的なものではなく構造的な変化として捉えられています。
ただし、この恩恵は全国均等に分配されているわけではありません。福岡県の統計を見ると、宿泊者・訪問者は福岡市・北九州市の両政令市に集中しており、朝倉・八女・柳川・みやまといった地方エリアへの波及はまだこれからです。裏を返せば、地方エリアには供給が少ないぶん、参入余地が残っているとも言えます。
利回りの面でも、ホテルアセットは他の不動産と比べて高水準です。不動産投資家調査(2026年4月)によると、宿泊特化型ホテルの期待利回りは4.1%で、住宅(3.7%)やオフィス(3.2%)を上回っています。
ただし、この数字はあくまで東京の大型ホテルを対象にした平均値です。地方の小規模物件・民泊活用の場合、運営設計次第でこれを大幅に上回る利回りを出すことは、そこまで難しいことではありません。
朝倉市の実例|利回り28%を達成した民泊活用の仕組み
実際の数字をお見せします。
当社が購入した朝倉市の区分所有ホテルの案件です。もともとは相続によって所有者に渡った物件でしたが、「賃貸として運用するのはめんどくさい」という判断から、当社が買取で取得しました。
取得後、民泊事業者に賃貸として貸し出したところ、借主側が「民泊として使いたいので改装させてほしい」という要望を出してきました。改装費用は借主持ちです。こちらは改装を了承し、賃貸契約を締結しました。
この構造が28%という利回りを生み出したポイントです。
- 相続案件のため取得価格が抑えられた
- 民泊事業者の需要が強く、賃料を高めに設定できた
- 改装費用はゼロ(借主負担)
この物件のある朝倉市には原鶴温泉という観光資源があります。インバウンド客・国内観光客の需要を吸収できる立地だったことが、民泊事業者にとって魅力的だったわけです。
【店長の独り言】
「『民泊OKですか?』という問い合わせが増えているのは、民泊事業者が使える物件を本気で探しているからです。当社がこの案件で勝負できたのは、そういった民泊ニーズを把握していたからにほかなりません。
オーナーとして賃貸に出す場合も、「民泊可」として募集できるかどうかを確認しておくだけで、入居者の選択肢と賃料水準が変わってくる可能性があります。」
ホテルと民泊の違い|オーナーが知っておくべき基本
遊休不動産をホテル・民泊に転用する前に、2つの違いを理解しておく必要があります。
ホテル(旅館業法に基づく営業) 旅館業法の許可を取得して営業します。365日・制限なく宿泊者を受け入れられる半面、許可取得の要件(設備・消防・建築基準法適合など)が厳しく、初期投資も大きくなる傾向があります。
民泊(住宅宿泊事業法に基づく営業) いわゆる「民泊新法」に基づく届出制の営業です。年間提供日数の上限が180日という制限がありますが、旅館業法と比べて許可要件がシンプルです。ただし、地域によっては自治体の条例で営業できるエリアや期間が制限されていることがあります。
物件オーナーとしては、どちらの方法で使われるかによって賃料・借主の属性・リスクが変わります。実際の運営は借主(民泊事業者・ホテル運営会社)が行いますが、建物の用途変更や法令適合については所有者側も確認が必要です。
店長の独り言
「日数の違い、と言ってしまえばそれまでです。そうなんですが、最近ではこの民泊として運営できる上限をさらに引き下げる条例を自治体が検討している、という事例もあるようです。
ビジネスとしてみれば民泊は素晴らしいモデルかもしれませんが、近隣住民からすると、必ずしもいいことばかりではありません。騒音やごみ問題など、やはりモラルクレームはつきまとうものです。
こればかりは個人でどうすることもできないため、民泊などの宿泊事業にはさまざまなリスク(リーガルリスク、カントリーリスクなど)が存在することを理解しておく必要がありそうです。」
ホテル・民泊事業に興味があるけど自分で運営できないとき
ホテルや民泊事業に興味はあるけど、何から手を付けていいかわからない。また、そんな運営まで手が回らない、という人が実際はほとんどではないでしょうか。
そうです、実際にサラリーマンやご家庭があるなかで、自分のことも手が回らないのに、人のお世話なんてする暇がないよ、という人がおそらく大半ですし、それは正常な判断です。
自分でホテル・民泊を運営できないときは、以下のような選択肢をとることができます。
・ホテルや民泊をしたい人に、ホテルや民泊用として部屋や家を貸し出す
・ホテルや民泊の管理運営をしている人に、ホテルや民泊の管理運営をお願いする
大きくこれら二つの方法が考えられます。
賃貸経営の延長でと考える人には部屋や家を貸すだけのほうがよいでしょう。リスクを多少とってでもリターンを大きく狙いたい人には管理運営を外部委託するという方法がアリです。
外部委託するにしても、何をどこまで委託するか、などは細かく決めることが可能です。そういった外部委託をもとにノウハウを積み重ねる、というのも手法としては面白いものです。
福岡・九州エリアで民泊・ホテル投資をするために必要なもの
地方エリアで民泊・ホテルを成立させるには、観光資源との接続が不可欠です。都市部と違い、集客力のある観光資源がなければ稼働率を維持できません。
このエリアで使える観光資源を整理するとこうなります。
- 朝倉市:原鶴温泉(九州でも有数の温泉地)
- 柳川市:川下り・掘割文化・北原白秋ゆかりの地
- 八女市:重要伝統的建造物群保存地区・八女茶・星野村
- みやま市:ワンヘルス(人・動物・環境の健康を一体的に推進する国際的な概念)によるMICE需要
これらの資源と物件の立地・コンセプトが噛み合ったときに、民泊・ホテルとしての需要が生まれます。逆に言えば、観光資源との接続なしに「空き家だから民泊にしよう」という発想だけでは、稼働率が上がらないリスクがあります。
【店長の独り言】
「『民泊OKですか?』と聞いてくる人たちは、物件を真剣に探しています。彼らにとって重要なのは立地と観光資源との距離です。温泉・川下り・歴史的街並み、こういった資源の近くに遊休不動産を持っているオーナーは、一度「民泊転用」という選択肢を検討してみる価値があります。
事実、みやま市などはほとんど観光資源に乏しい郊外都市ですが、宿泊需要が高まるとのことで宿泊施設の誘致や充実化が急務とされています。」
出典:読売新聞オンライン「福岡県みやま市の潜在的な宿泊需要は2万5000人だが…ほとんど流出した可能性、ビジネスホテル誘致へ」
遊休不動産の新しい出口として
ホテル・民泊への転用は、遊休不動産の新しい出口のひとつです。売却・賃貸・駐車場という従来の選択肢に加えて、民泊需要が旺盛な今、観光資源の近くに物件を持つオーナーには現実的な選択肢になりつつあります。
利回り28%は極端な例ですが、民泊事業者に賃貸するというシンプルな方法で高い利回りを出せた背景には、需要の強さと観光資源の存在がありました。
まず「この物件は民泊OKにできるか」を確認するところから始めてみてください。それだけで入居者の選択肢と賃料水準が変わる可能性があります。
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記事を書いた人:不動産会社店長
業界歴20年以上の現役店長。現場の第一線で培った知見を活かし、大手不動産メディアにて累計100本以上の専門記事を執筆中。 業界の表も裏も知り尽くした「不動産のプロ」として、不動産会社の不都合な真実を伝えます。
不動産・建築の専門家として、以下の大手メディアにて2026年現在も継続的に執筆・監修を行っています。
- 東急リバブル(LIVABLE タイムズ):法人・投資家向けのCRE戦略や空き家対策記事を20本以上寄稿
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