金利上昇でアパートローンはどうなる?福岡・九州のオーナーが今すぐ確認すべきことを現役店長が解説

「返済額がじわじわ増えてきた気がする」「サブリースの賃料を見直してほしいと言われた」「そろそろ売り時なのか」、管理している賃貸物件のオーナーからこういった声が、今年に入って明らかに増えています。

原因はひとつ、どのオーナーも口をそろえておっしゃるのが「金利の上昇」です。

2024年3月のマイナス金利解除から始まった日銀の利上げは、2026年6月に政策金利1.0%という水準に達しました。1995年以来、約31年ぶりの水準です。住宅ローンの話題として語られることが多いですが、アパートローン・収益不動産への影響はより直接的で、より深刻になりやすいです。

この記事では、福岡・熊本・佐賀・長崎エリアで一棟アパート・マンションを保有しているオーナーに向けて、金利上昇が何をもたらすのか、そして今何を確認すべきかを現場の本音でお伝えします。

目次

金利上昇がアパート経営に与える3つの影響

金利上昇は「返済額が増える」という一点だけではありません。収益不動産のオーナーにとっては、3つの経路で影響が及びます。それぞれの中身を理解しておくことから始めましょう。

①キャッシュフローの圧迫

最もわかりやすい影響です。変動金利で借りている場合、政策金利の上昇が短期プライムレートに反映され、アパートローンの適用金利が上がります。家賃収入は変わらないのに返済額だけが増えれば、手元に残る現金が減っていきます。

たとえば1億円の借入で金利が1%上昇した場合、年間返済額は単純計算で約100万円増えます。月にすると8万円以上の圧迫です。これが2棟・3棟と重なれば、影響はさらに大きくなります。

収益不動産の健全性を測るときに使う考え方が「家賃収入で返済をどれだけ賄えているか」という比率です(専門用語ではDSCR=借入返済余力比率と言います)。「年間の家賃収入÷年間返済額」で計算し、1.2倍以上が健全の目安、1.0倍を下回ると家賃収入だけでは返済が足りない状態です。まず自分の物件でこの数字を計算してみてください。

②担保評価・借り換えの難化

現場の感覚として、金融機関が担保評価をより厳しく見るようになっています。以前は「利回りが高ければ融資が出やすい」という面がありましたが、今は「この立地・この物件なら長期的に賃料が維持できるか」という目線での審査が強まっています。

借り換えを検討している場合も、以前より審査のハードルが上がっている可能性があります。「借り換えれば金利が下がる」という単純な話ではなく、現在の物件の担保評価・収益性・残債のバランスを総合的に確認する必要があります。

③サブリース賃料の見直し圧力

サブリース(一括借り上げ)契約のオーナーは、管理会社から借り上げ賃料の引き下げを求められるケースが出てきています。私のところでも今年に入って3件、そういった要請がありました。

サブリース会社も金利上昇・修繕費増加のコスト圧力を受けています。その一部をオーナーへの賃料引き下げという形で転嫁しようとする動きが出てくるのは、構造的に避けられません。サブリース契約のオーナーは、契約内容と賃料の見直しタイミングを改めて確認しておくことをお勧めします。

【店長の独り言】

「サブリースの賃料見直し要請は、なにも管理会社から引き下げられるだけではありません。逆パターンとして、収益物件のオーナーから『家賃を上げてくれ』というリクエストも当然ありえます。

もちろん、内容に妥当性があればお受けしますが、築年数がある程度経過している物件においては、修繕費用などもかさんでくるため、やっぱり管理会社としては値上げどころか値下げですよ、と言いたくなることも当然あります。

ちなみに、最近の事例でいえば、家賃を上げる代わりにペット承諾やインターネット敷設を交渉した事例はあります。つまり、家賃をあげる代わりに付加価値を提供してもらうようにしたわけです。

なお、弊店の実績としては、すべてのサブリース物件で黒字を達成できているわけではありません。むしろ、3割くらいのサブリース物件では単体で赤字になってしまっています。」

現場から|金利上昇×修繕タイミングで3棟売却した話

昨年、私が関わった案件で印象的だったのが、金利上昇のタイミングで3棟のアパートを売却したオーナーの判断です。

きっかけは「金利が上がってきた」という感覚と、「そろそろ大規模修繕のタイミングが来る」という2つの要因が重なったことでした。金利上昇で返済負担が増えるなか、さらに修繕費が重なれば手残りが大幅に減る。そう判断されたわけです。

結果として3棟すべてでローンを完済し、手残りも発生させることができました。「金利が上がり始めた今」を出口のタイミングとして捉えた判断が、良い結果につながったケースです。

金利上昇は「怖いもの」として受け身で捉えるだけでなく、「出口を検討するきっかけ」として積極的に活用できる局面でもあります。特に修繕時期が近づいている物件を保有しているオーナーは、売却と修繕のどちらが合理的かを一度試算してみる価値があります。

不動産投資のプロ(J-REIT)は今、何をしているか

「J-REITと自分のアパート1棟は規模が違いすぎる」と思うかもしれません。ただ、原理は同じです。不動産投資における金利リスクの管理は、1棟でも100棟でも考え方は変わりません。プロが金利上昇局面でどう動いているかを知ることは、個人オーナーの意思決定において非常に参考になります。

①変動金利を固定に切り替え・金利スワップでリスクをヘッジする

金利上昇局面でプロがまず行うのが、変動金利の借入を固定金利に切り替えること、あるいは金利スワップ(将来の金利支払いを今の水準で固定する取引)の活用です。スターアジア不動産投資法人は2026年1月末時点で577億円規模の金利スワップを組んでおり、変動金利の上昇リスクをほぼ遮断しています。

個人オーナーに金利スワップは使えませんが、「今の変動金利の割合が高すぎないか」「固定金利への切り替えを金融機関に相談する余地があるか」を確認する発想は、規模に関係なく使えそうな論点です。

②借入の期限と金融機関を分散させる

一時期に大きな返済が集中する「満期の偏り」は、金利上昇局面では特にリスクが高まります。借り換えのタイミングが金利の高い時期に重なれば、一気にコストが跳ね上がるからです。プロは複数の金融機関・複数の返済期限に分散させることで、このリスクを分散しています。

エスコンジャパンリート投資法人も2026年初に既存借入の借り換えを実施しており、返済期限の分散と金利条件の整理を同時に行っています。個人オーナーで複数物件を持っている場合、「ローンの返済時期が同じ銀行・同じ時期に集中していないか」を確認することは有効です。

③含み益のある資産を売却し、収益性の高い物件に入れ替える

金利が上昇すると、不動産の利回りに対する投資家の要求水準が上がります。つまり、同じ家賃収入でも「より高い利回りがないと買わない」という買い手が増え、物件価格には下落圧力がかかります。この下落が本格化する前に、含み益のある物件を売却して資産を整理するのがプロでなくとも不動産投資の定石です。

日本ビルファンド投資法人は2026年1月、NOI利回り2.3%・築34年超の老朽物件を売却益51億円で手放し、より収益性の高い物件への入れ替えを実施しました。「古い・利回りが低い・修繕が近い」という物件を抱えている個人オーナーにとって、これは他人事ではありません。

個人オーナーがJ-REITのすべてを真似する必要はありません。ただ、この3つの発想、①変動金利の割合を把握して固定化を検討する、②ローンの返済時期の偏りを確認する、③含み益のある物件の出口タイミングを逃さない、これらはアパート1棟を持つオーナーにも直接使える考え方です。

今すぐ確認すべき4つのポイント

金利上昇局面でアパートオーナーが確認すべきことを整理します。難しいことは何もありません。まずこの4点を確認するところから始めてください。

✅ ①自分のローンは変動か固定か、返済額はいくら増えたか

通帳や返済明細を確認してください。変動金利の場合、直近の適用金利がどう変わっているかを把握することが出発点です。「なんとなく返済が増えた気がする」を数字で確認してください。

✅ ②家賃収入で返済をどれだけ賄えているか(DSCR)を計算する

年間家賃収入(空室・管理費控除後)÷年間返済額を計算してください。1.2倍を下回っているなら、現状の収支を見直す必要があります。1.0倍を下回っているなら、早急に対応を検討してください。

✅ ③サブリース契約のオーナーは賃料見直し条項を確認する

契約書の「賃料改定」に関する条項を確認してください。見直しを求められたときに、どう対応するかを事前に把握しておくことが重要です。また、カウンターパンチとして、サブリース会社に値上げを求める交渉をするのも、金利や地価が上昇傾向にあるこのタイミングでは好手と言えるでしょう。

✅ ④修繕時期と売却の含み益を照合する

大規模修繕が近い時期に、かつ売却すれば利益が出る状況なら、「修繕する前に売却する」という選択肢を検討する価値があります。金利上昇は、この判断を早める要因になります。

まとめ|「金利のある時代」は、点検する人に味方する

金利上昇は、長年ゼロ金利に慣れてきたオーナーにとって不安な出来事に見えます。ただ、やることの原理はシンプルです。借入の構造を点検し、収支を確認し、出口を考える、この繰り返しです。

「何もしない」のと「点検したうえで何もしない」のは全然違います。点検の結果、今すぐ動く必要がないとわかることも、立派な意思決定です。まず現状を把握することから始めてください。

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事を書いた人:不動産会社店長

業界歴20年以上の現役店長。現場の第一線で培った知見を活かし、大手不動産メディアにて累計100本以上の専門記事を執筆中。 業界の表も裏も知り尽くした「不動産のプロ」として、不動産会社の不都合な真実を伝えます。

不動産・建築の専門家として、以下の大手メディアにて2026年現在も継続的に執筆・監修を行っています。

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